第6回:ラックの保守性と安全性を高める設計要素

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使いやすく、安全で、信頼されるラック環境を構築するには?

サーバーラックは、機器を収納するだけでなく、保守・管理・セキュリティ・耐災害性など、長期的な運用の質を左右する重要な基盤です。

設置した後に「開けづらい」「作業しづらい」「揺れる」「鍵が壊れた」などのトラブルが起きると、日常業務にも深刻な支障を及ぼします。

本記事では、ラックの保守性と安全性を高めるためのポイントを、設計・選定・運用の3視点から解説します。

保守性を高める設計要素とは?

前後・側面アクセスの確保

サーバーの配線やメンテナンスを行う際、前後のドアの開閉側面パネルの脱着性が重要になります。

設置時にはラックの前後に500mm以上、側面に300mm以上のスペースを取ると、作業が格段にしやすくなります。

また、以下のような仕様も保守性を向上させます:

  • 180度開く前面・背面ドア(開閉がスムーズ)
  • ワンタッチで外れるサイドパネル
  • ケーブルマネジメントバーの装備
  • スライドレール付き棚板やサーバートレイ

保守性を意識したラック選びは、「障害対応のスピード」や「作業者の負担」に直結します。

キャスター vs 固定脚

ラックの移動性と安定性はトレードオフの関係にあります。

タイプ特徴用途
キャスター付き移動や設置変更が容易/仮設や検証用途に向くテスト環境、小規模オフィス
固定脚タイプ地震時に安定/床へしっかり固定できる常設サーバールーム

HPEやAPCのラックではキャスター+固定金具の両方を装備しており、「移動してから固定」という設置スタイルが一般的です。

棚板とスライドレール

ラック内の一部に据え置き型機器(NAS、UPS、スイッチなど)を載せる場合、棚板は必須です。

  • 固定棚板:一度載せたら動かさない構成向け。安価で耐荷重が高い。
  • スライド棚板:機器を手前に引き出せるため、メンテが容易。DVDドライブなど前面操作が多い機器に最適。
  • 重量用棚板:UPSやストレージなど30kg以上の機器を搭載する際に使用。

設置時には、「耐荷重」「奥行き対応」「取付穴規格(EIA19インチ)」を確認しましょう。

安全性を高める設計要素とは?

鍵付きドア/アクセス制限

セキュリティ上、物理的なアクセス制限は非常に重要です。

ラックには標準で前面・背面ドアの鍵が装備されていることが多いですが、以下の点も確認すべきです:

  • 同一鍵 or 異なる鍵番号か
  • スペアキーの手配有無
  • 電子錠・テンキー式の有無(高セキュリティ環境向け)

ラックの物理セキュリティを高めることで、不正な操作や情報漏洩リスクを大幅に軽減できます。

耐震性・転倒防止対策

ラック自体が倒れるリスクは、地震大国・日本では見過ごせません。

ラックの耐震性向上には以下のような対策があります:

  • アンカー固定用プレート(床に固定)
  • 耐震用ブラケットの追加
  • 防振ゴム or 耐震マットの使用
  • 転倒防止チェーンの設置

特にフル実装時は500kgを超えるケースもあり、床荷重の確認と転倒防止策のセット導入が推奨されます。

耐火性/防塵性の配慮

防災観点から、耐火性能を持つラックや、防塵性能の高い密閉型ラックを選ぶ企業もあります。

  • 防塵フィルター付き前面扉
  • ケーブル引込部にブラシパネル(隙間塞ぎ)
  • 密閉型ラック(ファン+フィルター付き)

これらは製造業・工場・倉庫などの粉塵環境で特に有効です。

運用時のチェックリスト

ラック運用フェーズで意識したい「安全性&保守性」の運用チェック項目を以下にまとめます。

チェック項目内容
鍵管理が行き届いているか鍵の貸出履歴、番号管理、保管場所など
配線が整理されているかトラブル対応の迅速化/熱のこもり防止
キャスターはロックされているか小規模オフィスでは動作中の転倒に注意
定期的に清掃しているかホコリは放熱効率の低下・故障の原因に
棚板に過剰な重量を載せていないか耐荷重超過で棚板が変形・破損する恐れ

まとめ:ラックは「設置後の安心感」まで設計するべき

ラックは設置したら終わりではなく、その後の10年に渡る保守・トラブル対応・増設に対応していく必要があります。

そのためには、最初の段階で「使いやすさ」「アクセス性」「安全性」を見込んだ設計を行うことが、インフラ全体の“事故予防”につながるのです。