【第10回】ライセンス設計編:物理と仮想、それぞれに必要なライセンス設計とは

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プリセールスの構成提案において、最後に問われるのは「この構成、ライセンスはどうなっていますか?」という一言です。

どれだけ技術的に正しい構成でも、ライセンス設計に根拠がなければ、見積は通らず、顧客の信頼も得られません。

この記事では、Windows ServerRed Hat Enterprise Linux(RHEL)を中心に、物理・仮想両対応のライセンス設計の基本と提案時のポイントを体系的に解説します。

Windows Serverライセンスの基本(2025年時点)

エディションの違いと利用可能なVM数

エディションVM利用主な用途
Standard最大2VM(同一ホスト上)小〜中規模システム
Datacenter無制限(同一ホスト上)仮想化基盤(VM多用)

ライセンス単位

  • 物理CPUではなく「物理コア」単位
  • 1サーバーあたり 最小16コア分(8コア × 2CPU) の購入が必須

使用例

  • 物理で直接OSを入れる(ベアメタル) → Standard(16コア)
  • 2VMまで運用 → Standard(16コア)でOK
  • 3VM以上 → VM数に応じてStandardを複数買う or Datacenterに切り替える

仮想環境におけるWindows Serverライセンス設計

VMが少ない場合(2台まで)

  • Standard ×1(16コア分)でOK

VMが多い場合(3台以上)

  • Standard ×2(16コア ×2)で4VMまで可
  • 5VM以上ならDatacenterの方がコストメリット大

仮想環境での注意点

誤解リスク正しい対応
VMを移動したらライセンスも付いてくる✕違反の可能性VMを移動する全ホストにライセンスを付ける
CPUを増設してもライセンス据え置き✕不足コア数追加=ライセンス追加が必要
Standardを使ってVMを複数台同時に動かす✕違反2VMごとにライセンスを買う or Datacenterに移行

Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のライセンス設計

RHELは、サブスクリプション制で提供されるLinux OSです。物理でも仮想でも共通の考え方で管理されますが、形態によって若干の注意点があります。

ライセンス単位と種類

提供形態ライセンス単位主なプラン
物理(ベアメタル)物理ソケット or コアRHEL Server(1-2ソケットまで)
仮想(ハイパーバイザー上)VM単位RHEL for Virtual Datacenters(無制限VM)
RHEL for Virtual Servers(VM単位)

サブスクリプションの特徴

  • 年間課金制(1年/3年契約が多い)
  • サポートレベル(Standard / Premium)が選べる
  • Red Hat Customer Portal(RHSM)による台帳管理必須
  • 商用サブスクリプションなしではアップデート・YUMが使えない

提案パターン別

構成おすすめサブスクリプション備考
物理1台だけRHEL Server(1ソケット or 2ソケット)ソケット数で課金
VMが複数台RHEL for Virtual Servers × VM数VM単位でカウント
vSphereクラスタ上に多数VMRHEL for Virtual Datacenters物理ホストに紐づけてVM数無制限

WindowsとRHELのライセンス設計:比較とポイント整理

観点Windows ServerRHEL
課金単位物理コアソケット or VM単位
最小要件1サーバー16コアからソケット数ベース(基本1または2)
仮想対応Standard=2VM、Datacenter=無制限VM単位/ホスト単位で無制限も可
契約形態永続 or サブスクリプション年間サブスクリプションのみ
運用管理ライセンスキー(KMS/MAK)RHSMによるサブスク登録必須

プリセールスとして押さえるべき設計のコツ

提案時にヒアリングすべきポイント

  • VMの数は?(将来増えるか?)
  • 既存のライセンスを保有しているか?(再利用可否)
  • クラスタ構成 or 単一構成?
  • OSはWindows?Linux?どちらも?
  • 年間契約可否(サブスク)やサポートレベル希望の有無

資料に書くべき説明例(提案書用)

「Windows Server Datacenterライセンス(24コア)を本物理ホスト1台分に割当てることで、仮想マシン数に制限なくご利用いただける設計となっています。」

「Red Hat Enterprise Linux for Virtual Datacenters をサーバー1台分ご契約いただくことで、仮想基盤上のすべてのRHEL VMを正規サポート付きで運用可能です。」

まとめ:ライセンス設計は“システム設計の一部”

ライセンスは、単なるコスト項目ではありません。
「構成の正当性」「拡張性」「管理性」を裏付ける、設計そのものです。

プリセールスとして、以下をしっかり説明できることが重要です:

  • なぜこのライセンス形態を選んだのか?
  • 今後の増設時にどうなるか?
  • サポートや法的観点で問題がないか?

提案構成に「ライセンスの根拠」が添えられていれば、信頼性・安心感・専門性を示す大きな武器になります。

次回は「ラック設計編」です。

物理レイアウトとラック設計について解説していきます。