第7回:仮想環境のバックアップ ― VMware / Hyper-V 編

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現代のサーバーインフラの多くは、物理サーバ上に仮想マシン(VM)を展開する仮想化環境で構築されています。

VMware vSphere や Microsoft Hyper-V などを使った構成が一般的であり、これに対応するバックアップ設計はオンプレ運用の“肝”となります。

しかし、仮想化ならではの構造を理解せずに、単に「スナップショットを取っているから大丈夫」と考えるのは極めて危険です。

本記事では、仮想環境におけるバックアップの基本構造、注意点、設計のポイントを詳しく解説します。

仮想環境のバックアップが難しい理由

課題内容
複数VMの同時稼働一つの物理サーバ上に複数VMが動作し、影響範囲が広い
データ整合性スナップショット取得中もVMは動いており、整合性が崩れる可能性
仮想ディスクの肥大化差分ディスク(デルタファイル)が増大し、ストレージが逼迫する
アプリ依存DBやADなどのアプリケーション整合性が難しい(ファイル単位では不十分)

スナップショット ≠ バックアップである

スナップショットの特徴

  • 一時的な差分記録(デルタ)
  • 元のVMDK/VHDXの実体とは独立していない
  • スナップショットを残したままだと、パフォーマンス劣化・ストレージ肥大を招く

スナップショットはあくまで一時保険。災害復旧や長期保持には向きません

仮想環境に特化したバックアップソフトの構成

主な機能

機能内容
CBT(Changed Block Tracking)変更ブロックのみを検出し、増分バックアップを効率化(VMware/Hyper-V両対応)
VSS(Volume Shadow Copy Service)アプリケーション整合性を確保しながらスナップショットを取得(Windows系VM)
アプリ整合性対応SQL Server、Exchange、Active Directory などに最適化
インスタントVMリカバリバックアップファイルから直接VMを起動し、即時復旧が可能
レプリカ/複製他ホスト上に事前複製しておき、障害時に自動切り替えできるようにする機能

VMware / Hyper-V 環境での設計ポイント

VMware 環境(vSphere)

  • CBT有効化:仮想マシンごとに有効にし、増分バックアップを高速化
  • vCenterをバックアップ対象に含める:障害発生時のホスト管理に必須
  • NFS / iSCSI / FC ストレージ構成とIO負荷のバランスを見る

Hyper-V 環境

  • VSS統合サービスの有効化:VM内部のファイル整合性確保に必須
  • Cluster Shared Volume(CSV)環境への対応:共有ディスクに対応したソフトを選定
  • レプリケーションとの整合:Hyper-Vレプリカとの競合に注意

バックアップ方式例(仮想環境)

項目推奨構成
バックアップ頻度週1回フル+毎日CBTによる増分
保存世代日次×7、週次×4、月次×6など(階層保持)
保管先外部NAS / D2Dアプライアンス / クラウド(S3互換)
リストア方法インスタントVM起動、ファイル単位復元、アプリ単位復元など柔軟性を持たせる

代表的な仮想対応製品

製品名仮想環境対応特徴
Veeam Backup & ReplicationVMware / Hyper-V / Nutanix仮想特化、インスタントリカバリ強力
Acronis Cyber ProtectVMware / Hyper-V / 物理混在GUI中心、SaaSバックアップも対応
Nakivo Backup & ReplicationVMware / Hyper-V / AWS EC2軽量、高コスパ、Linuxベースの仮想アプライアンスあり
Arcserve UDPVMware / Hyper-V大規模DR設計にも強い

テストすべきポイント(仮想環境向け)

  • VM単位のバックアップ → 復元時間(RTO)を計測
  • VSS整合取得後のSQL/ADが正常動作するか
  • インスタントVM起動後、ユーザーが接続できるか
  • 仮想NICの再構成、MACアドレスの競合が発生しないか

まとめ:仮想環境こそ「専用バックアップソフト」が必要

仮想化環境は、柔軟な運用ができる一方で、バックアップの難易度は物理環境よりも高いのが実情です。

  • スナップショットを過信しない
  • CBTやVSSを活用した整合性確保
  • 仮想基盤の運用にあった製品選定と設計
  • リストア時間を意識した構成(RTO/RPO設計)

これらを満たすためには、汎用的なツールではなく、仮想環境に最適化されたバックアップ製品の導入が不可欠です。