第6回:バックアップソフトの種類と選定ポイント

ページ内に広告が含まれる場合がございます。

バックアップソリューションの選定は、ITインフラの安全性・運用効率・コストに直結する非常に重要なプロセスです。

世の中には数多くのバックアップソフトが存在し、どれも「安心・高速・簡単」を謳っています

しかし、現場では「どれが自社にとって最適か?」の判断が求められます。

本記事では、代表的なバックアップ製品の特徴を比較しながら、導入時に押さえるべき選定基準を整理します。

バックアップソフトの主なタイプ分類

種別特徴代表製品例
オンプレ向け総合型仮想・物理・クラウドを一元管理Veeam、Arcserve、Acronis
クラウド特化型クラウド/SaaS連携に強いDruva、MSP360、AvePoint
SMB向け簡易型小規模構成向け・コスト重視Windows Server Backup、EaseUS
NASベース型Synology、QNAP等の独自ソフトActive Backup(Synology)など

主要製品の機能比較

製品名仮想環境クラウド連携重複排除自動テスト日本語対応特徴
Veeam◎ VMware/Hyper-V対応◎ Azure/AWS/Wasabiなど対応◎ CBT+重複排除◎ SureBackup中堅〜大企業向け定番。自由度が高い。
Acronis◎ 多様な環境対応◎ OneDrive, Google含む◎ イメージ+ファイル両対応△(標準)GUI重視、個人〜SMBに強い
Arcserve◎ UDPエンジン強力◎ DR拠点連携/クラウドDR◎ グローバル重複排除官公庁や教育機関に強い実績
Nakivo◎ コスト効率抜群△(S3連携中心)◎ 軽量アプライアンス型SMBや中堅市場に人気
Commvault◎ 大規模向け◎ 多クラウド対応◎ 非常に高度大企業向け高機能型(SIer案件向き)

選定時に確認すべきポイント

① 対応環境の範囲

  • 物理サーバだけか、仮想環境(VMware/Hyper-V)にも対応しているか?
  • クラウド(AWS/Azure/Google Cloud)やSaaS(M365/Google Workspace)の保護も必要か?

特にVM単位/VSS対応/SQL/Exchangeのアプリ整合性がカバーされているか確認しましょう。

② リストア方式の柔軟性

  • ファイル単位で復元可能か?
  • VMを即時起動(インスタントリカバリ)できるか?
  • 異なるハードウェア構成へのリストア(ベアメタルリカバリ)は可能か?

RTO短縮に貢献するかどうかが、災害時の「差」になります。

③ バックアップ方式の自由度

  • フル・増分・差分が選べるか?
  • CBT(Changed Block Tracking)対応で増分を効率化できるか?
  • 重複排除や圧縮でストレージ効率が高いか?

長期保存やクラウド転送が必要なら必須です。

④ 運用とレポート機能

  • バックアップ結果を自動レポート化できるか?
  • エラー発生時のアラート通知は柔軟か?
  • スクリプトやAPIでの運用自動化は可能か?

情報システム部門が複数拠点・複数サーバを管理する場合は要チェック。

⑤ ライセンス形態と費用感

ライセンス形態説明向いているケース
サーバー台数課金1台ごとに購入中小規模環境
CPUソケット課金VMware/Hyper-Vに多い仮想化基盤中心の環境
ユーザー数課金Microsoft 365などSaaSバックアップ
サブスクリプション(月/年)定額で都度更新初期費用を抑えたい場合

「仮想環境=台数無制限」といった制限解除オプションがある製品もあります(Veeamなど)。

導入事例別おすすめ構成

中小企業(20名規模/ファイル+VM2台)

  • 製品例:Acronis、Nakivo、Synology Active Backup
  • 特徴:簡単操作+低価格+VM対応あり
  • 価格感:年額 10〜30万円前後

中堅企業(100名規模/仮想+DB+クラウド併用)

  • 製品例:Veeam、Arcserve UDP、Acronis Cyber Protect
  • 特徴:高機能+世代管理+アプリ整合性
  • 価格感:年額 50〜100万円前後(構成次第)

官公庁/大企業(分散拠点・DR・長期保存)

  • 製品例:Arcserve UDP、Commvault
  • 特徴:DRサイト連携、BCP対応、FISC要件準拠
  • 価格感:カスタム見積り(SIer案件含む)

無償評価版を活用しよう

ほとんどの主要ソフトには、30日間〜60日間のフル機能試用版があります。

評価の際は次のポイントに着目してください

  • VM・DB・ファイルの同時バックアップができるか?
  • スケジュール自動化/暗号化/圧縮の設定が使いやすいか?
  • 復元操作が直感的か?
  • レポートやアラート機能がわかりやすいか?

まとめ:バックアップソフトは「導入後の安心感」で選ぶ

単に「有名だから」「価格が安いから」ではなく、

  • 自社のインフラ環境
  • 復旧要件(RTO/RPO)
  • 担当者のスキルレベル
    を冷静に分析し、最適な製品を選ぶことが、堅牢なバックアップ運用の第一歩です。