iSCSIとNAS(NFS/SMB)の違いとは?6つの要素で解説

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企業のITインフラにおいて、ストレージの選定はシステムのパフォーマンスや拡張性に大きく関わります。

中でもよく比較されるのが「iSCSI」と「NAS(NFSやSMB)」です。

これらはどちらもネットワーク経由でストレージにアクセスする方式ですが、根本的なアプローチが異なります。

この記事では、iSCSIとNASの本質的な違い、メリット・デメリット、そして選定のポイントを解説します。

基本的な定義とアーキテクチャの違い

項目iSCSINAS(NFS / SMB)
方式ブロックレベルアクセスファイルレベルアクセス
アクセス先ストレージ装置をローカルディスクのように認識共有フォルダとしてマウント
プロトコルiSCSI(SCSI over TCP/IP)NFS(Linux/Unix系) / SMB(Windows系)
OSからの見え方ディスクデバイス(/dev/sdXなど)マウントポイント(/mnt/shareなど)
  • iSCSI は「SCSIプロトコル」をTCP/IP上でラップしたもの。サーバーはストレージをローカルディスクのように扱います。
  • NAS は「ファイル共有プロトコル」で、NFSやSMBといった高レイヤのプロトコルでファイルにアクセスします。

アクセス方式の違いとその影響

iSCSI

iSCSIターゲット(ストレージ側)とイニシエーター(ホスト側)を構成し、TCP/IPで接続します。OSからは物理ディスクと区別がつかないため、パーティション作成やファイルシステムの選択もホスト側で行います。

NAS(NFS/SMB)

ストレージ側にファイルシステムが存在し、クライアントはそのファイル構造にアクセスするだけです。UNIX系ならNFS、WindowsならSMB(CIFS)を使ってマウントします。

この違いは運用管理において大きな意味を持ちます。

たとえば、iSCSIではバックアップやレプリケーションはブロック単位になるのに対し、NASではファイル単位でのアクセス制御や同期が可能です。

パフォーマンスと用途の違い

観点iSCSINAS
処理単位ブロックファイル
向いている用途仮想化基盤(VMware, Hyper-V) / DBファイル共有 / ホームディレクトリ
パフォーマンス高速(構成による)ネットワークやプロトコルによって影響
ACL(アクセス制御)OS依存ファイル単位で細かく設定可能
  • iSCSIは、仮想マシンのディスクイメージやデータベースのデータ領域など、高速なブロックアクセスを要求される用途に適しています。
  • NASは、共有ドキュメントやファイルサーバーなど、人が直接ファイルを操作する場面に向いています。

実装・構成の複雑さ

iSCSIは「ブロックデバイス」であるため、LUN(Logical Unit Number)管理、パーティション設定、ファイルシステム作成などが必要です。加えて、マルチパス構成(MPIO)やCHAP認証などのセキュリティ設定も伴います。

一方、NASは「フォルダ単位」での共有であり、導入障壁が低く、WindowsやLinuxの標準機能で容易に実装できます。ACL設定やクォータ(容量制限)などの管理機能も豊富です。

典型的なユースケース

システム構成推奨方式理由
VMwareやKVMなど仮想化基盤iSCSI仮想ディスクへのブロックアクセスが必要
社内のファイルサーバーNAS(SMB)ファイルレベルでの共有とアクセス制御が容易
Linuxでのバックアップ用途NAS(NFS)rsyncなどと親和性が高い
データベース(Oracle, SQL Server)iSCSIランダムアクセスに強い、I/O最適化が可能

ハイブリッド構成の選択肢

最近では「ユニファイドストレージ」と呼ばれる、iSCSIとNASを両方提供できるストレージも一般的です。代表的な製品には以下のようなものがあります:

  • HPE Alletra
  • Dell PowerStore
  • NetApp FAS
  • Synology NAS(中小企業向け)

これらを使うことで、ワークロードごとに最適なプロトコルを選択できます。

iSCSIとNAS(NFS/SMB)の違いとは?6つの要素で解説:まとめ

項目iSCSINAS(NFS/SMB)
特徴ブロック単位の高性能I/Oファイル単位の使いやすさ
例えるならローカルHDDのリモート版共有フォルダの進化版
向いている業務仮想化・DB・ブロックI/Oファイル共有・バックアップ・ユーザーデータ
導入の難易度中~高低~中
柔軟性高いが管理負荷あり管理しやすいが制限もある

iSCSIとNASは、目的が異なる補完的な技術です。

ストレージ選定時には、用途・アクセスの粒度・運用負荷を十分に考慮し、どちらが自社に合っているかを判断することが重要です。