【第4回】ストレージ編:SAS?SATA?NVMe?用途別に考えるディスク選定の基本

前回:【第3回】RAIDコントローラー編:冗長性と性能を支える“影の主役”を理解する

サーバー構成を考える上で、CPUやメモリに目が行きがちですが、実は「体感速度」や「安定稼働」の観点で非常に重要なのがストレージです。

「とりあえずSSDにすれば速くなる」と思っていた時期もありましたが、実際にはSAS、SATA、NVMeといった接続方式の違いや、耐久性を意識したディスク選定が求められます。

本記事では、サーバーにおけるストレージ選定の基本から、プリセールス視点での“構成の根拠の持たせ方”を解説します。

ストレージの基本分類:3つの接続方式とその違い

サーバー用ストレージは大きく以下の3つに分類されます。

インターフェース特徴用途備考
SATA安価で広く流通。性能は控えめバックアップ、アーカイブ、一部OS領域最大転送速度 6Gbps
SAS高信頼・高性能。エンタープライズ向け標準多くのサーバーで採用、RAID構成に最適最大転送速度 12Gbps(24Gbpsも登場)
NVMe(PCIe)圧倒的な高速性。直結型DB、仮想化基盤、AI/映像用途PCIe Gen4/Gen5対応に注意

ポイント:NVMeはRAIDカードを介さずCPU直結となることが多く、構成方法やRAID非対応要件も事前に確認が必要です。

ストレージの性能指標を正しく理解する

提案時には「容量」だけでなく「性能」も要件に含まれることが多くあります。

主な性能指標:

指標意味実務での読み方
IOPS(Input/Output Per Second)毎秒の入出力処理数小さなファイルを高速に扱う性能
スループット(MB/s)連続データの転送速度映像/バックアップなど大容量転送向け
レイテンシ応答までの時間(ms)小さいほどよい。NVMeは圧倒的に低い

用途ごとに重要視すべき指標は異なります。
例:ファイルサーバーではIOPS重視、バックアップ用途ではスループット重視、DBではIOPS+レイテンシ両面が問われるケースが多いです。

書き込み耐久性の違い:RI・MU・WIって何?

エンタープライズ向けSSDでは、用途に応じて「書き込み耐久性」が分類されています。

種類説明主な用途書き込み量の目安
RI(Read Intensive)読み取り中心。書き込み少なめOS領域、読み出し多いワークロード約1 DWPD未満
MU(Mixed Use)読み書きバランス型仮想化、業務システム約3 DWPD程度
WI(Write Intensive)書き込み多めでも耐久性高データベース、ログ解析、VDI約10 DWPD以上

DWPD(Drive Writes Per Day)とは「1日にディスク全体を書き換えられる回数」。

例えば2 DWPDのSSDは、1日で容量2倍の書き込みに耐えられる設計という意味です。

提案時には、用途に合わないグレードのSSDを選ばないよう注意が必要です。

RIを過剰に使うとコスト増、WIを過小評価すると故障リスクに直結します。

RAIDとの相性・構成設計の観点

RAIDとの組み合わせで注意すべき点もあります:

  • RAID 5 × SSD:書き込み性能が落ちるため、用途次第ではRAID 10の方が適切
  • 異なる耐久性(RI+WI)を混在させない:RAIDの性能・寿命がボトルネックに
  • NVMeの場合はRAID非対応:ソフトウェアRAIDやOS側での冗長化を検討

RAIDコントローラーがNVMeをサポートしているかどうかも、提案時に確認すべき技術要件です。

提案・見積もり時のチェックリスト(プリセールス的観点)

以下の観点を持っておくと、提案の質が上がります:

STEP
ストレージ構成の用途を明確にする
  • OS/データ領域/バックアップなどに分けて提案
  • それぞれで必要な冗長性や性能要件を洗い出す
STEP
容量だけでなくIOPSやレイテンシもヒアリング
  • 例:「VMを10台以上動かす」「日次バッチがある」など運用情報がヒントになる
STEP
初期容量と将来拡張の計画
  • 空きベイの確保や、RAID拡張可能性も伝えておく
STEP
型番の注意点
  • 同じ容量・インターフェースでもRI/MU/WIが異なる
  • HPEの例:RI(VK000960GWCSS)、MU(VK003840GWCMS)など
STEP
NVMe接続時の発熱やスロット位置にも注意
  • エアフローやスロット数制限に引っかかることも

よくあるミスとそのリスク

  • SATA SSDでRAID 5構成 → 思ったより遅い
  • 用途に対して耐久性が不足 → 数ヶ月で寿命到来
  • NVMeでRAID構成を組もうとして不可 → 設計やり直し
  • 容量優先で最安モデルを選定 → 安定稼働に不安

プリセールスが「単に容量で選んだだけ」の構成では、後からの信頼を損なうことになりかねません。

まとめ:ストレージ選定は“運用視点”との対話がカギ

ストレージは、数値やスペックだけでは語れない、実運用と密接につながるパーツです。

プリセールスとしては、「容量」+「性能」+「耐久性」+「拡張性」のバランスを見極めながら、用途に最適な構成を提案できることが重要です。

「なぜその種類なのか?」「なぜRIではなくMUなのか?」と聞かれたとき、明確に答えられる構成設計が求められます。

次回は「ネットワーク編」です。

NICの構成方法や帯域設計、冗長構成の考え方について、現場で役立つ知識を解説していきます。