はじめに:ZVMが“Zertoの頭脳”である理由
Zertoの中心的コンポーネントが、Zerto Virtual Manager(ZVM)です。
ZVMはvCenterやSCVMMと統合し、レプリケーションのポリシー管理・監視・テスト・復旧操作など、Zerto全体の制御を担う「頭脳」にあたります。
プリセールス担当者にとって、ZVMの機能を正しく理解することは、お客様にZertoの“運用しやすさ”を伝える上で非常に重要です。
本記事では、ZVMのUI構成、RPO監視、フェイルオーバーテスト、および運用設計のポイントをわかりやすく整理します。
1. ZVM(Zerto Virtual Manager)の概要
ZVMは、仮想化管理基盤(VMware vCenterまたはMicrosoft SCVMM)にインストールされ、その環境内のZerto Virtual Replication(ZVR)を統括的に管理します。
ZVMの主な役割は以下の通りです。
| 機能カテゴリ | 主な役割 |
|---|---|
| ポリシー管理 | 保護グループ(VPG)の作成、レプリケーション設定 |
| 監視・分析 | RPO/RTO状況、転送速度、障害状況を可視化 |
| フェイルオーバー制御 | DR切替(Failover / Test / Move)操作 |
| アラート・通知 | SLA違反・レプリケーション停止・容量不足の警告 |
| レポート生成 | DRテストやフェイルオーバー履歴の出力 |
ZVMの画面はブラウザベースで提供され、インフラ管理者が直感的に操作できるようデザインされています。
HPEのプリセールスデモでも、ZVMのUIを見せると「想像以上にわかりやすい」と評価されるポイントです。
2. 仮想保護グループ(VPG:Virtual Protection Group)の考え方
Zerto運用の基本単位は「VPG(Virtual Protection Group)」です。
これは、業務単位で複数のVMをグルーピングし、一貫性のある復旧ポイントで保護する仕組みです。
たとえば以下のような構成が考えられます:
| 業務名 | 保護対象VM | VPG名例 |
|---|---|---|
| 基幹システム | DBサーバ・アプリサーバ・Webサーバ | VPG_CORE_SYS |
| ファイルサーバ | Fileshare01, Fileshare02 | VPG_FILE |
| Exchange環境 | Mail01, Mail02 | VPG_MAIL |
このVPG単位で、RPOポリシーやJournal保持期間を設定できるため、「重要度の高いシステムは5秒RPO」「一般業務は60秒RPO」など柔軟な制御が可能です。
3. RPO(復旧時点目標)監視とアラート設定
ZVMのダッシュボードでは、RPO値(Recovery Point Objective)をリアルタイムで監視できます。
各VPGごとに現在のRPOが表示され、しきい値を超えると警告アラートを発報します。
例:
- 正常(緑):RPO < 10秒
- 警告(黄):RPO 10〜30秒
- 異常(赤):RPO > 30秒
これにより、SLA違反を事前に検知することができ、DRサイトへの通信遅延やストレージ負荷が顕在化する前に対処できます。
また、ZVMはメール通知機能を標準搭載しており、運用チームやNOC(Network Operation Center)に自動的に異常通知を送信する設定も可能です。
RPOしきい値は5〜15秒で設定し、アラートをMicrosoft TeamsやServiceNowなどの運用チケット連携に組み込むと効果的です。
4. フェイルオーバーとフェイルオーバーテストの違い
Zertoの大きな強みが、無停止でのフェイルオーバーテスト機能です。
バックアップでは難しい「実際にDR切替を試す」操作を、Zertoでは本番影響なしで実施できます。
| 操作名 | 概要 | 用途 |
|---|---|---|
| Failover | 実際にDRサイトへ切替(本番稼働) | 災害発生時の実運用 |
| Failover Test | 本番を停止せずにDR切替テスト | 定期テスト・監査対応 |
| Move | 意図的なシステム移行(メンテナンス時) | DRサイト→本番サイトの戻し運用 |
ZVMのUI上で数クリックするだけでテスト実施でき、テスト実行後は自動的にクリーンアップ処理を行うため、残データも残りません。
このテスト履歴はレポート出力でき、BCP監査資料としても活用可能です。
実施日時:2025/10/30
対象VPG:VPG_CORE_SYS
結果:正常終了(RPO最大値6秒)
所要時間:4分32秒
5. 運用設計時のポイント(プリセールス視点)
Zertoをお客様へ提案する際、ZVMを中心とした運用設計を説明できると信頼度が格段に上がります。
特に以下の3点は押さえておきましょう。
(1) 運用負荷の軽減
Zertoはエージェントレス構成であり、各VMに専用ソフトを導入する必要がないため、運用管理がシンプルです。
管理対象の増減もZVM上でGUI操作のみで完結します。
(2) DRテストの自動化
ZVMはスケジュールベースでのテスト実行も可能です。
年1回のDR監査などに合わせ、自動テスト+レポート生成を設定しておけば、手動運用を最小化できます。
(3) HPE GreenLakeとの統合監視
Zertoは今後、HPE GreenLake Data Services Cloud Consoleとの統合が進んでおり、複数拠点のZVMをクラウド側で一元管理する構成が可能です。
この構成を提案すれば、「オンプレDR+クラウド統合管理」という価値を訴求できます。
6. ZVM構成例(2サイトモデル)
[サイトA:本番環境]
- vCenter(ZVM-A導入)
- ESXiホスト群(VRA各ホストに導入)
- HPE Alletra 6000(本番データ)
[サイトB:DR環境]
- vCenter(ZVM-B導入)
- ESXiホスト群(VRA導入)
- HPE MSA 2062(Journal保存)
ZVM-AとZVM-Bが双方向通信し、
VPG単位でのレプリケーション状態・RPOをZVM上で統合表示します。
これにより、DRサイトを含めた全体可視化とフェイルオーバーテスト管理が可能となります。
7. まとめ:ZVMを理解すればZerto提案の説得力が変わる
ZVMは単なる管理ツールではなく、ZertoのDR運用を支える中核コンポーネントです。
プリセールスとして押さえるべき要点をまとめると次の通りです。
- ZVMはvCenter/SCVMMと統合し、Zerto全体を制御する“頭脳”
- RPOをリアルタイムで監視し、しきい値越えを即検知できる
- フェイルオーバーテストを無停止で実行可能
- DR監査対応のレポートを自動生成できる
- HPE GreenLakeと統合することでマルチサイト監視も実現可能
ZVMを中心にしたデモ・運用提案は、HPEパートナーとしてZertoの強みを訴求する上で最も効果的な手段です。
次回予告
次回(最終回)となる第6回:Veeam・Arcserveとの比較で理解するZertoの強みでは、バックアップ系製品と比較しながら、Zertoの差別化ポイント(RPO/RTO・運用負荷・提案シナリオ)を整理します。
HPEパートナーのプリセールスとして、競合比較時に差をつける説明トークを中心に解説します。
