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企業インフラのクラウド化が進む中で、バックアップも「オンプレミスで完結するもの」から「クラウドを活用した設計」へと大きく変化しています。
特に、災害対策・長期保存・コスト最適化といった観点から、クラウドバックアップは“必須機能”として位置づけられつつあります。
本記事では、クラウドバックアップの仕組み・導入メリット・代表的なサービス・選定ポイントまでを体系的に解説します。
クラウドバックアップとは?
クラウドバックアップとは、バックアップデータをインターネット経由でクラウドストレージ(S3互換やBlobストレージなど)へ送信・保管する仕組みを指します。
代表的なクラウド保管先
種別 | サービス例 |
---|---|
パブリッククラウド型 | Amazon S3 / Glacier, Azure Blob, Google Cloud Storage |
バックアップ特化型 | Wasabi, Backblaze B2, IDrive |
SaaS/アプリ対応型 | Druva, AvePoint(M365/Google Workspace対応) |
なぜ今、クラウドバックアップなのか?
利点 | 説明 |
---|---|
オフサイト保管 | 災害・火災・盗難などの物理的リスク回避 |
運用の柔軟性 | バックアップ先の分散設計が容易、外部DR環境の構築が簡単 |
コスト最適化 | 保管容量ベースの課金。初期費用不要・スケーラブル |
ランサム対策 | イミュータブル(変更不可)設定で暗号化からの保護が可能 |
自動アーカイブ | 長期保存(7年、10年)を容易に実現可能。監査・法令対応にも有効 |
代表的なクラウドストレージと特徴
サービス | 特徴 | 月額料金目安(1TB) |
---|---|---|
Amazon S3 | 高可用性・API連携が豊富。標準の選択肢 | 約3,000〜4,000円 |
Amazon S3 Glacier | 長期保存向け(読み出しに数時間) | 約1,200円 |
Azure Blob | Microsoft製品との親和性高 | 約3,000円(アクセス頻度に応じて変動) |
Wasabi | 低コスト+高速。中小企業に人気 | 約700円(※固定料金・転送無料) |
Backblaze B2 | 世界的に利用者多く、API連携が容易 | 約600〜800円 |
製品別バックアップ例(クラウド連携)
バックアップ製品 | 対応クラウド | 特徴 |
---|---|---|
Veeam | AWS, Azure, Wasabi, S3, S3互換 | Backup Copy機能で2次保管に活用可能 |
Acronis Cyber Protect | Google Drive, OneDrive, S3等多数 | GUIから直接クラウド設定可能 |
Arcserve UDP | AWS, Azure, private cloud | クラウドDR構成も容易に構築可 |
Druva | Salesforce / M365 / EC2対応 | SaaS連携に強く、完全クラウド型 |
よくある構成パターン
構成1:オンプレ+クラウド階層保管
[本番VM群]
↓ (ローカルバックアップ)
[社内NAS or D2Dアプライアンス]
↓ (Backup Copy)
[Amazon S3 / Wasabi等クラウドストレージ]
- RTO:社内復元
- RPO:クラウド保管世代で補完
- 災害対策やランサム対策に効果的
構成2:クラウドバックアップオンリー(物理環境の最小化)
[クライアントPC・サーバ]
↓
[Acronis / Druvaエージェント]
↓
[クラウドストレージ(Wasabi / Backblaze)]
- 小規模・支店・テレワーク向け
- オンプレ構成不要、すぐに導入可能
クラウドバックアップの注意点
リスク | 対策 |
---|---|
帯域の逼迫 | 回線速度を考慮し、初回は時間を分散/夜間取得など設計 |
運用コスト増 | アクセス頻度に応じたストレージクラスの設計 |
データ漏洩リスク | 転送暗号化(SSL)+ストレージ暗号化(AES256)を必須設定 |
アカウント紛失 | アカウント情報は社内で安全に保管。MFA(多要素認証)も設定推奨 |
イミュータブル(不変バックアップ)の重要性
WasabiやVeeamなど一部の組み合わせでは、「書き換え不可(イミュータブル)設定」が可能です。
これはランサムウェアなどに対し、「バックアップそのものが暗号化・削除される」事態を防ぐ防御壁となります。
例:
- Veeam + Wasabi:オブジェクトロック機能により14〜90日間改ざん不可設定が可能
- S3 Object Lock:Glacier/Vault含むデータに対してWORMポリシー適用
クラウドバックアップ導入のすすめ
導入前のチェックリスト
- 現在のバックアップはオフサイト保管されているか?
- 災害・盗難・火災時に本当に復旧できるか?
- 長期保存データは定期的に移行されているか?
- 社内でクラウドストレージ契約ができる体制はあるか?
まとめ:クラウドは“第2の保険”オンプレと共に最適解を
クラウドバックアップは
- 災害対策
- 長期保存
- ランサムウェア防御
という3大要素において、オンプレ単体では実現困難な信頼性を提供します。
クラウドは「取っておいて安心できる場所」として使うべきです。
オンプレ環境の「第2コピー先」として、今こそ積極的な活用を検討すべきフェーズに来ています。