はじめに:Zertoは「何をどう保護する」ライセンスなのか
前回の記事で紹介したように、HPE Zertoは“継続的データ保護(CDP)”を実現するDRソリューションです。
では、このZertoをお客様環境に導入・提案する際、どのようにライセンスを見積もるべきでしょうか。
Zertoは、従来のHPE製品とは少し異なるライセンス体系を持っています。
本記事では、HPE版Zertoライセンスの考え方と販売単位の基本を整理します。
これを理解しておくことで、提案時の構成設計や見積もり精度を高めることができます。
1. Zertoライセンスの基本単位:VM単位でカウントする
Zertoのライセンスは、保護対象VM(仮想マシン)単位でカウントします。
つまり、「何台のVMをZertoで保護(レプリケート)するか」で必要ライセンス数が決まります。
例:
- 保護対象VMが 10台 → 10VMライセンスが必要
- 保護対象VMが 100台 → 100VMライセンスを購入
この方式は、従来の「CPUソケット単位(例:Veeamの旧モデル)」や「サーバー台数単位」と異なり、実際に保護対象となるVM数に応じてスケールできるのが特徴です。
これにより、中小規模から大規模まで柔軟にライセンス構成を調整できます。
Zertoでは、レプリケーション対象(送信側/受信側)いずれかのVMに対してライセンスが必要になります。
双方向レプリケーションを行う場合は、それぞれの保護方向ごとにVMをカウントする点に注意しましょう。
2. HPE版Zertoの製品体系:ZDP(Data Protection)ライセンス
HPEによる買収後、Zertoは「HPE Zerto Data Protection(ZDP)」として再構成されました。
従来のZerto Virtual Replication(ZVR)ライセンスは廃止され、現在はHPE製品体系に統合されています。
代表的な製品名と構成は次の通りです。
| 製品名 | 内容 | ライセンス単位 | 保守形態 |
|---|---|---|---|
| HPE Zerto Data Protection 1VM 1-Year License | 1VMを1年間保護 | 1VM | 年間サブスクリプション |
| HPE Zerto Data Protection 25VM 3-Year License | 25VMを3年間保護 | 25VM | 3年サブスクリプション |
| HPE Zerto Data Protection 100VM 5-Year License | 100VMを5年間保護 | 100VM | 5年サブスクリプション |
このように、期間(1年/3年/5年)とVM数の組み合わせでSKUが提供されています。
販売時は「1VM単位」や「パック単位」でSKUを組み合わせる形になります。
- PXXXXX-B21:Zerto Data Protection 1VM 1Y
- PXXXXX-B22:Zerto Data Protection 10VM 3Y
(※実際の部品番号はHPE製品カタログを参照)
3. 永続ライセンスとサブスクリプションの違い
Zertoにはかつて「永続ライセンス(Perpetual License)」が存在しましたが、
HPE移行後の製品体系では、基本的にサブスクリプション方式が主流です。
| 項目 | 永続ライセンス | サブスクリプションライセンス |
|---|---|---|
| 契約期間 | 無期限(買い切り) | 1年〜5年などの契約期間 |
| 保守 | 別途SnS契約が必要 | 保守込みで提供される |
| 更新 | 任意(SnS更新で延命) | 契約更新が必須 |
| 提案傾向 | 旧Zerto時代の一部顧客のみ | HPE版では標準 |
HPE GreenLakeをはじめ、HPE製品群がすべて「サービス化(as-a-Service)」へ移行している流れに合わせ、
Zertoも同様にサブスクリプションモデルへ完全シフトしています。
そのため、提案時には「年間契約モデル」としてお客様に説明するのが適切です。
4. 保守とサポート:SnS(Support & Subscription)
Zertoライセンスには、HPEの標準保守体系である**Support & Subscription(SnS)**が組み込まれています。
SnSを更新し続けることで、以下のメリットがあります。
- 最新のZertoバージョンへアップデート可能
- セキュリティパッチ/バグ修正へのアクセス
- HPEサポート窓口による技術支援
- GreenLake管理ポータルからの可視化・監視統合(今後の統合強化予定)
また、Zertoのサポートには「HPE Foundation Care」が適用されるケースもあります。
オンプレのZerto導入時に、AlletraやProLiantなどのハードウェア保守と合わせて契約することで、統一的なサポート窓口を提供できます。
5. 見積時に注意すべきポイント
Zertoのライセンスは単純なようで、実務では以下のような点で混乱しがちです。
| 注意点 | 解説 |
|---|---|
| 双方向レプリケーション | 両拠点でライセンスを消費するため、片方向構成の倍のライセンスが必要 |
| テスト環境でのレプリカVM | テスト用VMも保護対象に含まれる場合はカウント対象 |
| 期間の混在 | 1年と3年ライセンスを混在させると更新時期がずれるため非推奨 |
| HPE Care Packとの関係 | Care Pack契約でZertoライセンスが含まれる場合もあり、重複注意 |
特に、HPE ZertoはGreenLake契約下で提供されるケースも増えているため、
お客様の契約形態に応じた見積書の作り分けが重要です。
6. まとめ:ライセンス理解が提案成功の第一歩
HPE Zertoは、VM単位・期間ベースの柔軟なライセンス体系を持つCDPソリューションです。
プリセールス担当者としては、次の3点を押さえておくと提案時の精度が高まります。
- 保護対象VM単位でライセンスを見積もる
- **サブスクリプション期間(1〜5年)**を明示して更新管理を提案する
- HPEストレージやGreenLake契約との整合性を確認する
これらを理解した上で見積もりを作成すれば、Zertoを含むHPEデータ保護ポートフォリオの中で
より適切な提案ができるようになります。
次回予告
次回は、「第3回:HPE Zertoライセンスの型番と販売単位を理解する」として、実際のSKU例やHPE製品体系内でのライセンスの紐づけ方法を具体的に解説していきます。
プリセールスが見積時に悩みがちな「Zertoの部品番号の選び方」を整理します。
