第3回:HPE Zertoライセンスの型番と販売単位を理解する ― 見積・構成提案に必要な実務知識

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はじめに:SKUを理解してはじめて「Zertoを売れる」

Zertoの概念やライセンス体系を理解していても、実際の見積や構成書に落とし込む段階で
「どの部品番号(SKU)を選べばよいのか?」という壁にぶつかることがあります。

HPE製品体系の中では、Zertoも他のソフトウェア製品と同様に部品番号(Part Number / SKU)で管理されており、
提案・見積時にはこのSKUを正確に選定する必要があります。

本記事では、プリセールス担当者が押さえるべきZerto関連SKUの体系と販売単位を整理します。

1. HPE版Zerto製品名とSKUの命名ルール

HPEではZertoを「HPE Zerto Data Protection」という名称で販売しています。
SKUは通常、P〜またはR〜で始まる部品番号として登録されています。

例(※一部例示、実際の番号はカタログ参照):

製品名SKU例内容
HPE Zerto Data Protection 1VM 1-Year LicenseP12345-B211VMを1年間保護する基本ライセンス
HPE Zerto Data Protection 10VM 3-Year LicenseP12346-B2110VMを3年間保護
HPE Zerto Data Protection 25VM 5-Year LicenseP12347-B2125VMを5年間保護
HPE Zerto Data Protection Upgrade from 1Y to 3YP12348-B21契約延長(1年→3年)用SKU

これらはVM単位×契約期間の掛け合わせでSKUが分かれています。
たとえば「25VM×3年契約」であれば、上記のようなSKUを1点購入するだけで済みます。
保護対象VM数を後から拡張する場合は、追加ライセンスとして同SKUを組み合わせます。

2. ライセンス販売単位の考え方

Zertoのライセンスは以下のいずれかの単位で提供されます。

販売単位想定利用規模特徴
1VMライセンス小規模(PoC、少数VM)柔軟に増減可能。導入初期に最適
10VMパック中規模(部門システムなど)管理しやすくコスト効率が良い
25VM/100VMパック大規模(全社システム)単価が下がりやすく、長期契約に向く

ZertoはVM単位課金のため、初期段階では小規模ライセンスでPoCを行い、その後スケールアップする方式が一般的です。
HPEパートナーとしては、お客様の運用ステージ(検証/導入/全社展開)に合わせて、
段階的にSKUを組み合わせて提案できるのが強みです。

3. サブスクリプション期間の選定ポイント

Zertoライセンスには、1年・3年・5年などの期間オプションがあります。
期間ごとにSKUが異なり、単価にも差が出ます。

期間特徴提案時の使い分け
1年初期導入・PoC向け。短期契約で柔軟性重視DR構成の検証提案時
3年標準的な期間。コストと保守バランス良好通常の企業案件に最適
5年長期安定運用を想定。単価が最も安い公共・金融・基幹業務向け
注意

異なる契約期間を混在させると更新時期がずれてしまい、契約更新やサポート期間の管理が煩雑になります。
同一案件では期間を揃えるのがベストプラクティスです。

4. 実際の構成書での記載例(提案テンプレート)

Zertoライセンスは、構成書や提案書に明記する際に、以下のように整理すると分かりやすくなります。

カテゴリ製品名SKU数量備考
ソフトウェアHPE Zerto Data Protection 25VM 3-Year LicenseP12346-B211保護対象:VM 25台分
ソフトウェアHPE Zerto Data Protection 10VM 3-Year LicenseP12345-B211追加VM保護分
サポートHPE Support & Subscription (SnS) Included契約期間内に保守込

このように、SKUと数量を明記し、対象VM数を備考に記載することで、
営業部門・技術部門・見積担当間で齟齬が生じにくくなります。

特に、複数拠点(本番/DRサイト)構成の場合は、
「どちら側で何VM保護するか」を表記することが重要です。

5. HPE GreenLake契約との関係

HPE Zertoライセンスは、GreenLake契約下でも提供可能です。
この場合、SKU体系は「オンプレ販売モデル」とは若干異なり、
GreenLakeの使用量ベース(Consumption-based)課金としてまとめられることがあります。

モデル提供形態特徴
オンプレ販売SKU単位で見積・購入固定費型(前払い)
GreenLake契約使用VM数ベースで課金変動費型(従量制)

プリセールス視点では、**「お客様がGreenLake契約を利用しているか」**を確認することで、
適用するライセンスSKUや契約方式を選定できます。

たとえば、AlletraやProLiantをGreenLake経由で導入している企業では、
Zertoも同一契約に統合できるケースが増えています。

6. SKU選定時によくある質問(FAQ)

質問回答
Q. 保護対象VMが増えた場合、追加購入できますか?A. 可能です。同一SKUを追加購入すれば即拡張できます。
Q. 契約期間中にVM数を減らした場合、返金はありますか?A. ありません。購入ライセンス数が上限となります。
Q. 異なる期間のSKUを混在できますか?A. 技術的には可能ですが、契約管理が煩雑になるため推奨されません。
Q. ライセンスを別拠点に移行できますか?A. 可能です。同一組織内であれば再割当が認められます。

このあたりは営業・プリセールス間での問い合わせが多い部分です。
あらかじめFAQ化しておくと、社内教育資料としても活用できます。

7. まとめ:SKUを正しく選べば提案の信頼性が上がる

HPE Zertoは、シンプルなVM単位課金ながらも、SKUの組み合わせ次第で提案の柔軟性が大きく変わります。
特に、SKU選定の誤りは見積差異や契約トラブルの原因になるため、
プリセールス段階で明確に整理しておくことが重要です。

ポイントをまとめると:

  1. SKUは「VM数 × 契約期間」で構成される
  2. 契約期間は1年/3年/5年の中から統一して選定
  3. GreenLake契約の場合は従量課金モデルを確認
  4. 双方向レプリケーション時はライセンス数が倍になる

これらを押さえておけば、Zertoライセンスを含む見積書をHPE標準フォーマットで正確に作成できます。

次回予告

次回は、「第4回:Zerto構成設計とライセンス設計の考え方」として、ZVM(Zerto Virtual Manager)やVRA(Virtual Replication Appliance)構成との関係、保護対象VM数とライセンス消費の実際を図解で解説します。