第6回:Veeam・Arcserveとの比較で理解するZertoの強み ― 秒単位のRPOと継続的データ保護で差をつける

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はじめに:Zertoを「バックアップ製品」と誤解されないために

HPE Zertoを提案する際、よくある誤解が「VeeamやArcserveと同じバックアップソフト」という認識です。
確かに、これらの製品はいずれもデータ保護を目的としていますが、設計思想と目的が根本的に異なります。

Zertoはバックアップではなく、継続的データ保護(CDP:Continuous Data Protection)に基づく“リアルタイム災害対策”のためのソリューションです。
本記事では、Veeam・Arcserveとの比較を通して、Zertoがどのようなシナリオで真価を発揮するのかを整理します。

1. アーキテクチャの違いを理解する

まずは各製品の仕組みを俯瞰してみましょう。

項目ZertoVeeam Backup & ReplicationArcserve UDP
保護方式継続的データ保護(CDP)定期スナップショット+レプリケーションスナップショット+重複排除バックアップ
RPO(復旧時点目標)数秒〜数分数時間〜1日数時間〜1日
RTO(復旧時間目標)数分以内数十分〜数時間数十分〜数時間
主な用途災害対策(DR)・BCPバックアップ・リストアバックアップ・リストア
保護単位仮想マシン単位VMまたはジョブ単位ジョブ単位
エージェント不要(エージェントレス)基本不要(アプリ連携時は使用)基本エージェントベース
テスト機能無停止でDRテスト可能テストリストアテストリストア

Zertoの強みは、何よりも「継続的」であること。
バックアップが“過去のスナップショットを保存する”のに対し、
Zertoは“今この瞬間も保護を続けている”という点が本質的に異なります。

2. バックアップではなく“継続的データ保護”という思想

バックアップソフトの多くは、夜間や定期的にスナップショットを取得する方式を採用しています。
この方式では、バックアップの間隔(例:1時間や1日)にデータロスのリスクが存在します。

一方、Zertoは仮想マシンのI/Oをリアルタイムで監視し、数秒単位でジャーナルに書き込みながら別サイトへ転送します。
そのため、障害が発生しても「5秒前の状態に戻す」といった復旧が可能です。

たとえば:

金融機関やECサイトなど、トランザクションが秒単位で発生する業務では、バックアップでは救えない“直前の取引データ”を守れるのがZertoの強みです。

3. 運用負荷の違い ― ZertoはDRテストも自動化

バックアップ系製品は、ジョブ設計・スケジュール設定・バックアップウィンドウ管理など、運用面での手間が多く発生します。
また、DRテストを行う場合は本番停止や別環境構築を伴うことも珍しくありません。

Zertoでは、GUI上で「Failover Test」ボタンを押すだけでDRテストを即実行可能です。
しかも、本番稼働中のシステムに影響を与えず、テスト後のクリーンアップも自動化されています。

比較項目ZertoVeeam / Arcserve
DRテスト実行オンライン実行可能(無停止)本番停止または別環境必要
テスト結果レポート自動生成(PDF出力可)手動取得・一部機能制限あり
運用自動化スケジュール・通知・レポート対応一部スクリプト・タスク連携

プリセールス視点では、この「DRテストを止めずにできる」という点を訴求することで、運用効率化・監査対応の両面でZertoの優位性を伝えられます。

4. 提案時のシナリオ別トーク例

実際の提案現場では、「ZertoとVeeamどちらを導入すべきか」という質問をよく受けます。
その際に使えるトーク例を以下に整理します。

🏢 シナリオ①:バックアップ中心のお客様

提案トーク:

「VeeamやArcserveは、日次バックアップや長期保存を重視した運用に最適です。
一方、Zertoはバックアップを補完し、“障害発生時に業務を止めない”ためのDR対策を担います。
目的が“データ保護”なのか“業務継続”なのかを明確に分けてご提案できます。」

💻 シナリオ②:ランサムウェア対策を検討中

提案トーク:

「Zertoは変更データを秒単位でジャーナルに保管しているため、
ランサムウェア感染直前の状態にロールバックできます。
これはバックアップよりも“リカバリ速度”が圧倒的に速いのが特徴です。」

☁️ シナリオ③:クラウドDRを検討している企業

提案トーク:

「HPE ZertoはオンプレからHPE GreenLakeやAzure/AWSへのレプリケーションもサポートしており、
クラウドDRの第一歩として導入しやすい構成です。
バックアップ製品よりもクラウド移行の柔軟性が高い点もポイントです。」

5. ライセンスコスト比較の考え方

価格面では、ZertoはVeeamやArcserveよりも一見高価に見える場合があります。
しかし、これは「バックアップ+DRの両機能を1製品で実現している」ためです。
また、ダウンタイムの損失コストを考慮すると、Zertoの導入は長期的にはコスト削減につながるケースが多いです。

比較項目ZertoVeeam / Arcserve
初期費用中程度〜高め中程度
運用負荷低い(GUI集中管理)中〜高(ジョブ管理が必要)
DRテストコスト無料(オンラインテスト可)テスト環境構築費用あり
復旧コスト低い(自動化)高い(手動復旧が多い)

6. HPEポートフォリオ内での位置づけ

HPEとしてのデータ保護ポートフォリオを俯瞰すると、次のような整理が可能です。

カテゴリ製品名主な用途
バックアップHPE StoreOnce / Veeam / Arcserveデータ保管・世代管理
レプリケーションHPE Peer Persistence / 3PAR Remote Copyストレージ層の同期
継続的データ保護(CDP)HPE Zerto Data Protection業務継続・即時復旧(DR)

Zertoはこれらを補完する位置づけにあり、「HPEインフラの上で稼働する“リアルタイムDRエンジン”」として機能します。
したがって、HPEサーバー/ストレージ提案時にZertoを組み合わせることで、ハード+ソフト+DR運用まで一気通貫した提案が可能となります。

7. まとめ:Zertoは「データ保護」ではなく「業務継続」のための製品

VeeamやArcserveが“データの安全”を守る製品であるのに対し、Zertoは“システムの稼働そのもの”を守る製品です。

プリセールス視点での要約は以下の通りです。

  1. RPO数秒・RTO数分というレベルで業務を止めない
  2. DRテストを無停止・自動レポート付きで実施可能
  3. バックアップ製品では補えないリアルタイム性と復旧速度
  4. HPE製品群(Alletra / GreenLake)と統合提案可能

Zertoはバックアップの代替ではなく、「バックアップ+Zerto」=真のデータ保護戦略として提案することが、HPEパートナーのプリセールスに求められる視点です。