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床が抜ける?空調が効かない?電源が足りない? ラック設置のリアルな落とし穴を防ぐ
サーバーラックを導入する際、「スペック表通りのサイズだから問題ない」と考えるのは危険です。
実際の現場では、「床がたわんだ」「空調が全然効かない」「電源ブレーカーが飛んだ」といった物理的な設計ミスが、トラブルの原因になります。
本記事では、ラックの設置場所に求められる物理的な要件(床荷重・空調・電源・レイアウト)について、現場でありがちな落とし穴とその回避策を解説します。
床荷重 ― 「ラック+中身」の重量に耐えられるか?
ラック1本で500kgを超えることも
ラック自体の重量は30~70kg程度ですが、以下を搭載した場合の総重量は想像以上です:
- 1Uサーバー × 10台(各15kg) = 約150kg
- UPS(2U、重量型) = 約40kg
- ストレージ(3U、RAID構成) = 約60kg
- PDU、棚板、スイッチ類一式 = 約30kg
- ケーブル+ラック本体 = 約70kg
合計:約350~450kgが一般的。フル実装では600kg超も現実的です。
床荷重の目安
フロアタイプ | 一般的な耐荷重 | 備考 |
---|---|---|
一般事務所のOAフロア | 約300kg/m² | 軽量ラックならOKだが制限あり |
フリーアクセスフロア(強化型) | 約500~600kg/m² | 実装内容により補強が必要 |
データセンター用床 | 約1000kg/m²以上 | 安全域あり、推奨設置環境 |
対策例:重量分散マット、底面プレート、アンカー固定+床補強の組み合わせ
空調 ― サーバーが熱暴走しない空間設計
ラック内のエアフローを活かすための空間
多くのサーバーは前面吸気・背面排気です。設置場所に求められる空調条件は以下の通り:
- ラック前面:約800mm以上の空間を確保し、吸気が遮られないようにする
- 背面:約500mm以上の通風スペースを確保し、熱が滞留しないようにする
- 部屋全体に空気の流れ(対流)を意識した構造が望ましい
部屋ごとの冷却戦略
部屋の規模 | 冷却方式 | 備考 |
---|---|---|
小規模(1〜2ラック) | 壁掛けエアコンでも対応可 | 排熱が室内にこもりがち、夏場は要注意 |
中規模(〜5ラック) | 床置型エアコン+換気扇 | エアフローを意識したファン構成が必要 |
データセンター級 | 冷却ゾーニング(コールド/ホットアイル) | ラック側面の密閉性が効果的に作用する |
対策例:ブランキングパネルの活用、排気ファン付きドア、天井排気ダクト
電源 ― ラック全体の消費電力とブレーカー設計
サーバー1台あたり100~300Wが目安
ラック全体で以下のような電力を消費します:
- サーバー × 10台 = 約1,500W
- スイッチ × 2台 = 約100W
- UPS(自身の損失も含む) = 約200W
- 合計:約2,000W(= 約20A相当 @100V)
単相100V 15Aのブレーカーでは容量オーバーになりやすい。
三相電源 or 200V系の導入検討
- 大型ラックでは単相200V/三相200Vの導入が主流
- UPSやPDUも200V専用モデルを選ぶことで効率化可能
- ラック2系統構成(UPS A/B)時は、分電盤側の設計も要注意
対策例:電力モニタ付きPDUを用いて、常に負荷状況を把握する
ラックレイアウト ― 作業性と冗長性の両立
最低限必要な動線・作業空間
スペース | 最低推奨寸法 | 備考 |
---|---|---|
ラック前面 | 800mm以上 | ドア開閉+ケーブル操作 |
ラック背面 | 500mm以上 | 排熱+保守作業 |
ラック間通路 | 1000mm以上 | 人がすれ違える幅 |
通路が狭いとメンテナンスの際にケーブル抜け・転倒事故の原因に。
ラック配置の注意点
- 壁寄せ設置NG:背面アクセス不能=メンテ不能
- ラックの向き:すべて統一することで、風向き・配線・監視が整う
- 耐震対策:ラックの向き・位置を考慮し、揺れの方向に強い配置に
まとめ:インフラの“最下層”まで設計するのがプロの仕事
ラックの性能や搭載機器に注目しがちですが、それを支える「床」「空気」「電源」「空間」がしっかりしていなければ、どれだけ良い機器を並べても安定稼働は望めません。
設置前には次のチェックを忘れずに:
- 床荷重の制限に対して安全率は十分か
- 空調設計に無理はないか(夏場テスト済みか)
- 電源容量と配線の冗長性は確保されているか
- 通路・作業スペースが取られているか
ラック設計の最終ステップとして、物理環境の設計にこそ最も時間をかけるべきなのです。