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ネットワーク設計というと論理構成に意識が向きがちですが、物理レイアウト(機器配置)や配線設計も極めて重要です。
「論理的には完璧」でも、ラックに収まらない・ケーブルが届かない・放熱でダウン、といったトラブルは少なくありません。
本記事では、プリセールス・エンジニアが提案・構築時に考慮すべき物理設計の基本を、実務に即して解説します。
ラックマウント機器の基礎知識
ラックのサイズ規格
用語 | 内容 |
---|---|
1U(ユニット) | 高さ44.45mm。サーバ・スイッチなどの標準単位 |
19インチラック | 幅の業界標準(19インチ = 約482.6mm) |
42Uラック | 高さ約2m。一般的なフルラックサイズ |
重量と深さにも注意
- サーバ:15〜30kg前後(2Uは重い)
- ストレージやUPSは50kgを超えることも
- ラック奥行きに合わないとケーブルが挿さらないリスクあり
ケーブリング設計のベストプラクティス
ケーブルの色分けと分類
- 色分け例:
- 青=データ通信
- 赤=管理ネットワーク
- 黄=iLO/BMC等の管理LAN
- 黒/灰=電源ケーブル
→ 標準化とトラブル対応の迅速化に有効
前面/背面の配線ルート
配線方式 | メリット | 留意点 |
---|---|---|
フロント配線 | 視認性が良い | 美観を損なう場合あり |
バック配線 | 見た目がすっきり | 作業スペースの確保が必要 |
ケーブルトレイ | 整線しやすい | 曲げ半径と引張強度に注意 |
「サービス手順通りの保守ができる構成」を目指す。
電源設計のポイント
電源タップの選定
項目 | 解説 |
---|---|
コンセント形状 | C13/C14、C19/C20など。機器ごとに異なる |
タップタイプ | ラック横配線型 or 背面縦型 |
電源分離 | A系/B系(冗長電源)を分離する設計が理想 |
容量計算の目安
- 消費電力 = 電圧 × 電流(W = V × A)
- UPSや電源容量に対して60〜80%を上限目安に
プリセールスは“消費電力合計”ではなく“最大瞬間消費”も確認
冷却・放熱の工夫
エアフローの方向に注意
機器タイプ | エアフロー |
---|---|
通常のサーバ | 前面吸気 → 背面排気 |
一部スイッチ | 右吸気 → 左排気(横流れ) |
ラック内のエアフロー方向を揃えないと排熱がこもる
冷却の工夫
- ブランキングパネルで空きスペースをふさぐ
- ラック内の「ホットスポット」をサーモカメラで確認
- スポット空調やリアドア冷却の導入も検討
ラックレイアウトの例
小規模(1ラック構成)
U位置 機器構成(上から下へ)
42U ── ブランキングパネル
40U ── L3スイッチ
38U ── KVM or 管理スイッチ
36U ── サーバ x2(1U)
34U ── ストレージ(2U)
32U ── UPS(2U)
30U ── 空き(将来増設)
→ ケーブルとエアフローを考慮しつつ、熱源と重量物を下部に配置するのが基本
プリセールス提案時のチェックポイント
項目 | チェック内容 |
---|---|
設置場所 | ラックサイズと機器の搬入経路は確保されているか |
床荷重 | 重量の大きいUPSやストレージに耐えられるか(300kg以上になることも) |
電源容量 | 契約容量内か/冗長系は確保されているか |
ラックスペース | 将来拡張を考慮して空きUを確保しているか |
ケーブル長 | 付属ケーブルでは足りないケースが多い |
ありがちな失敗とその対策
トラブル | 原因 | 対策 |
---|---|---|
ケーブルが届かない | 機器間距離を考慮せず購入 | 配線ルート+余長含めて設計 |
ラックにUPSが入らない | 奥行き不足 or 排熱が干渉 | ラック寸法と通風ルートを要確認 |
電源容量不足 | 消費電力の実測をしていなかった | ワットチェッカー等で現地測定推奨 |
まとめ
物理レイヤの設計は、“動いて当然”だからこそ軽視されやすい領域です。
しかし、1本のケーブルや1Uの空きスペースが、全体の運用性・拡張性・信頼性を左右します。
インフラエンジニアもプリセールスも、論理構成と物理設計の両方に強いことがプロフェッショナルの条件です。