【第5回】ネットワーク編:NIC構成と冗長性、帯域設計を“提案力”に変える

前回:【第4回】ストレージ編:SAS?SATA?NVMe?用途別に考えるディスク選定の基本

サーバー構成におけるネットワーク設計は、「とりあえず1GbEポートがあれば大丈夫」という時代から、今や“構成の要件ヒアリング力”が問われるパートになっています。

NIC(Network Interface Card)は物理的なパーツのひとつですが、それ以上に「通信帯域」「可用性(冗長化)」「用途分離」といった論理設計と直結する要素です。

今回は、NICの選定と構成を「提案の深さ」につなげるための視点を、プリセールス向けに解説していきます。

ICの基本知識:まず押さえるべき接続方式と速度

NICとは、サーバーにネットワーク接続機能を提供する拡張カード/モジュールです。

種類特徴接続方式
1GbE(1000BASE-T)一般的な業務用途。コスト最小RJ-45(LANケーブル)
10GbE(SFP+/BASE-T)仮想化や大容量転送に対応SFP+(光・DAC) or RJ-45
25GbE / 40GbE / 100GbE高速ストレージやAIワークロードSFP28/ QSFP28 など

OCPとPCIeの違いも理解しておく

種別説明用途例
OCP NICマザーボード直結。省スペース標準構成でよく利用される
PCIe NIC拡張カード型。後付けも可能追加帯域や冗長化に活用

NIC構成パターンの例と、提案意図のつくり方

単に「10GbEが2ポートついています」ではなく、「なぜこの構成なのか?」を伝えることがプリセールスの腕の見せどころです。

よくあるNIC構成と意図

用途構成例意図・理由
小規模業務サーバー1GbE ×1(OCP)最低限の通信機能。コスト重視
仮想化基盤10GbE ×2(チーミング)帯域確保と冗長性
ファイル/DBサーバー1GbE ×1(管理)+10GbE ×2(データ)管理・データを分離し安全性向上
高速バックアップ用10GbE ×2(専用NW向け)ストレージ専用NW設計に対応
AI/HPC用途25GbE以上 ×2大量データ転送に最適化

冗長構成(チーミング/ボンディング)の考え方

NICは「ポートが2つある=冗長」ではありません。実際に冗長化設定(リンクアグリゲーション)されていることがポイントです。

主な冗長化方式:

方式概要使用例
Active-Standby片方待機 → 障害時に切替小規模環境に最適
Active-Active(LACP)両方を同時に使用し帯域増加仮想化・高速通信環境で利用

重要なのは「NW機器側(スイッチ)も対応しているか」まで確認すること。

LACPを使う場合は、スイッチ側の設定(ポートチャネル)も必要です。

帯域設計の視点:仮想化/バックアップ/AIは要注意

プリセールスがNICの帯域を考慮すべき場面は意外と多く、以下のような質問を投げかけると構成が見えてきます

  • 仮想マシンはいくつ動作する予定か?
  • 大容量のファイルや映像データを扱うか?
  • バックアップの時間や頻度に制約はあるか?
  • ストレージはネットワーク越し(NAS/iSCSI)か?

目安となる帯域感:

用途推奨NIC備考
AD/ファイル共有1GbE小規模なら十分
仮想化基盤10GbE ×2以上VM数が増えると帯域不足に注意
バックアップ/リストア10GbEまたは専用ネットワーク夜間帯に集中するなら高速化が必要
AI・HPC25〜100GbEPCIe Gen5対応にも注意

提案・見積時のチェックポイント(プリセールス的観点)

OCP or PCIeのNICか?

将来拡張を考慮して空きスロットを確保

管理ネットワークと業務ネットワークの分離

セキュリティ・障害切り分けのためにも分離構成を提案できると◎

ネットワークスイッチとの整合性

LACP使用時はスイッチも同等対応が必要(構成の整合性確認)

物理ポート数と用途割り当てを整理

例:ポート1=管理、ポート2=業務、ポート3=バックアップ

よくあるミスとその影響

  • 帯域不足でバックアップが終わらない
  • 管理NWと業務NWが混在し、切り分け困難に
  • チーミング設定が片方だけで意味なしに
  • NIC数不足で仮想環境がスケールできない

NIC構成は後から変えるのが難しい場合もあるため、最初の提案で“根拠ある構成”を提示することが重要です。

まとめ:NIC構成は“つなぐ設計”のセンスが問われる

NICは小さな部品ですが、サーバーと外部環境をつなぐ極めて重要な役割を持っています。

プリセールスとしては、物理構成だけでなく、運用と論理設計を見越した提案ができるかがポイントです。

  • なぜ10GbEが必要か?
  • なぜポートを分けたのか?
  • 冗長化はどのように行うのか?

こうした問いに対して、明確に答えられる構成が“信頼される提案”へとつながります。

次回は「GPU編」です。

AI処理や映像解析など、GPUの導入が必要になるシーンや、サーバー設計に与える影響を解説していきます。

次回:【第6回】GPU編:AI?映像処理?GPU搭載サーバー提案の基本と落とし穴