第9回:重複排除とバックアップ容量削減技術

ページ内に広告が含まれる場合がございます。

バックアップが定着してくると、次に直面するのが「保存容量の逼迫」です。

特にフルバックアップや高頻度の世代保持を行っている環境では、バックアップ領域の肥大化とストレージコストの増大が避けられません。

この課題を解決するための代表的な手法が、重複排除(Dedupe)・圧縮・CBT(Changed Block Tracking)などの容量削減技術です。

今回はそれぞれの仕組みと効果、実際の製品での使われ方を詳しく解説します。

重複排除(Dedupe)とは?

概要

「同一のデータブロックを1つにまとめ、実データは1回だけ保存する技術」

仕組み(概念図)

バックアップ回数保存内容
バックアップ1回目保存(フル)
バックアップ2回目重複箇所は除外、差分のみ保存

期待される効果

環境削減率の目安
仮想デスクトップ環境(VDI)80〜95%
ファイルサーバ50〜70%
DBバックアップ30〜50%

重複排除の分類(対象範囲による違い)

種別説明製品例
ソース側Dedupeバックアップ対象機器側で重複排除 → 転送データ量が少ないCommvault, Arcserve UDP
ターゲット側Dedupeストレージ側で排除処理 → 転送は多いが処理が高速HPE StoreOnce, Dell DataDomain
インラインDedupe書き込みと同時に排除処理Veeam, Synology Active Backup
ポストプロセスDedupe書き込み後に別スキャンで排除一部のNAS製品など

クラウド転送においては、ソース側Dedupeが回線負荷軽減に効果的です。

その他の容量削減技術

圧縮(Compression)

  • データ全体を圧縮アルゴリズムで縮小
  • 容量削減効果は 20〜40% 程度が一般的

メリット:処理が軽く、即時効果あり
デメリット:CPU負荷が増加するため旧式サーバでは注意

CBT(Changed Block Tracking)

  • VMware / Hyper-V が提供する「変更されたブロックのみを検出する機能」
  • 増分バックアップの高速化に直結し、不要なデータ転送を防ぐ

メリット:バックアップ時間短縮/ネットワーク帯域の節約
対応VMで有効化が必要。破損時は一時無効となる場合もあり

ストレージ最適化ポリシー(クラウド)

クラウドバックアップでは、保管コストを最適化するために「アクセス頻度に応じたストレージクラス設定」が可能。

例:Amazon S3 の場合

クラス特徴コスト用途例
Standard頻繁アクセス日次バックアップなど
Infrequent Access低頻度月次バックアップ
Glacierアーカイブ用長期保管(7年以上)

容量削減機能付きの代表製品

製品対応技術特徴
Veeam BackupDedupe(インライン)、圧縮、CBT仮想環境+クラウドで高効率
Arcserve UDPソースDedupe、圧縮、レプリケーションDRサイト構築に向く
Acronis Cyber Protect圧縮、クラウド転送最適化GUI中心で操作が簡単
Synology Active Backup重複排除+増分SMBに人気、エージェントレス

実運用での設計ポイント

保存世代の設計

  • 日次×7+週次×4+月次×6+年次×3 など
    長期保存はフルでなく、差分・増分との組み合わせを活用

バックアップストレージの選定

用途推奨構成
高速リストア用SSD搭載D2Dアプライアンス+インラインDedupe
低コスト保管NAS+重複排除ソフト/クラウド(Glacier/Wasabi)
クラウド転送ソースDedupe対応ソフト(帯域削減)+自動暗号化

定期的な「削減効果のモニタリング」

  • 重複排除効果(Dedupe Ratio)が落ちていないか?
  • 圧縮率/増分データ量の推移をチェックし、異常検知に活用
  • 容量逼迫アラートを定期レポート化

まとめ:バックアップは「量の最適化」こそが鍵

取るだけではなく

  • どこまで効率化するか
  • どのくらい長く保存できるか
  • どこまでクラウド活用できるか

という点で、重複排除や圧縮、CBTは非常に強力な武器になります。
容量効率の最適化は、インフラ運用コスト削減の本質的対策とも言えるでしょう。