【第3回】RAIDコントローラー編:冗長性と性能を支える“影の主役”を理解する

前回:【第2回】メモリ編:容量だけじゃない!チャネル構成と選定の基本

「RAIDは“1か5でなんとなく”」──そんな風に考えていた頃が私にもありました。

しかし、プリセールスとして実務に携わっていくと、RAID構成がシステムの安定性や復旧性、さらには提案全体の信頼性に深く関わっていることに気づかされます。

RAIDは、サーバーの構成要素としてはあまり目立たない存在ですが、適切なレベル選定やRAIDコントローラーの仕様理解が、後々のトラブル回避に直結します。

本記事では、RAIDコントローラーの基礎から選定のポイントまで、プリセールス視点で“実務に使える”知識を整理していきます。

RAIDとは何か?:冗長性と性能の両立を実現する技術

RAID(Redundant Array of Independent Disks)は、複数の物理ディスクをまとめて1つの論理ボリュームとして扱う技術です。主に以下の2つの目的で用いられます。

  • 冗長性(Redundancy):ディスク障害に備えたバックアップの仕組み
  • 性能向上(Performance):ディスクアクセスを並列化することでI/O速度を向上

RAIDはストレージの“保険”であると同時に、提案構成の信頼性を左右する重要な要素です。

よく使われるRAIDレベルとその特徴・用途

RAIDにはいくつかのレベルがあり、それぞれ冗長性と性能、コストのバランスが異なります。

プリセールスとしては「なぜそのRAIDを選ぶのか」を説明できるようになっておく必要があります。

RAID冗長性性能最小ディスク数主な用途
RAID 0×◎(ストライピング)2高速だが冗長性なし。一時処理など限定用途
RAID 1◯(ミラーリング)2OS領域、重要データ
RAID 53汎用業務データ、コスト重視
RAID 64安全性重視のファイルサーバー
RAID 104仮想化基盤やDB向けの高信頼・高性能構成

RAID 5とRAID 10の選定に迷ったときは、「データの書き込み頻度」と「復旧速度」がポイントになります。

また、RAID 50、RAID 60といった拡張構成は、大規模環境やストレージアプライアンスで使われることがありますが、通常のサーバー案件ではそこまで踏み込むケースは多くありません。

RAIDコントローラーとは何か?:構成の安定性を司る“制御装置”

RAIDコントローラーは、RAID構成を実現・制御するための専用チップまたは拡張カードです。

大きく分けて以下の2種類があります

ソフトウェアRAID(OSが制御)

コストは安いがCPU負荷が高く、性能や信頼性が限定的。低価格帯NASやLinux環境で利用されることが多い

ハードウェアRAID(専用コントローラ制御)

エンタープライズサーバーで一般的。バッテリー搭載のキャッシュメモリでI/Oを高速化でき、障害時も復旧がしやすい

各社のRAIDコントローラー例

メーカー主なRAIDコントローラー例
HPESmart Array P408i-a / E208i-p / MR408i-p
DellPERC H755 / H345 / H745p
LenovoRAID 530 / 940-8i

提案時は、キャッシュ容量(例:2GB / 4GB) や、バッテリーバックアップ(BBU / FBWC)の有無が重要になります。

キャッシュがあることで、書き込み速度が大幅に改善されるほか、停電時のデータ保護にもつながります。

提案・見積もり時に押さえておきたいポイント

RAID構成は、単なる“仕様項目”ではなく、以下のような設計観点で語れると提案の質が上がります。

1. データの重要性と復旧時間
  • 重要データならRAID 1や10を選定
  • 冗長性不要な一時領域ならRAID 0も可(ただしリスクは明示)
2. 使用するディスク種別との相性
  • SSDでRAID 5を組むと性能を活かしきれない場合がある
  • 書き込み頻度が高いならRIよりMU/WI SSDを組み合わせる
3. ホットスペアの提案
  • RAID 5/6/10などで「ホットスペア1本追加」が提案できると信頼度が増す
  • ただし予算に応じて説明を整理
4. RAID再構築時間の説明
  • 「RAID 5で1本障害→リビルドに10時間かかる」など、現実的な説明を加えると説得力がある
5. 管理ソフトとの連携
  • HPEならiLO経由でRAIDの状態確認が可能
  • DellではOpenManageなどで障害通知を受けられる

よくあるミスとNG構成例

  • RAID 5を2本のディスクで構成しようとする(RAID5は最低3本必要)
  • キャッシュなしRAIDカードで高I/O要求案件を提案
  • ディスク故障時のリビルドリスクを説明せず、後から信頼を損なう
  • SSD混在構成で書き込み性能が極端に落ちる

プリセールスがRAIDを「なんとなく」で提案すると、納品後に深刻なトラブルにつながる恐れもあります。

まとめ:RAIDは“構成信頼性”の要

RAIDは地味ながら、システム全体の安定性を支える重要な要素です。

プリセールスとしては、RAID構成そのものだけでなく、

  • 「なぜこのレベルか?」
  • 「どう冗長化しているのか?」
  • 「障害時にどう復旧するのか?」

といった視点を持ち、構成提案に落とし込めるかが問われます。

単なるRAIDレベルの説明にとどまらず、“信頼を数値で示す構成設計”を意識して提案できるようになりましょう。

次回は「ストレージ編」です。

HDD・SSD・SAS・NVMeといったメディアの種類ごとの特徴や、用途別の選定ポイントについて解説していきます。

次回:【第4回】ストレージ編:SAS?SATA?NVMe?用途別に考えるディスク選定の基本