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信頼性と運用性を高める、ラック電源の考え方
サーバーラック内の機器を安定稼働させるうえで、見落とされがちなのが「電源設計」です。
UPSを導入していても、その電源を“どのように各機器へ分配するか”が最適でなければ、運用中のトラブルや停電時の不具合につながる可能性があります。
本記事では、ラック内の電源分配の要となるPDU(Power Distribution Unit)の基礎知識と、選定・設計のポイントを詳しく解説します。
PDUとは何か?UPSとの違い
PDUとは、「Power Distribution Unit」の略で、1本の電源から複数の機器へ電源を分岐・供給する装置です。
見た目は電源タップに似ていますが、ラックマウント設計・負荷設計・安全性など、サーバー用途に特化した仕様となっています。
UPSとの違い
項目 | UPS(無停電電源装置) | PDU(電源分配ユニット) |
---|---|---|
役割 | 停電時の一時給電 | 電源の分岐と分配 |
バッテリ | あり | なし |
接続機器 | 主にPDUへ供給 | サーバー・ストレージ・スイッチなど |
例 | APC SMT1500RMJ2U | APC AP7553 / HPE G2 Basic PDU |
つまり、UPS → PDU → 各機器という流れで接続されるのが一般的です。
PDUの主な種類
PDUには用途や機能によって複数の種類があります。
ここでは現場でよく使われる3種類を紹介します。
Basic PDU(ベーシックタイプ)
- シンプルな「電源タップ」型PDU
- 電流モニタ機能やリモート管理なし
- 低価格で故障リスクが少なく、小規模環境に最適
例:
- HPE G2 Basic PDU
- APC AP9565(垂直マウント型)
Metered PDU(電流表示付き)
- 合計電流値(A)をリアルタイム表示
- オーバーロード防止や分電管理に有効
- 電力設計の見直しや運用改善の足掛かりに使える
例:
- APC AP7553(垂直型、LCD表示)
- サンワサプライ TAP-F37MN(電流メーター付き)
Switched / Intelligent PDU(遠隔制御型)
- ネットワーク経由で電源ON/OFF制御や再起動が可能
- 機器ごとの電力使用量も監視可能(モデルによる)
- 遠隔地からの電源制御が必要なデータセンター向け
例:
- APC AP8941(ネットワーク対応、個別制御付き)
- HPE G2 Switched PDU(iLO連携も可能)
縦型 vs 横型 PDU:どちらを選ぶ?
PDUには縦型(ゼロU)と横型(1U/2U)の2種類があります。
項目 | 縦型(垂直設置) | 横型(水平設置) |
---|---|---|
設置位置 | ラック背面(縦の柱) | ラック前面または中段 |
利点 | ラックのU数を消費しない/コンセント数が多い | メンテナンスしやすい/一部機器に向く |
向いている構成 | サーバー多数の構成 | 小型ラックや一部UPS構成 |
ラックの空きU数に余裕がない場合は、ゼロUの縦型が一般的です。
■ PDU選定で失敗しないためのチェックポイント
電源の信頼性を確保するために、PDU選定時には以下の項目を確認しましょう。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
コンセント形状 | C13/C19(IEC規格)とNEMA(米国)で異なる。サーバー側と一致するか確認 |
合計最大電流 | 搭載予定機器の電力を合計し、80%以下に抑えるのが目安 |
電源コード長 | UPSからの距離、配線経路を想定して長さを選定 |
二重化対応 | ラックにPDUを2本設置(UPS A/B系)する構成が理想 |
取り付け方法 | ネジ固定かスナップマウントか。工具不要のモデルも増えている |
二重化構成のすすめ
重要なシステムでは「電源の単一障害点」を避けるために、2系統(A系・B系)のUPSとPDUを用意し、サーバー側でも2電源入力(冗長電源)を持つ機器に接続します。
このような構成により、
- 一方のUPSが故障・メンテ中でもシステムが継続稼働
- ケーブルの断線やPDU交換にも柔軟に対応
といった高可用性を確保できます。
まとめ:PDUはラック構成の“見えないインフラ”
ラックの設計において、PDUは単なる「電源タップ」ではなく、電力の最終分岐点であり、運用の信頼性や保守効率に直結する要素です。
選定時には、搭載予定の機器構成だけでなく、
- 将来の拡張性
- 管理方法(リモート/ローカル)
- 配線ルートやメンテナンス性
といった中長期的な視点で判断することが重要です。