第8回:クラウドバックアップの仕組みと製品選定

ページ内に広告が含まれる場合がございます。

企業インフラのクラウド化が進む中で、バックアップも「オンプレミスで完結するもの」から「クラウドを活用した設計」へと大きく変化しています。

特に、災害対策・長期保存・コスト最適化といった観点から、クラウドバックアップは“必須機能”として位置づけられつつあります。

本記事では、クラウドバックアップの仕組み・導入メリット・代表的なサービス・選定ポイントまでを体系的に解説します。

クラウドバックアップとは?

クラウドバックアップとは、バックアップデータをインターネット経由でクラウドストレージ(S3互換やBlobストレージなど)へ送信・保管する仕組みを指します。

代表的なクラウド保管先

種別サービス例
パブリッククラウド型Amazon S3 / Glacier, Azure Blob, Google Cloud Storage
バックアップ特化型Wasabi, Backblaze B2, IDrive
SaaS/アプリ対応型Druva, AvePoint(M365/Google Workspace対応)

なぜ今、クラウドバックアップなのか?

利点説明
オフサイト保管災害・火災・盗難などの物理的リスク回避
運用の柔軟性バックアップ先の分散設計が容易、外部DR環境の構築が簡単
コスト最適化保管容量ベースの課金。初期費用不要・スケーラブル
ランサム対策イミュータブル(変更不可)設定で暗号化からの保護が可能
自動アーカイブ長期保存(7年、10年)を容易に実現可能。監査・法令対応にも有効

代表的なクラウドストレージと特徴

サービス特徴月額料金目安(1TB)
Amazon S3高可用性・API連携が豊富。標準の選択肢約3,000〜4,000円
Amazon S3 Glacier長期保存向け(読み出しに数時間)約1,200円
Azure BlobMicrosoft製品との親和性高約3,000円(アクセス頻度に応じて変動)
Wasabi低コスト+高速。中小企業に人気約700円(※固定料金・転送無料)
Backblaze B2世界的に利用者多く、API連携が容易約600〜800円

製品別バックアップ例(クラウド連携)

バックアップ製品対応クラウド特徴
VeeamAWS, Azure, Wasabi, S3, S3互換Backup Copy機能で2次保管に活用可能
Acronis Cyber ProtectGoogle Drive, OneDrive, S3等多数GUIから直接クラウド設定可能
Arcserve UDPAWS, Azure, private cloudクラウドDR構成も容易に構築可
DruvaSalesforce / M365 / EC2対応SaaS連携に強く、完全クラウド型

よくある構成パターン

構成1:オンプレ+クラウド階層保管

[本番VM群]
↓ (ローカルバックアップ)
[社内NAS or D2Dアプライアンス]
↓ (Backup Copy)
[Amazon S3 / Wasabi等クラウドストレージ]
  • RTO:社内復元
  • RPO:クラウド保管世代で補完
  • 災害対策やランサム対策に効果的

構成2:クラウドバックアップオンリー(物理環境の最小化)

[クライアントPC・サーバ]

[Acronis / Druvaエージェント]

[クラウドストレージ(Wasabi / Backblaze)]
  • 小規模・支店・テレワーク向け
  • オンプレ構成不要、すぐに導入可能

クラウドバックアップの注意点

リスク対策
帯域の逼迫回線速度を考慮し、初回は時間を分散/夜間取得など設計
運用コスト増アクセス頻度に応じたストレージクラスの設計
データ漏洩リスク転送暗号化(SSL)+ストレージ暗号化(AES256)を必須設定
アカウント紛失アカウント情報は社内で安全に保管。MFA(多要素認証)も設定推奨

イミュータブル(不変バックアップ)の重要性

WasabiやVeeamなど一部の組み合わせでは、「書き換え不可(イミュータブル)設定」が可能です。

これはランサムウェアなどに対し、「バックアップそのものが暗号化・削除される」事態を防ぐ防御壁となります。

例:
  • Veeam + Wasabi:オブジェクトロック機能により14〜90日間改ざん不可設定が可能
  • S3 Object Lock:Glacier/Vault含むデータに対してWORMポリシー適用

クラウドバックアップ導入のすすめ

導入前のチェックリスト

  • 現在のバックアップはオフサイト保管されているか?
  • 災害・盗難・火災時に本当に復旧できるか?
  • 長期保存データは定期的に移行されているか?
  • 社内でクラウドストレージ契約ができる体制はあるか?

まとめ:クラウドは“第2の保険”オンプレと共に最適解を

クラウドバックアップは

  • 災害対策
  • 長期保存
  • ランサムウェア防御
    という3大要素において、オンプレ単体では実現困難な信頼性を提供します。

クラウドは「取っておいて安心できる場所」として使うべきです。

オンプレ環境の「第2コピー先」として、今こそ積極的な活用を検討すべきフェーズに来ています。