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オンプレミス中心だったネットワーク設計も、クラウドの台頭により大きく変化しています。
特にAWSやAzureなどのパブリッククラウド環境でのネットワーク構成は、設計・提案の現場でも必須の知識になりつつあります。
本記事では、クラウド時代におけるネットワークの基本として、VPC、VPN、Direct Connect、ハイブリッド構成などをわかりやすく解説します。
クラウドネットワークの基礎:VPCとは?
VPC(Virtual Private Cloud)とは?
VPCは、クラウド上で仮想的に構築されるプライベートなネットワーク空間です。
オンプレのLANに相当し、IPアドレス空間・ルーティング・ACLなどを自分で定義できます。
主な構成要素(AWSの場合)
構成要素 | 役割 |
---|---|
VPC | 仮想ネットワークの単位(CIDRブロック指定) |
サブネット | VPCを複数に分割(AZ単位) |
ルートテーブル | サブネットごとの通信経路定義 |
インターネットゲートウェイ | インターネットとの接続 |
NATゲートウェイ | プライベートサブネット→外部通信(戻りは遮断) |
セキュリティグループ | インスタンス単位のファイアウォール |
NACL | サブネット単位のパケット制御(L3/L4) |
オンプレとの接続:VPNとDirect Connect
クラウドは単体で完結せず、オンプレミスと安全に接続する構成(ハイブリッド構成)が一般的です。
VPN接続
- IPSecベースの暗号化トンネル
- インターネット経由で比較的安価
- 構築が手軽、スモールスタート向き
特徴 | 内容 |
---|---|
専用線不要 | インターネットがあれば構築可 |
帯域は不安定 | インターネット経由なので品質は保証外 |
BGP連携可 | 動的ルーティング対応で自動経路制御も可能 |
AWS Direct Connect / Azure ExpressRoute
- クラウドとオンプレを専用線で接続
- 高帯域・低遅延・高信頼性
- 費用はかかるが、ミッションクリティカル用途向き
サブネット設計とセキュリティの考え方
クラウドでは、サブネットの分離とセキュリティグループ/NACLの使い分けが重要です。
パブリック vs プライベートサブネット
種類 | 特徴 |
---|---|
パブリックサブネット | IGW経由で外部通信可。Webサーバ等に |
プライベートサブネット | IGWなし。外部にはNAT経由でのみ通信可能。DBなどに適用 |
セキュリティグループとNACLの違い
項目 | セキュリティグループ | NACL |
---|---|---|
適用単位 | インスタンス単位 | サブネット単位 |
状態追跡 | ステートフル | ステートレス(双方向で設定要) |
主な用途 | アプリレベルの通信制御 | ネットワークレベルの遮断 |
「両方使って多層防御」が基本
よくあるハイブリッド構成パターン
パターン①:社内ADとクラウド連携
- オンプレ:Active Directory(認証)
- クラウド:ファイル共有やアプリ(SaaS/IaaS)
- VPNで接続し、社内アカウントでクラウドへアクセス
パターン②:段階的クラウド移行
- VPCを段階的に拡張
- DBはオンプレ、Web層のみクラウド
- ハイブリッドアーキテクチャでリスク分散
パターン③:BCP/DR対策構成
- 災害対策としてクラウドにレプリカ配置
- 通常はオフ、障害時にフェイルオーバー
プリセールス視点:クラウドネットワークの提案ポイント
観点 | チェックすべきこと |
---|---|
ネットワーク要件 | セグメント分割、IP設計、CIDR重複の有無 |
通信要件 | 社外公開の有無、VPN or Direct Connect必要か |
セキュリティ | セキュリティグループ/NACLポリシーの粒度 |
スケーラビリティ | VPCとサブネットの将来拡張を想定 |
運用体制 | ネットワーク変更の頻度、権限管理の明確化 |
トラブルあるある:クラウド時代ならではの課題
- ケース1:VPC間通信できない
-
- 原因:ルートテーブル未設定 or セキュリティグループ不一致
- → 解決:サブネット間通信にはルートとSGの両方が必要
- ケース2:オンプレとクラウドのIP帯が重複
-
- 原因:CIDRブロックを適当に割り振った
- → 解決:設計初期にIP重複チェックを!
まとめ
クラウドの導入が進む中で、ネットワーク設計も仮想化・分散・可視化を前提としたものへと進化しています。
- VPCとその構成要素
- VPN / 専用線の選択と設計
- セキュリティグループ / NACLの多層防御
- オンプレとのハイブリッド構成
プリセールスとしては、「オンプレと同じように考える」のではなく、「クラウドならではの構成と制約」を踏まえて提案できるかが差別化のポイントです。