第8回:クラウドにおけるリソースの購入戦略と料金プラン設計

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クラウドの料金は「使った分だけ課金」という従量制が基本ですが、運用スタイルに応じて最適な“購入戦略”を取ることで大きくコストを削減できます。

本記事では、AWS・GCP・Azureに共通する「リソースの料金プラン・購入オプション」の考え方と、それぞれの特徴、活用のポイントを解説します。

クラウドにおけるリソースの購入モデル

モデル概要主な用途
オンデマンド(従量課金)使った時間だけ課金。契約不要検証・短期利用・可変負荷
リザーブドインスタンス(予約)1〜3年単位の割引契約長期間稼働する本番環境
スポットインスタンス(余剰)空いている計算資源を格安提供バッチ処理・分散処理・短期用途
サステインドユース / コミットメント長期間の使用に対する割引(GCP)VMやDBを月単位で安く使う

オンデマンドインスタンス(全クラウド共通)

特徴
  • 柔軟性最優先:必要な時に即起動、いつでも停止・削除可能
  • 価格は定価ベース(割引なし)
代表的な使い方
  • テスト・検証環境
  • イベント対応の一時的スケールアウト
  • PoC環境

3. リザーブドインスタンス/Savings Plan(AWS)とその類似

クラウドプラン名割引率契約期間特徴
AWSReserved Instance / Savings Plan最大72%1年 / 3年インスタンスやリージョン固定、もしくは柔軟なSavings Plan選択可
AzureReserved VM Instances最大72%1年 / 3年VMサイズやリージョン固定。自動更新あり
GCPCommitted Use Discount(CUD)最大70%1年 / 3年vCPUとRAMをまとめて予約。インスタンス柔軟性高い

使い方のポイント

できれば利用開始から数ヶ月の実績データを元に「サイズ・時間帯」を見積もるのがベスト

常時稼働が前提の本番環境」では、これが基本戦略

スポットインスタンス(AWS)/プリエンプティブルVM(GCP)/割引VM(Azure)

クラウド名称最大割引率注意点
AWSSpot Instances90%以上予告なく終了。24時間継続保証なし
GCPPreemptible VM(E2など)80%以上最大24時間、強制終了あり
AzureAzure Spot VM90%以上空きがあれば復旧。耐障害性は自前設計
  • 分散バッチ処理(CI/CD、画像変換、DBインポートなど)
  • 冗長性のあるWebサーバ群(Auto Scaling + スポット)
  • 一時的なトレーニング・演算処理(機械学習など)

利用モデル別おすすめ購入戦略(まとめ)

利用シナリオおすすめモデル理由
短期検証・開発環境オンデマンド柔軟性・停止可能
本番システム(常時稼働)リザーブド / CUD長期割引を活かせる
非常用リソース(スケールアウト)スポットコスト圧縮重視
データ処理・AIトレーニングスポット + オンデマンド処理時間に応じて使い分け

プラン選定時の注意点

項目説明
1年 or 3年契約長期になるほど割引率は高いが、解約不可・リスクも
インスタンス柔軟性AWS Savings PlanやGCP CUDなら柔軟に対応可
組み合わせ最適化本番はリザーブド、バッチはスポットなどハイブリッドに構成
運用の自動化スポットは自動リカバリやAuto Scalingと組み合わせることが必須

リソース購入のベストプラクティス

  • 初期はオンデマンドで様子を見る → 使用量が安定したら予約
  • タグを活用してリソース別コストを可視化(部門・サービス別など)
  • Auto Scaling + スポット構成で「平常時:安価、ピーク時:柔軟」な設計
  • Savings Plan or CUDの契約は、Billingチームと連携して計画的に

おわりに:クラウドは「契約戦略」でコストが変わる

クラウドでは、構成を変えずとも“購入モデル”を変えるだけで数十%のコスト削減が可能です。

構築だけでなく、「どう契約するか」も設計の一部として考えることが、運用型クラウドコスト最適化(FinOps)の第一歩です。

次回は、クラウド導入後のトラブル対応や障害復旧の基本戦略(可用性設計・DRなど)について解説します。