第5回:Zerto管理コンソール(ZVM)と運用ポイント ― RPO監視とフェイルオーバーテストを中心に

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はじめに:ZVMが“Zertoの頭脳”である理由

Zertoの中心的コンポーネントが、Zerto Virtual Manager(ZVM)です。
ZVMはvCenterやSCVMMと統合し、レプリケーションのポリシー管理・監視・テスト・復旧操作など、Zerto全体の制御を担う「頭脳」にあたります。

プリセールス担当者にとって、ZVMの機能を正しく理解することは、お客様にZertoの“運用しやすさ”を伝える上で非常に重要です。
本記事では、ZVMのUI構成、RPO監視、フェイルオーバーテスト、および運用設計のポイントをわかりやすく整理します。

1. ZVM(Zerto Virtual Manager)の概要

ZVMは、仮想化管理基盤(VMware vCenterまたはMicrosoft SCVMM)にインストールされ、その環境内のZerto Virtual Replication(ZVR)を統括的に管理します。

ZVMの主な役割は以下の通りです。

機能カテゴリ主な役割
ポリシー管理保護グループ(VPG)の作成、レプリケーション設定
監視・分析RPO/RTO状況、転送速度、障害状況を可視化
フェイルオーバー制御DR切替(Failover / Test / Move)操作
アラート・通知SLA違反・レプリケーション停止・容量不足の警告
レポート生成DRテストやフェイルオーバー履歴の出力

ZVMの画面はブラウザベースで提供され、インフラ管理者が直感的に操作できるようデザインされています。
HPEのプリセールスデモでも、ZVMのUIを見せると「想像以上にわかりやすい」と評価されるポイントです。

2. 仮想保護グループ(VPG:Virtual Protection Group)の考え方

Zerto運用の基本単位は「VPG(Virtual Protection Group)」です。
これは、業務単位で複数のVMをグルーピングし、一貫性のある復旧ポイントで保護する仕組みです。

たとえば以下のような構成が考えられます:

業務名保護対象VMVPG名例
基幹システムDBサーバ・アプリサーバ・WebサーバVPG_CORE_SYS
ファイルサーバFileshare01, Fileshare02VPG_FILE
Exchange環境Mail01, Mail02VPG_MAIL

このVPG単位で、RPOポリシーやJournal保持期間を設定できるため、「重要度の高いシステムは5秒RPO」「一般業務は60秒RPO」など柔軟な制御が可能です。

3. RPO(復旧時点目標)監視とアラート設定

ZVMのダッシュボードでは、RPO値(Recovery Point Objective)をリアルタイムで監視できます。
各VPGごとに現在のRPOが表示され、しきい値を超えると警告アラートを発報します。

例:

  • 正常(緑):RPO < 10秒
  • 警告(黄):RPO 10〜30秒
  • 異常(赤):RPO > 30秒

これにより、SLA違反を事前に検知することができ、DRサイトへの通信遅延やストレージ負荷が顕在化する前に対処できます。

また、ZVMはメール通知機能を標準搭載しており、運用チームやNOC(Network Operation Center)に自動的に異常通知を送信する設定も可能です。

HPE環境でのベストプラクティス

RPOしきい値は5〜15秒で設定し、アラートをMicrosoft TeamsやServiceNowなどの運用チケット連携に組み込むと効果的です。

4. フェイルオーバーとフェイルオーバーテストの違い

Zertoの大きな強みが、無停止でのフェイルオーバーテスト機能です。
バックアップでは難しい「実際にDR切替を試す」操作を、Zertoでは本番影響なしで実施できます。

操作名概要用途
Failover実際にDRサイトへ切替(本番稼働)災害発生時の実運用
Failover Test本番を停止せずにDR切替テスト定期テスト・監査対応
Move意図的なシステム移行(メンテナンス時)DRサイト→本番サイトの戻し運用

ZVMのUI上で数クリックするだけでテスト実施でき、テスト実行後は自動的にクリーンアップ処理を行うため、残データも残りません。
このテスト履歴はレポート出力でき、BCP監査資料としても活用可能です。

例:Zerto Test Report

実施日時:2025/10/30
対象VPG:VPG_CORE_SYS
結果:正常終了(RPO最大値6秒)
所要時間:4分32秒

5. 運用設計時のポイント(プリセールス視点)

Zertoをお客様へ提案する際、ZVMを中心とした運用設計を説明できると信頼度が格段に上がります。
特に以下の3点は押さえておきましょう。

(1) 運用負荷の軽減

Zertoはエージェントレス構成であり、各VMに専用ソフトを導入する必要がないため、運用管理がシンプルです。
管理対象の増減もZVM上でGUI操作のみで完結します。

(2) DRテストの自動化

ZVMはスケジュールベースでのテスト実行も可能です。
年1回のDR監査などに合わせ、自動テスト+レポート生成を設定しておけば、手動運用を最小化できます。

(3) HPE GreenLakeとの統合監視

Zertoは今後、HPE GreenLake Data Services Cloud Consoleとの統合が進んでおり、複数拠点のZVMをクラウド側で一元管理する構成が可能です。
この構成を提案すれば、「オンプレDR+クラウド統合管理」という価値を訴求できます。

6. ZVM構成例(2サイトモデル)

[サイトA:本番環境]
- vCenter(ZVM-A導入)
- ESXiホスト群(VRA各ホストに導入)
- HPE Alletra 6000(本番データ)

[サイトB:DR環境]
- vCenter(ZVM-B導入)
- ESXiホスト群(VRA導入)
- HPE MSA 2062(Journal保存)

ZVM-AとZVM-Bが双方向通信し、
VPG単位でのレプリケーション状態・RPOをZVM上で統合表示します。
これにより、DRサイトを含めた全体可視化とフェイルオーバーテスト管理が可能となります。

7. まとめ:ZVMを理解すればZerto提案の説得力が変わる

ZVMは単なる管理ツールではなく、ZertoのDR運用を支える中核コンポーネントです。
プリセールスとして押さえるべき要点をまとめると次の通りです。

  1. ZVMはvCenter/SCVMMと統合し、Zerto全体を制御する“頭脳”
  2. RPOをリアルタイムで監視し、しきい値越えを即検知できる
  3. フェイルオーバーテストを無停止で実行可能
  4. DR監査対応のレポートを自動生成できる
  5. HPE GreenLakeと統合することでマルチサイト監視も実現可能

ZVMを中心にしたデモ・運用提案は、HPEパートナーとしてZertoの強みを訴求する上で最も効果的な手段です。

次回予告

次回(最終回)となる第6回:Veeam・Arcserveとの比較で理解するZertoの強みでは、バックアップ系製品と比較しながら、Zertoの差別化ポイント(RPO/RTO・運用負荷・提案シナリオ)を整理します。
HPEパートナーのプリセールスとして、競合比較時に差をつける説明トークを中心に解説します。