【第2回】メモリ編:容量だけじゃない!チャネル構成と選定の基本

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メモリと聞くと、「容量さえ足りていればOK」という印象を持つ方もいるかもしれません。

しかし、サーバーにおけるメモリは、CPUと並ぶ“構成の心臓部”であり、処理性能や安定性、拡張性に直結する重要な要素です。

プリセールスの立場では、単に「64GBで見積もりました」では不十分です。

「なぜその容量か」「どうチャネルを構成するか」「RDIMMとLRDIMMのどちらを選ぶか」といった視点が求められます。

本記事では、構成提案に使える“実務的なメモリの選定ポイント”を解説します。

サーバーメモリの種類と特徴

サーバーで使用されるメモリは、一般的なPC用メモリとは異なり、以下のような特徴を持つ専用品です。

ECC(Error Checking and Correction)
  • 自動的に1ビットのエラーを検出・訂正できる
  • サーバー用途ではECCは必須
RDIMM(Registered DIMM)
  • レジスタ(バッファ)を通して信号を制御
  • 安定性に優れ、大半のサーバーで採用
LRDIMM(Load-Reduced DIMM)
  • 電気的負荷を減らして高容量対応
  • 256GB超のような大容量構成に適しているが高価
SODIMM

ノートPC向けの小型メモリ。サーバーでは通常使用しない

容量の考え方:用途と拡張性で決める

用途によって必要なメモリ容量は異なります。以下はあくまで目安ですが、実務では十分参考になります。

用途推奨容量の目安
ファイルサーバー16GB〜32GB
小規模Web/DB32GB〜64GB
仮想化基盤(VM数10〜20台)128GB〜256GB
VDI/分析系ワークロード256GB〜512GB以上

また、初期提案時に「将来的にメモリを追加したい」と要望されることも多いため、スロットの空きを意識した構成(例:8スロット中4本実装)も重要です。

チャネル構成とパフォーマンスの関係

CPUは、複数の「メモリチャネル」を同時に使うことでデータ転送速度を高速化できます。

たとえば、Intel Xeonでは1CPUあたり6チャネル、AMD EPYCでは8チャネルが一般的です。

チャネルの例

  • デュアルチャネル:同容量のメモリ2枚をペアで実装(帯域2倍)
  • クアッドチャネル:4枚ペアでさらに高帯域
  • 8チャネル(EPYCなど):最大の帯域を活かせるが、スロット設計も注意

例:Xeon Silver 4310T ×1の場合(6チャネル)

  • 最適構成:32GB ×6(192GB)
  • 回避したい構成:64GB ×1(非効率、片肺運転)

このように、「容量」ではなく「構成」そのものが性能に直結します。

世代による違い:DDR4とDDR5

世代特徴
DDR4多くのサーバーで主流。最大3200MT/s程度。コスパ良好
DDR5EPYC GenoaやXeon 4th Genで対応。帯域・容量ともに進化。ただし高価

今後はDDR5対応のサーバーが主流になりますが、コストや既存環境との互換性も考慮する必要があります。

よくあるミスと注意点

スロットの数を確認せず提案してしまう

将来の拡張ができない、チャネルが活かせない構成になる

LRDIMMとRDIMMの混在は不可

メーカー仕様で禁止されている場合が多い

ECCなしの汎用メモリを選定

そもそも動作しない、保守対象外になる

容量に対してOSの制限を見落とす

特定のOSは最大64GBまでなど、ライセンスで制限される場合あり

提案のポイントまとめ(プリセールス的視点)

  • 「なぜこの容量なのか?」に対する根拠を明確に
  • CPUに合わせたチャネル数・スロット配置を意識する
  • 将来拡張や空スロットも提案理由のひとつにできる
  • LRDIMMやDDR5の採用は価格・納期・互換性も加味して判断

まとめ:メモリは“静かなボトルネック”になる

CPUやストレージに比べて、メモリは目立たない存在に見えるかもしれません。

しかし、構成の詰めが甘いと処理性能に深刻な影響を与える要素でもあります。

プリセールスとして提案構成をつくる際は、単なる「GB数」だけでなく、チャネル・構成・拡張性を含めた“考えた提案”ができるようにしましょう。

次回は「RAIDコントローラー編」です。

RAIDレベルの違い、キャッシュ、選定の考え方などについて、実務に即した解説をしていきます。