【第8回】管理ソフト編:iLO/iDRACで提案の“説得力”を高める運用設計とは

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プリセールスとしてサーバーを提案する際、「性能」「容量」「可用性」は当然押さえるべき要素ですが、見落とされがちなのが管理性です。

特に、サーバー運用の効率や障害対応の迅速化を左右するのが、BMC(Baseboard Management Controller)ベースのリモート管理機能。代表的なのが、HPEの iLO(Integrated Lights-Out) や、Dellの iDRAC(Integrated Dell Remote Access Controller) です。

今回は、管理機能の基本から、プリセールスとして押さえるべき“構成理由・比較ポイント”を整理します。

BMCと管理ソフトの基本:サーバーの“裏口”管理を可能にする仕組み

BMCとは?

サーバーに内蔵された専用の管理チップ。OSが起動していなくても、電源ON/OFF、ハードウェア状態の確認、リモート操作が可能。

管理ソフトの役割

BMCをGUI経由で操作可能にするツール群。代表的なもの:

ベンダー管理機能名管理ソフト名
HPEiLO 6HPE iLO Web GUI, InfoSight, System Insight Manager
DelliDRAC 9/10OpenManage Enterprise, iDRAC GUI
LenovoXClarity ControllerLenovo XClarity Administrator
SupermicroIPMI(標準)SuperDoctor など

iLO/iDRACの主要機能と比較ポイント

機能カテゴリiLO(HPE)iDRAC(Dell)備考
電源操作OSに依存せず操作可
センサーログ確認温度・電圧・ファンなど
仮想メディアマウントOSインストールにも使用可
BIOS/ファーム更新GUIから更新可能
HTML5 KVM○(Advanced以上)○(Enterprise以上)Java不要の遠隔画面操作
SNMP/REST API自動化・監視ツール連携
クラウド連携HPE InfoSightDell CloudIQ故障予測、傾向分析など

多くの機能はStandard版でも利用可能ですが、KVM機能や仮想メディアマウントなどは上位ライセンス(Advanced / Enterprise)が必要です。

ライセンスの違いと提案時の注意点

HPE iLOのライセンス体系

種類内容
iLO Standardハードウェア監視、電源操作など基本機能
iLO AdvancedKVM(リモートコンソール)、仮想メディア、Scripting Toolkitsなど
iLO Advanced Premium Security Editionセキュリティ重視の顧客向け(CC EAL2+認証など)

Dell iDRACのライセンス体系

種類内容
iDRAC Basic電源操作、監視など
iDRAC Express基本的なリモート管理(中堅向け)
iDRAC EnterpriseKVM、仮想メディア、アラート管理などフル機能

KVMや仮想メディアを提案に含める場合は、上位ライセンスが必要になるため、価格差と機能のバランスを説明できると◎です。

提案・見積もり時のチェックポイント(プリセールス的視点)

STEP
顧客の運用体制をヒアリング
  • 現地作業前提? それともリモートでの初期セットアップ希望?
  • サーバーが遠隔地・データセンターに設置される場合はiLO/iDRACの上位機能が必須
STEP
仮想メディアマウントの必要性
  • リモートOSインストール・レスキュー操作に使用
  • 「メディアマウントができるか?」と聞かれることも多い
STEP
複数台管理の場合の統合ツール提案
  • HPE:InfoSight、OneView
  • Dell:OpenManage Enterprise
  • サーバーが10台以上あると一元管理が効果的
STEP
セキュリティ要件の確認
  • 証明書の適用、認証強化が求められることも
  • iLO/iDRACのバージョンによってTLSバージョン制限あり

よくあるミスとそのリスク

  • iLO StandardでKVM操作を想定 → 実際にはできず現地作業発生
  • iDRAC Expressで仮想メディアが使えず、遠隔インストール不可
  • BMCの初期設定(IP固定)が未実施 → 運用時に所在不明に
  • セキュリティ制約下でHTTPS接続できず、運用停止状態に

プリセールスが事前に「管理のしかた」まで構成設計できると、納品後の信頼性と顧客満足度が大きく変わります。

まとめ:管理機能は“サイレントな運用設計力”

管理ソフトは、スペック表には大きく載らない項目です。しかし、**実際の運用効率やトラブル対応力を決定づける“縁の下の力持ち”**です。

提案時には、「なぜiLO Advancedが必要か?」「なぜiDRAC Enterpriseでなければならないか?」をコストだけでなく運用効率の観点から説明できるようになることが、プリセールスの価値を高めます。

次回は「保守編」です。

4時間対応、オンサイト、センドバックなど、保守レベルと提案時の説明ポイントについて解説していきます。