第5回:PDU(電源分配ユニット)とは?ラック内の電源設計の基本

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信頼性と運用性を高める、ラック電源の考え方

サーバーラック内の機器を安定稼働させるうえで、見落とされがちなのが「電源設計」です。

UPSを導入していても、その電源を“どのように各機器へ分配するか”が最適でなければ、運用中のトラブルや停電時の不具合につながる可能性があります。

本記事では、ラック内の電源分配の要となるPDU(Power Distribution Unit)の基礎知識と、選定・設計のポイントを詳しく解説します。

PDUとは何か?UPSとの違い

PDUとは、「Power Distribution Unit」の略で、1本の電源から複数の機器へ電源を分岐・供給する装置です。

見た目は電源タップに似ていますが、ラックマウント設計・負荷設計・安全性など、サーバー用途に特化した仕様となっています。

UPSとの違い

項目UPS(無停電電源装置)PDU(電源分配ユニット)
役割停電時の一時給電電源の分岐と分配
バッテリありなし
接続機器主にPDUへ供給サーバー・ストレージ・スイッチなど
APC SMT1500RMJ2UAPC AP7553 / HPE G2 Basic PDU

つまり、UPS → PDU → 各機器という流れで接続されるのが一般的です。

PDUの主な種類

PDUには用途や機能によって複数の種類があります。

ここでは現場でよく使われる3種類を紹介します。

Basic PDU(ベーシックタイプ)

  • シンプルな「電源タップ」型PDU
  • 電流モニタ機能やリモート管理なし
  • 低価格で故障リスクが少なく、小規模環境に最適
例:
  • HPE G2 Basic PDU
  • APC AP9565(垂直マウント型)

Metered PDU(電流表示付き)

  • 合計電流値(A)をリアルタイム表示
  • オーバーロード防止や分電管理に有効
  • 電力設計の見直しや運用改善の足掛かりに使える
例:
  • APC AP7553(垂直型、LCD表示)
  • サンワサプライ TAP-F37MN(電流メーター付き)

Switched / Intelligent PDU(遠隔制御型)

  • ネットワーク経由で電源ON/OFF制御や再起動が可能
  • 機器ごとの電力使用量も監視可能(モデルによる)
  • 遠隔地からの電源制御が必要なデータセンター向け
例:
  • APC AP8941(ネットワーク対応、個別制御付き)
  • HPE G2 Switched PDU(iLO連携も可能)

縦型 vs 横型 PDU:どちらを選ぶ?

PDUには縦型(ゼロU)横型(1U/2U)の2種類があります。

項目縦型(垂直設置)横型(水平設置)
設置位置ラック背面(縦の柱)ラック前面または中段
利点ラックのU数を消費しない/コンセント数が多いメンテナンスしやすい/一部機器に向く
向いている構成サーバー多数の構成小型ラックや一部UPS構成

ラックの空きU数に余裕がない場合は、ゼロUの縦型が一般的です。

■ PDU選定で失敗しないためのチェックポイント

電源の信頼性を確保するために、PDU選定時には以下の項目を確認しましょう。

チェック項目内容
コンセント形状C13/C19(IEC規格)とNEMA(米国)で異なる。サーバー側と一致するか確認
合計最大電流搭載予定機器の電力を合計し、80%以下に抑えるのが目安
電源コード長UPSからの距離、配線経路を想定して長さを選定
二重化対応ラックにPDUを2本設置(UPS A/B系)する構成が理想
取り付け方法ネジ固定かスナップマウントか。工具不要のモデルも増えている

二重化構成のすすめ

重要なシステムでは「電源の単一障害点」を避けるために、2系統(A系・B系)のUPSとPDUを用意し、サーバー側でも2電源入力(冗長電源)を持つ機器に接続します。

このような構成により、

  • 一方のUPSが故障・メンテ中でもシステムが継続稼働
  • ケーブルの断線やPDU交換にも柔軟に対応

といった高可用性を確保できます。

まとめ:PDUはラック構成の“見えないインフラ”

ラックの設計において、PDUは単なる「電源タップ」ではなく、電力の最終分岐点であり、運用の信頼性や保守効率に直結する要素です。

選定時には、搭載予定の機器構成だけでなく、

  • 将来の拡張性
  • 管理方法(リモート/ローカル)
  • 配線ルートやメンテナンス性

といった中長期的な視点で判断することが重要です。