前回:【第4回】ストレージ編:SAS?SATA?NVMe?用途別に考えるディスク選定の基本
サーバー構成におけるネットワーク設計は、「とりあえず1GbEポートがあれば大丈夫」という時代から、今や“構成の要件ヒアリング力”が問われるパートになっています。
NIC(Network Interface Card)は物理的なパーツのひとつですが、それ以上に「通信帯域」「可用性(冗長化)」「用途分離」といった論理設計と直結する要素です。
今回は、NICの選定と構成を「提案の深さ」につなげるための視点を、プリセールス向けに解説していきます。
ICの基本知識:まず押さえるべき接続方式と速度
NICとは、サーバーにネットワーク接続機能を提供する拡張カード/モジュールです。
種類 | 特徴 | 接続方式 |
---|---|---|
1GbE(1000BASE-T) | 一般的な業務用途。コスト最小 | RJ-45(LANケーブル) |
10GbE(SFP+/BASE-T) | 仮想化や大容量転送に対応 | SFP+(光・DAC) or RJ-45 |
25GbE / 40GbE / 100GbE | 高速ストレージやAIワークロード | SFP28/ QSFP28 など |
OCPとPCIeの違いも理解しておく
種別 | 説明 | 用途例 |
---|---|---|
OCP NIC | マザーボード直結。省スペース | 標準構成でよく利用される |
PCIe NIC | 拡張カード型。後付けも可能 | 追加帯域や冗長化に活用 |
NIC構成パターンの例と、提案意図のつくり方
単に「10GbEが2ポートついています」ではなく、「なぜこの構成なのか?」を伝えることがプリセールスの腕の見せどころです。
よくあるNIC構成と意図
用途 | 構成例 | 意図・理由 |
---|---|---|
小規模業務サーバー | 1GbE ×1(OCP) | 最低限の通信機能。コスト重視 |
仮想化基盤 | 10GbE ×2(チーミング) | 帯域確保と冗長性 |
ファイル/DBサーバー | 1GbE ×1(管理)+10GbE ×2(データ) | 管理・データを分離し安全性向上 |
高速バックアップ用 | 10GbE ×2(専用NW向け) | ストレージ専用NW設計に対応 |
AI/HPC用途 | 25GbE以上 ×2 | 大量データ転送に最適化 |
冗長構成(チーミング/ボンディング)の考え方
NICは「ポートが2つある=冗長」ではありません。実際に冗長化設定(リンクアグリゲーション)されていることがポイントです。
主な冗長化方式:
方式 | 概要 | 使用例 |
---|---|---|
Active-Standby | 片方待機 → 障害時に切替 | 小規模環境に最適 |
Active-Active(LACP) | 両方を同時に使用し帯域増加 | 仮想化・高速通信環境で利用 |
重要なのは「NW機器側(スイッチ)も対応しているか」まで確認すること。
LACPを使う場合は、スイッチ側の設定(ポートチャネル)も必要です。
帯域設計の視点:仮想化/バックアップ/AIは要注意
プリセールスがNICの帯域を考慮すべき場面は意外と多く、以下のような質問を投げかけると構成が見えてきます:
- 仮想マシンはいくつ動作する予定か?
- 大容量のファイルや映像データを扱うか?
- バックアップの時間や頻度に制約はあるか?
- ストレージはネットワーク越し(NAS/iSCSI)か?
目安となる帯域感:
用途 | 推奨NIC | 備考 |
---|---|---|
AD/ファイル共有 | 1GbE | 小規模なら十分 |
仮想化基盤 | 10GbE ×2以上 | VM数が増えると帯域不足に注意 |
バックアップ/リストア | 10GbEまたは専用ネットワーク | 夜間帯に集中するなら高速化が必要 |
AI・HPC | 25〜100GbE | PCIe Gen5対応にも注意 |
提案・見積時のチェックポイント(プリセールス的観点)
- OCP or PCIeのNICか?
-
将来拡張を考慮して空きスロットを確保
- 管理ネットワークと業務ネットワークの分離
-
セキュリティ・障害切り分けのためにも分離構成を提案できると◎
- ネットワークスイッチとの整合性
-
LACP使用時はスイッチも同等対応が必要(構成の整合性確認)
- 物理ポート数と用途割り当てを整理
-
例:ポート1=管理、ポート2=業務、ポート3=バックアップ
よくあるミスとその影響
- 帯域不足でバックアップが終わらない
- 管理NWと業務NWが混在し、切り分け困難に
- チーミング設定が片方だけで意味なしに
- NIC数不足で仮想環境がスケールできない
NIC構成は後から変えるのが難しい場合もあるため、最初の提案で“根拠ある構成”を提示することが重要です。
まとめ:NIC構成は“つなぐ設計”のセンスが問われる
NICは小さな部品ですが、サーバーと外部環境をつなぐ極めて重要な役割を持っています。
プリセールスとしては、物理構成だけでなく、運用と論理設計を見越した提案ができるかがポイントです。
- なぜ10GbEが必要か?
- なぜポートを分けたのか?
- 冗長化はどのように行うのか?
こうした問いに対して、明確に答えられる構成が“信頼される提案”へとつながります。
次回は「GPU編」です。
AI処理や映像解析など、GPUの導入が必要になるシーンや、サーバー設計に与える影響を解説していきます。