はじめに:SKUを理解してはじめて「Zertoを売れる」
Zertoの概念やライセンス体系を理解していても、実際の見積や構成書に落とし込む段階で
「どの部品番号(SKU)を選べばよいのか?」という壁にぶつかることがあります。
HPE製品体系の中では、Zertoも他のソフトウェア製品と同様に部品番号(Part Number / SKU)で管理されており、
提案・見積時にはこのSKUを正確に選定する必要があります。
本記事では、プリセールス担当者が押さえるべきZerto関連SKUの体系と販売単位を整理します。
1. HPE版Zerto製品名とSKUの命名ルール
HPEではZertoを「HPE Zerto Data Protection」という名称で販売しています。
SKUは通常、P〜またはR〜で始まる部品番号として登録されています。
例(※一部例示、実際の番号はカタログ参照):
| 製品名 | SKU例 | 内容 |
|---|---|---|
| HPE Zerto Data Protection 1VM 1-Year License | P12345-B21 | 1VMを1年間保護する基本ライセンス |
| HPE Zerto Data Protection 10VM 3-Year License | P12346-B21 | 10VMを3年間保護 |
| HPE Zerto Data Protection 25VM 5-Year License | P12347-B21 | 25VMを5年間保護 |
| HPE Zerto Data Protection Upgrade from 1Y to 3Y | P12348-B21 | 契約延長(1年→3年)用SKU |
これらはVM単位×契約期間の掛け合わせでSKUが分かれています。
たとえば「25VM×3年契約」であれば、上記のようなSKUを1点購入するだけで済みます。
保護対象VM数を後から拡張する場合は、追加ライセンスとして同SKUを組み合わせます。
2. ライセンス販売単位の考え方
Zertoのライセンスは以下のいずれかの単位で提供されます。
| 販売単位 | 想定利用規模 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1VMライセンス | 小規模(PoC、少数VM) | 柔軟に増減可能。導入初期に最適 |
| 10VMパック | 中規模(部門システムなど) | 管理しやすくコスト効率が良い |
| 25VM/100VMパック | 大規模(全社システム) | 単価が下がりやすく、長期契約に向く |
ZertoはVM単位課金のため、初期段階では小規模ライセンスでPoCを行い、その後スケールアップする方式が一般的です。
HPEパートナーとしては、お客様の運用ステージ(検証/導入/全社展開)に合わせて、
段階的にSKUを組み合わせて提案できるのが強みです。
3. サブスクリプション期間の選定ポイント
Zertoライセンスには、1年・3年・5年などの期間オプションがあります。
期間ごとにSKUが異なり、単価にも差が出ます。
| 期間 | 特徴 | 提案時の使い分け |
|---|---|---|
| 1年 | 初期導入・PoC向け。短期契約で柔軟性重視 | DR構成の検証提案時 |
| 3年 | 標準的な期間。コストと保守バランス良好 | 通常の企業案件に最適 |
| 5年 | 長期安定運用を想定。単価が最も安い | 公共・金融・基幹業務向け |
異なる契約期間を混在させると更新時期がずれてしまい、契約更新やサポート期間の管理が煩雑になります。
同一案件では期間を揃えるのがベストプラクティスです。
4. 実際の構成書での記載例(提案テンプレート)
Zertoライセンスは、構成書や提案書に明記する際に、以下のように整理すると分かりやすくなります。
| カテゴリ | 製品名 | SKU | 数量 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ソフトウェア | HPE Zerto Data Protection 25VM 3-Year License | P12346-B21 | 1 | 保護対象:VM 25台分 |
| ソフトウェア | HPE Zerto Data Protection 10VM 3-Year License | P12345-B21 | 1 | 追加VM保護分 |
| サポート | HPE Support & Subscription (SnS) Included | – | – | 契約期間内に保守込 |
このように、SKUと数量を明記し、対象VM数を備考に記載することで、
営業部門・技術部門・見積担当間で齟齬が生じにくくなります。
特に、複数拠点(本番/DRサイト)構成の場合は、
「どちら側で何VM保護するか」を表記することが重要です。
5. HPE GreenLake契約との関係
HPE Zertoライセンスは、GreenLake契約下でも提供可能です。
この場合、SKU体系は「オンプレ販売モデル」とは若干異なり、
GreenLakeの使用量ベース(Consumption-based)課金としてまとめられることがあります。
| モデル | 提供形態 | 特徴 |
|---|---|---|
| オンプレ販売 | SKU単位で見積・購入 | 固定費型(前払い) |
| GreenLake契約 | 使用VM数ベースで課金 | 変動費型(従量制) |
プリセールス視点では、**「お客様がGreenLake契約を利用しているか」**を確認することで、
適用するライセンスSKUや契約方式を選定できます。
たとえば、AlletraやProLiantをGreenLake経由で導入している企業では、
Zertoも同一契約に統合できるケースが増えています。
6. SKU選定時によくある質問(FAQ)
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| Q. 保護対象VMが増えた場合、追加購入できますか? | A. 可能です。同一SKUを追加購入すれば即拡張できます。 |
| Q. 契約期間中にVM数を減らした場合、返金はありますか? | A. ありません。購入ライセンス数が上限となります。 |
| Q. 異なる期間のSKUを混在できますか? | A. 技術的には可能ですが、契約管理が煩雑になるため推奨されません。 |
| Q. ライセンスを別拠点に移行できますか? | A. 可能です。同一組織内であれば再割当が認められます。 |
このあたりは営業・プリセールス間での問い合わせが多い部分です。
あらかじめFAQ化しておくと、社内教育資料としても活用できます。
7. まとめ:SKUを正しく選べば提案の信頼性が上がる
HPE Zertoは、シンプルなVM単位課金ながらも、SKUの組み合わせ次第で提案の柔軟性が大きく変わります。
特に、SKU選定の誤りは見積差異や契約トラブルの原因になるため、
プリセールス段階で明確に整理しておくことが重要です。
ポイントをまとめると:
- SKUは「VM数 × 契約期間」で構成される
- 契約期間は1年/3年/5年の中から統一して選定
- GreenLake契約の場合は従量課金モデルを確認
- 双方向レプリケーション時はライセンス数が倍になる
これらを押さえておけば、Zertoライセンスを含む見積書をHPE標準フォーマットで正確に作成できます。
次回予告
次回は、「第4回:Zerto構成設計とライセンス設計の考え方」として、ZVM(Zerto Virtual Manager)やVRA(Virtual Replication Appliance)構成との関係、保護対象VM数とライセンス消費の実際を図解で解説します。
