第3回:ネットワーク層とルーティングの基礎

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L1・L2で「物理接続」と「セグメント内の通信」ができるようになりました。

次に重要なのが「異なるネットワーク間の通信」を実現するネットワーク層(Layer 3)の理解です。

本記事では、インフラエンジニアに必須なIP設計・ルーティング・冗長化の基本、プリセールスとして抑えるべき設計上の論点を丁寧に解説します。

L3(ネットワーク層)の役割とは?

ネットワーク層では、異なるセグメント間での通信を担います。ここで登場するのが以下の要素です:

IPアドレス

通信の宛先

ルーティング

どの経路で届けるかの制御

ゲートウェイ

別ネットワークへの出入口

この階層が正しく設計・動作していなければ、同じLANケーブルで接続していても通信できないという事態が起こります。

IPアドレスとサブネットの基本

IPアドレスは、デバイスごとに割り振られるネットワーク上の住所です。

IPv4アドレスの構造

  • 例:192.168.10.5/24
    • 「192.168.10」がネットワーク部(/24)
    • 「5」がホスト部(PCやサーバの識別子)

サブネットマスク

  • /24 = サブネットマスク 255.255.255.0
  • サブネットを変えることで、ネットワークの分離と管理が可能になります

設計のポイント

  • DHCP or 固定IPを使い分ける
  • ゲートウェイ(例:192.168.10.1)の重複に注意
  • IP枯渇・重複リスクを防ぐために、計画的なIPアドレス管理が必要

ルーティングの仕組みと種類

1. 静的ルーティング(Static Routing)

  • 手動で経路を設定する方式
  • 小規模・シンプルな環境に向く
  • 設定例(Cisco): nginxコピーする編集するip route 192.168.20.0 255.255.255.0 192.168.10.254

2. 動的ルーティング(Dynamic Routing)

  • ルーター同士が経路情報を自動交換
  • 大規模環境や複雑な冗長構成で使われる
プロトコル特徴
OSPF内部向け。経路コストで選択
BGPインターネットでも利用。経路制御が柔軟

3. デフォルトルート(Default Route)

  • 例:0.0.0.0/0 → インターネットへ出る「出口」の指定
  • 通常はルーターやファイアウォールが終端

ゲートウェイとセグメント間通信

ゲートウェイは、「自分が属するネットワーク以外と通信したいときに使う中継役」です。

  • 例:192.168.10.5の端末が、192.168.20.10にアクセスしたいとき
    • 自ネットワーク外 → ゲートウェイ(例:192.168.10.1)にパケットを送信
    • ゲートウェイはルーティングに従って転送

L3スイッチとルーターの違い

項目L3スイッチルーター
主な役割VLAN間ルーティング異ネットワーク間の中継
速度高速(L2チップ搭載)低速(詳細制御あり)
用途社内LAN内通信拠点間・外部接続など

VRRPと冗長化技術の基本

ネットワーク設計では「ゲートウェイが落ちたら通信不能」というリスクを回避するため、冗長化が重要です。

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)

  • 仮想IPアドレス(VIP)を用意し、複数のルーターの中で1台を「アクティブ」とする
  • アクティブ機が落ちたら、バックアップ機が自動で引き継ぐ
項目説明
仮想IPクライアントが設定するゲートウェイ
マスター通常時のゲートウェイ役
バックアップ障害時に自動昇格する待機機器

→ クライアント側から見れば「常に同じIP」に通信しているように見える

VRRPと冗長化技術の基本

ネットワーク設計では「ゲートウェイが落ちたら通信不能」というリスクを回避するため、冗長化が重要です。

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)

  • 仮想IPアドレス(VIP)を用意し、複数のルーターの中で1台を「アクティブ」とする
  • アクティブ機が落ちたら、バックアップ機が自動で引き継ぐ
項目説明
仮想IPクライアントが設定するゲートウェイ
マスター通常時のゲートウェイ役
バックアップ障害時に自動昇格する待機機器

→ クライアント側から見れば「常に同じIP」に通信しているように見える

実際の構成イメージ

【VLAN10】(192.168.10.0/24)─┐

[L3スイッチ] ─ デフォルトゲートウェイ → [FW] → Internet

【VLAN20】(192.168.20.0/24)─┘

※ 各VLANの通信はL3スイッチでルーティング
※ FWとL3スイッチ間はVRRP構成で冗長化

よくあるトラブルとその原因

症状原因
他セグメントのPCにpingが届かないゲートウェイ未設定 or ルーティング未定義L3
インターネットに出られないデフォルトルート未設定 or DNS不整合L3/L7
VIPにpingが通らないVRRP構成ミス、プライオリティ設定不備L3

まとめ

ネットワーク層(L3)は、「セグメントを超える通信」を成立させる心臓部です。

適切なIP設計とルーティング設定、そして冗長化が揃ってこそ、信頼性の高いインフラが実現されます。

プリセールスとしては、こうした構成を要件に基づいて提案できることが大切です。