第1回:ネットワークの全体像と役割

ページ内に広告が含まれる場合がございます。

サーバーやストレージ、クラウドといったインフラ技術を扱ううえで、ネットワークの基礎理解は欠かせません。

しかし、ネットワークという言葉は広く、何をどこまで理解すればいいのか迷う人も多いのではないでしょうか。

本連載では、インフラエンジニアとしての実務視点と、プリセールスとしての提案・設計視点の両方から、ネットワークの基礎を分かりやすく解説していきます。

ネットワークとは何か?:単なる“つなぐ仕組み”ではない

ネットワークは、「複数のコンピュータやシステムをつなぎ、データのやり取りを可能にする仕組み」です。

単にLANケーブルでつなげばいい、という話ではありません。通信の方式、セキュリティ、可用性、トラブル対応など、非常に多くの要素が含まれます。

ネットワークは、ITインフラの血管のようなもの。

サーバーやアプリがどれだけ優れていても、ネットワークが不安定ではサービスは成り立ちません。

OSI参照モデルで理解するネットワークの階層構造

ネットワークの全体像を把握するうえで便利なのが「OSI参照モデル」です。
これは通信を7つの階層(レイヤ)に分けて定義した考え方です。

レイヤー名称主な役割・要素例
L1物理層電気信号・ケーブル・コネクタ・NIC。物理的な接続の制御を担当。
L2データリンク層MACアドレスによる通信。イーサネット、スイッチ、VLANなどが該当。
L3ネットワーク層IPアドレス、ルーティング、ゲートウェイ。パケットの経路制御を行う。
L4トランスポート層TCP/UDPなど。ポート番号による通信の管理、信頼性や順序制御を行う。
L5セッション層通信の開始・維持・終了(セッション管理)。例えばログイン状態の維持など。
L6プレゼンテーション層データの表現形式を整える。暗号化・文字コード変換・圧縮などが該当。
L7アプリケーション層ユーザーが直接使うサービス(HTTP、DNS、FTP、SMTPなど)を提供。

このモデルを使うことで、障害の切り分けや設計時の議論がしやすくなります。

プリセールス視点:ヒアリングと要件定義に活かす

プリセールスエンジニアにとってネットワークの基礎知識は、以下の場面で非常に役立ちます。

要件ヒアリングで「どの層の話をしているのか」を整理する

例:「拠点間をつなぎたい」→ L3レイヤーのルーティング

設計書・提案資料で、正確な表現を使う

例:「冗長構成あり」とは何の冗長か(回線?ルーター?スイッチ?)

さらに、セキュリティ要件やクラウド接続時の議論など、ネットワークの理解がないと話についていけない場面が多くあります。

インフラエンジニア視点:構築・トラブル対応に直結

構築時にはネットワーク設定が大前提です。

  • IPアドレス設計
  • VLAN割り当て
  • ルーティング設定
  • NATやファイアウォールの設定

また、トラブル対応では「どこで通信が止まっているか」をOSレイヤー〜物理レイヤーまで切り分ける能力が求められます。

ping、tracert、tcpdumpといった基本コマンドの使いこなしも、ネットワーク理解の土台があってこそです。

実際のネットワーク構成の一例

以下は中小企業向けの典型的な構成です

[インターネット]

[ルーター(L3)]

[ファイアウォール]

[スイッチ(L2)] ── VLAN1(業務) ─ PC/Server
└─ VLAN2(来客用) ─ Wi-Fi AP

このような構成を提案・構築・説明できるのが、ネットワーク理解の第一歩です。

まとめ:ネットワークは“共通言語”になる

ネットワークの基礎は、インフラエンジニアにもプリセールスにも「共通言語」としての役割があります。

各職種の垣根を越えて、プロジェクト全体を成功に導くための土台です。

次回は、物理層とデータリンク層(L1/L2)にフォーカスし、VLANやスイッチの基礎をわかりやすく解説します。