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ネットワーク構築は、単に「機器をつなぐ」ことではありません。
安定して、効率よく、安全に運用し続けるには、設計段階での“ちょっとした配慮”や“構成の工夫”が不可欠です。
本記事では、実務で役立つネットワーク設計のベストプラクティスを「冗長性」「QoS」「スモールスタート」の3つの視点から解説します。
冗長構成の基本:障害に備える設計
なぜ冗長化が必要なのか?
ネットワークは単一障害点(SPOF:Single Point of Failure)があると、そこがダウンしただけで全体に影響を及ぼします。
冗長化は可用性と信頼性を確保するための基本戦略です。
冗長化の例とパターン
対象 | 冗長化方法 | 備考 |
---|---|---|
スイッチ | スタック構成 / リング構成 | L2ループ制御(STP)も考慮 |
ルーター | VRRP / HSRP / ゲートウェイ冗長 | 仮想IPアドレスを使って切替 |
回線 | マルチキャリア / LTEバックアップ | キャリア分散が理想 |
サーバ接続 | デュアルNIC + リンクアグリゲーション | 物理断線対策にも効果的 |
プリセールスのポイント
- 可用性要件(SLA)を確認
- コストとのバランス説明が重要(“全冗長”は非現実的なケースも)
- 機器選定時に冗長機能が内蔵されているかチェック
QoS(Quality of Service)の活用:通信品質の最適化
QoSとは?
QoSとは、通信の優先順位を設定し、帯域や遅延を制御する技術です。
すべてのトラフィックを平等に扱うと、業務に必要な通信が遅延・輻輳する可能性があります。
QoSが必要なケース
- 音声通話(VoIP)やWeb会議(Zoom, Teamsなど)
- 映像配信、監視カメラの映像転送
- 帯域を食うバックアップ・ファイル転送と共存
主なQoS技術
技術 | 概要 |
---|---|
優先制御(Priority) | 高重要度の通信を優先 |
帯域制御(Rate Limit) | 最大帯域の制限 |
キューイング(Queue) | 通信を分類し、順番に処理 |
CoS / DSCP | VLANタグやIPヘッダに優先度を埋め込む |
プリセールスでの提案例
「音声通話がブツブツ切れる」というニーズがあるなら、「L2スイッチでのQoS対応+DSCP指定」のような形で提案可能です。
スモールスタート設計:将来に備えた拡張性
スモールスタートとは?
「今すぐフル構成にしないが、将来の拡張を見据えた構成」。
コストを抑えながら、成長・変更に強いインフラを作るための設計思想です。
スモールスタート設計のコツ
項目 | 設計のポイント |
---|---|
VLAN設計 | あらかじめ余白のあるVLAN設計に(例:部署ごとに10刻み) |
IPアドレス設計 | 予備を残したサブネット分割 |
ラック/電源/スペース | 空ポート・空U・電源容量に余裕を持たせる |
スイッチスタック | 1台スタート → 将来的に2台目追加可能な構成 |
モジュール構成機器 | 空きスロットで将来拡張に対応(FW、LBなど) |
実際の事例:小規模オフィスのネットワーク
- 初期:10台程度の端末 → PoEスイッチ1台 + AP1台
- 将来:会議室や支店増加 → VLAN追加 + スイッチスタック拡張
- VPN/UTMもリースで導入し、初期投資を抑える
「すぐに全部要らないけど、将来困らない」構成が、経営層にも受け入れられやすい
トラブルを防ぐ設計視点
よくある失敗と対策
失敗例 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
VLAN構成を後から変えられず大混乱 | 一括VLANでスタート | スモールでも部署単位でVLAN割当を |
スイッチがフルポートで拡張不可 | 最初にPoE非対応機器を選定 | PoE+とスタック拡張可能なモデルを選定 |
QoS未設定でWeb会議が不安定 | VoIPとバックアップが同時通信 | 優先度制御 or 帯域制限を事前に設計 |
プリセールス視点:提案に深みを出すコツ
- 「将来的に拠点追加や業務増加の可能性ありますか?」
- 「Web会議やVoIPは社内で使われていますか?」
- 「障害時にどこまでの復旧時間が求められますか?」
技術的な話に入りすぎず、“お客様の業務に寄り添ったヒアリング”を意識することで、設計の深度が自然に高まります。
まとめ
ネットワーク設計は、現状を満たすだけでなく、将来・障害・優先度といった複数の視点から最適化していく必要があります。
- 冗長性:止まらないネットワークを
- QoS:大事な通信を守るしくみ
- スモールスタート:予算と将来性のバランス
プリセールスもエンジニアも、「設計に思想を込める」ことが、お客様との信頼関係を築く第一歩です。