【第1回】ストレージの全体像をつかもう

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インフラエンジニアとして最初に直面するのが、「ストレージ」という存在です。

「データはクラウドに置くから大丈夫でしょ」と思うかもしれませんが、オンプレミス環境やハイブリッド構成では、自社でストレージを構築・運用する機会がまだまだ現役です。

特に仮想化・バックアップ・データ分析といった用途では、ストレージの性能や設計がシステム全体の安定性・可用性に直結します。

本連載では、初学者が理解すべきストレージの基本構造から、実務で役立つ選定・構築の知識までを段階的に解説していきます。今回はその導入として、「ストレージの全体像」を押さえておきましょう。

ストレージとは何か?:保存先としての役割だけではない

ストレージとは一言で言えば「データを保存しておく場所」です。

とはいえ、単なる「保存」だけではなく、

  • どれくらいのスピードで
  • どれくらいの可用性で
  • どれくらいの規模で

データを扱えるかが問われるのが、インフラにおけるストレージの世界です。

サーバが「頭脳」なら、ストレージは「記憶装置」。
CPUやメモリが高速でも、ストレージが遅ければ全体のパフォーマンスは出ません。

ストレージの分類は大きく3つ

現在、ストレージは接続方式によって大きく3つに分類されます。

接続方式説明主な用途
DAS(Direct Attached Storage)サーバに直接接続小規模構成・ローカル用途
NAS(Network Attached Storage)ネットワーク越しにファイル単位でアクセスファイル共有・部門サーバ
SAN(Storage Area Network)ネットワーク越しにブロック単位で接続仮想化・データベース用途

それぞれの特徴を概観しておきましょう。

DAS(Direct Attached Storage)

DASはその名の通り、サーバに直接接続されるストレージです。
内部のSATA/SASスロットにHDDやSSDを装着したり、外部RAIDボックスをUSBやSASケーブルで接続する形態です。

メリット構成がシンプルで、コストも低め
デメリット複数サーバで共有できない、可用性に乏しい
主な使用例スタンドアロン型の業務システムや、小規模オフィスのローカルストレージ

NAS(Network Attached Storage)

NASは、TCP/IPネットワークを通じてファイル共有を行うストレージです。
WindowsではSMB(CIFS)、Linux/UNIXではNFSというプロトコルを用いて、LAN経由でファイルにアクセスします。

中小企業向けのNAS製品(Synology、QNAPなど)はGUIでの操作性も高く、近年は仮想化連携やバックアップ機能も充実しています。

メリット複数ユーザーでのファイル共有が容易、運用も簡単
デメリットあくまで「ファイルアクセス」なので仮想化やDBには不向き
主な使用例ファイルサーバ、バックアップ保存先、動画・写真データの共有

SAN(Storage Area Network)

SANは、ストレージ専用ネットワーク上でサーバとストレージを接続し、ブロック単位でデータをやり取りする方式です。
主にiSCSIやFibre Channel(FC)といった専用プロトコルを使い、ストレージをOSから見ればローカルディスクのように扱うことができます。

メリット高速・低遅延なアクセス、仮想化との親和性が高い
デメリット構築が複雑でコストも高め
主な使用例VMwareやHyper-Vなどの仮想化基盤、データベース、基幹システム

エンタープライズ環境では、冗長構成のSANストレージ+SANスイッチ+複数ホストという設計が一般的です。

ストレージ選定に必要な視点

これら3方式のどれを採用するかは、以下のような観点で判断されます:

  • 必要な容量・性能
  • 同時アクセス数
  • 可用性(冗長構成が必要か)
  • サーバ台数と拡張性
  • 予算(特にSANは高額)

初学者のうちは、「共有したいならNAS、仮想化するならSAN、シンプルに済ませたいならDAS」というざっくりした理解でも構いません。

まとめ:まずは全体像を押さえよう

ストレージは、単に「データをしまう場所」ではなく、サーバの性能や信頼性に大きな影響を与える重要な構成要素です。
接続方式によって、用途や構築の難易度、可用性が大きく異なります。

次回はこの3方式の比較をさらに深掘りし、それぞれの実務での使い分け方選定ポイントを具体的に解説していきます。