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プリセールスの構成提案において、最後に問われるのは「この構成、ライセンスはどうなっていますか?」という一言です。
どれだけ技術的に正しい構成でも、ライセンス設計に根拠がなければ、見積は通らず、顧客の信頼も得られません。
この記事では、Windows ServerとRed Hat Enterprise Linux(RHEL)を中心に、物理・仮想両対応のライセンス設計の基本と提案時のポイントを体系的に解説します。
Windows Serverライセンスの基本(2025年時点)
エディションの違いと利用可能なVM数
エディション | VM利用 | 主な用途 |
---|---|---|
Standard | 最大2VM(同一ホスト上) | 小〜中規模システム |
Datacenter | 無制限(同一ホスト上) | 仮想化基盤(VM多用) |
ライセンス単位
- 物理CPUではなく「物理コア」単位
- 1サーバーあたり 最小16コア分(8コア × 2CPU) の購入が必須
使用例
- 物理で直接OSを入れる(ベアメタル) → Standard(16コア)
- 2VMまで運用 → Standard(16コア)でOK
- 3VM以上 → VM数に応じてStandardを複数買う or Datacenterに切り替える
仮想環境におけるWindows Serverライセンス設計
VMが少ない場合(2台まで)
- Standard ×1(16コア分)でOK
VMが多い場合(3台以上)
- Standard ×2(16コア ×2)で4VMまで可
- 5VM以上ならDatacenterの方がコストメリット大
仮想環境での注意点
誤解 | リスク | 正しい対応 |
---|---|---|
VMを移動したらライセンスも付いてくる | ✕違反の可能性 | VMを移動する全ホストにライセンスを付ける |
CPUを増設してもライセンス据え置き | ✕不足 | コア数追加=ライセンス追加が必要 |
Standardを使ってVMを複数台同時に動かす | ✕違反 | 2VMごとにライセンスを買う or Datacenterに移行 |
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のライセンス設計
RHELは、サブスクリプション制で提供されるLinux OSです。物理でも仮想でも共通の考え方で管理されますが、形態によって若干の注意点があります。
ライセンス単位と種類
提供形態 | ライセンス単位 | 主なプラン |
---|---|---|
物理(ベアメタル) | 物理ソケット or コア | RHEL Server(1-2ソケットまで) |
仮想(ハイパーバイザー上) | VM単位 | RHEL for Virtual Datacenters(無制限VM) RHEL for Virtual Servers(VM単位) |
サブスクリプションの特徴
- 年間課金制(1年/3年契約が多い)
- サポートレベル(Standard / Premium)が選べる
- Red Hat Customer Portal(RHSM)による台帳管理必須
- 商用サブスクリプションなしではアップデート・YUMが使えない
提案パターン別
構成 | おすすめサブスクリプション | 備考 |
---|---|---|
物理1台だけ | RHEL Server(1ソケット or 2ソケット) | ソケット数で課金 |
VMが複数台 | RHEL for Virtual Servers × VM数 | VM単位でカウント |
vSphereクラスタ上に多数VM | RHEL for Virtual Datacenters | 物理ホストに紐づけてVM数無制限 |
WindowsとRHELのライセンス設計:比較とポイント整理
観点 | Windows Server | RHEL |
---|---|---|
課金単位 | 物理コア | ソケット or VM単位 |
最小要件 | 1サーバー16コアから | ソケット数ベース(基本1または2) |
仮想対応 | Standard=2VM、Datacenter=無制限 | VM単位/ホスト単位で無制限も可 |
契約形態 | 永続 or サブスクリプション | 年間サブスクリプションのみ |
運用管理 | ライセンスキー(KMS/MAK) | RHSMによるサブスク登録必須 |
プリセールスとして押さえるべき設計のコツ
提案時にヒアリングすべきポイント
- VMの数は?(将来増えるか?)
- 既存のライセンスを保有しているか?(再利用可否)
- クラスタ構成 or 単一構成?
- OSはWindows?Linux?どちらも?
- 年間契約可否(サブスク)やサポートレベル希望の有無
資料に書くべき説明例(提案書用)
「Windows Server Datacenterライセンス(24コア)を本物理ホスト1台分に割当てることで、仮想マシン数に制限なくご利用いただける設計となっています。」
「Red Hat Enterprise Linux for Virtual Datacenters をサーバー1台分ご契約いただくことで、仮想基盤上のすべてのRHEL VMを正規サポート付きで運用可能です。」
まとめ:ライセンス設計は“システム設計の一部”
ライセンスは、単なるコスト項目ではありません。
「構成の正当性」「拡張性」「管理性」を裏付ける、設計そのものです。
プリセールスとして、以下をしっかり説明できることが重要です:
- なぜこのライセンス形態を選んだのか?
- 今後の増設時にどうなるか?
- サポートや法的観点で問題がないか?
提案構成に「ライセンスの根拠」が添えられていれば、信頼性・安心感・専門性を示す大きな武器になります。
次回は「ラック設計編」です。
物理レイアウトとラック設計について解説していきます。