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プリセールスが構成を提案する際、多くの技術者がスペックやソフトウェア構成には強くても、「物理実装はどうするのか?」という話になると不安そうな顔をする――これは現場でよくある光景です。
しかし、サーバーやストレージは“設置されて初めて機能する”もの。提案がそのまま現場に設置されることを考えると、物理レイアウトとラック設計の視点は極めて実務的です。
本記事では、プリセールスが押さえるべき物理構成設計の基本と、ラック/電源/冷却設計の要点を解説します。
なぜ物理レイアウト設計が重要なのか?
- 見積はOKでも「ラックに入らなかった」「電源が足りなかった」では意味がない
- ファシリティ部門や施工業者との連携が必要なことも
- ハードと同じくらい、実装性と保守性も提案品質の一部
ラック設計の基本要素
ラックの主なスペック
項目 | 説明 |
---|---|
U数 | 1U = 1.75インチ(約4.45cm)。通常42U〜47U |
奥行き | 1000mm前後が主流。サーバー奥行きに要注意 |
幅 | 基本は600mmまたは800mm |
許容重量 | ラック全体で800kg〜1500kgなど。ストレージ複数台に注意 |
扉仕様 | 前後メッシュ扉 or 鍵付き。冷却・セキュリティ両面で確認 |
ラック選定時のポイント
- 機器の合計U数+20%程度の余裕を持つ
- 奥行きは機器仕様+ケーブル引き回し分を考慮
- 上下分散配置+保守性を意識する(電源・LAN抜き差しが容易な高さに)
サーバー・機器配置の考え方
① 機器の寸法とU数の把握
製品 | 通常U数 | 備考 |
---|---|---|
1ソケットサーバー | 1U | DL360など |
2ソケットサーバー | 1U or 2U | DL380(2U)など |
ストレージ | 2U〜4U | 重量・HDD本数に注意 |
UPS | 2U〜4U | ラック下部に配置推奨 |
ネットワーク機器 | 1U〜2U | 上部設置が主流 |
配置の原則(実務的ポイント)
- 重量物は下段、発熱する機器は上段を避ける
- ネットワーク機器は上段、UPSは最下段
- ラックマウントレールと実U数のズレに注意
- 前面から80cm・背面から120cm程度の作業スペース確保
電源設計:PDU・電源容量・冗長性
電源容量の計算式(簡易版)
機器の消費電力(W) × 台数 ÷ 電源電圧(100V or 200V) ≒ 必要電流(A)
PDU設計のポイント
項目 | 内容 |
---|---|
入力形状 | C13/C14 or C19/C20が主流(機器と合わせる) |
相数 | 単相100V/200V or 三相200V |
冗長構成 | デュアルPDU+サーバー側の冗長電源対応が理想 |
配線整理 | 配線トレー or ケーブルマネジメントバー使用を前提にする |
冷却設計:ラック内温度とエアフロー管理
- ラック前面→背面にエアフローを確保(密閉型は要注意)
- 吸排気が混ざらないように、ホットアイル/コールドアイル配置を意識
- 床下空調 or ラック冷却ユニットの有無も確認
- 機器側のTDP(熱設計電力)を確認して、発熱の偏りに注意
プリセールスとして意識すべき提案視点
提案書に入れるべき項目
- 使用U数と空きU数(余裕)
- 推定消費電力とPDU要件
- ラック重量(+床荷重)への配慮
- 実装順とメンテナンス性(前後扉・ケーブル抜き差し)
よくあるトラブルと予防策
ミス | 発生例 | 防止策 |
---|---|---|
U数不足 | ネットワーク機器の分を忘れた | 使用U数+20%余裕を確保 |
奥行き不足 | 1000mmラックに1200mmサーバーを提案 | 機器奥行きをカタログ確認 |
重量超過 | ストレージ大量搭載でラックがしなる | 床荷重・重量制限の確認 |
冷却不足 | 密閉ラック or 背面配線干渉 | エアフローと吸気口を確認 |
まとめ:ラック設計は“設置できる構成”をつくるための基本
ラック設計は、「構成の最後のひと押し」ではなく、提案の段階から見据えるべき“構成の実現性”そのものです。
サーバーが届いたのに、ラックに収まらない。
配線が足りなくて、機器が起動できない。
そうしたトラブルを防ぐのは、プリセールスの一言「これ、入りますか?」です。