【第9回】保守編:4時間対応?翌営業日?提案の信頼性を支える保守設計の基本

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サーバー提案の場で、「構成は完璧、性能もクリア」と思っていたのに、「あのベンダーは保守がダメだね」と一言で否定された──そんな経験はありませんか?

保守レベルの選定は、提案における“信頼性と安心感”の象徴です。スペックや価格以上に、運用中のトラブル時に「どう対応してくれるのか」をお客様は見ています。

今回は、プリセールスが最低限押さえておくべき保守サービスの種類・違い・説明の仕方について解説します。

なぜ保守が提案において重要なのか?

  • 顧客にとって「止まらない仕組み」は構成だけでなくサポート体制も含まれる
  • ハードが壊れたとき、誰が・いつ・どうやって直すかが明確でなければ不安が残る
  • 「納入後に不満が出る」代表例のひとつが保守内容

保守の基本分類:対応時間・対応方法で見る

項目内容説明
対応時間例:24×7、9×5「365日24時間」or「平日9-17時」など
対応スピード例:4時間以内、翌営業日(NBD)障害発生から技術員派遣または部品到着までの目安
対応方法オンサイト/センドバック/デポ交換など故障時の対応手段

代表的な保守タイプ(HPE・Dell・Lenovo等共通)

保守種別内容主な用途
オンサイト保守(4時間対応)技術員が現地へ駆けつけて対応ミッションクリティカルな業務システム
NBD保守(翌営業日)翌営業日にパーツを届ける(または派遣)中堅業務・情シス向け
センドバック保守機器をメーカーへ送付して修理コスト重視。開発・検証用など
デポ交換/先出しセンドバック故障連絡後に先に代替機を出荷即時対応性とコストのバランス型
電話/リモートサポートOSや構成についての問い合わせ対応通常はハード保守とセットで提供されることが多い

対応時間の読み方:よくある誤解に注意

  • 「4時間対応」とは、障害の連絡から4時間以内に“対応開始”するという意味(※復旧完了ではない)
  • 土日含む「24×7」か、平日対応の「9×5」かは契約内容で明確に分かれる
  • 「NBD(Next Business Day)」は平日のみがカウント対象

提案時に必要なヒアリング・判断のポイント

以下のようなヒアリングが効果的

止まったら困る業務か?
  • 重要度が高ければオンサイト4時間対応を検討
  • 停止しても翌営業日対応でよいならNBDでも可
設置場所は?
  • 離島・山間部はオンサイト対象外エリアの可能性あり
  • 対象外でもパーツ配送による“代替手段”を提案できると◎
社内にIT管理者がいるか?
  • センドバック型保守でも自力で交換できるかどうか
  • 保守をアウトソースするか、社内対応できるかの判断基準に
何年間保守をつけるか?
  • サーバーは通常3年・5年保守が主流
  • 予算や更新サイクルに合わせて選定

よくあるミスと提案時の落とし穴

  • 最低構成で保守を選ばず → 納品後に追加対応コスト発生
  • 離島に4時間対応を提案 → 対象外で再見積もり
  • 複数メーカー混在で保守窓口がバラバラ → 顧客混乱
  • NBD保守なのに“即日対応”と誤解させてしまう

保守に関する誤解は、納入後の「不満」に直結しやすい項目です。

構成だけでなく、運用上の“守り”もセットで設計する意識が重要です。

プリセールスとしての提案力を上げる視点

  • 「なぜこの保守なのか?」をコストと可用性のバランスで説明できること
  • お客様の業務影響と照らし合わせて判断軸を示すこと
  • 保守範囲・時間・連絡先の明確化(ドキュメント化)まで意識できるとベスト

たとえば「このサーバーはActive Directoryを担っているので、障害時は即時対応が必要です。

よってオンサイト4時間対応をご提案しています」と伝えられると、単なる見積担当から一歩抜け出した提案になります。

まとめ:保守設計は“安心感”を届ける提案の一部

構成提案=ハードの話と思われがちですが、本質的には「安心して使えるか」を設計すること。

その中でも保守は、“何かあったとき”のシナリオを事前に描いておく設計力が試されます。

プリセールスとして、保守レベルとコスト、業務影響のバランスを取りながら、納得感のある選定理由を伝えられるようになりましょう。

次回は「ライセンス編」です。

物理と仮想、それぞれに必要なライセンス設計について解説していきます。