ページ内に広告が含まれる場合がございます。
ネットワークは、「つながること」が当たり前になっている分、ひとたび通信ができなくなると全体に影響が及びます。
そのため、トラブル発生時に「どこが原因かを素早く切り分ける」スキルがインフラエンジニア・プリセールスにとって必須です。
本記事では、トラブル時に慌てないための基本的な切り分け手順、便利なコマンド、再現性のある情報収集のコツを体系的に解説します。
トラブルの“型”を把握する
まずは、ネットワークトラブルを大別して「どこで発生しているか」を整理しましょう。
層(レイヤ) | 主な症状例 |
---|---|
L1(物理) | ケーブル断線、リンクが点灯しない |
L2(データリンク) | VLAN設定ミス、MACアドレス学習不足 |
L3(ネットワーク) | IPアドレス未設定、ルーティング不備 |
L4(トランスポート) | ポートが閉じている、FWで遮断 |
L7(アプリケーション) | DNS解決失敗、証明書エラー、サービス不具合 |
OSI参照モデルを意識して順に下から確認すると、迷わず対応できます。
基本の切り分けステップ(再現性のある手順)
STEP
物理・接続確認(L1)
- ケーブルの抜き差し、リンクランプ確認
- ポート設定(Auto/Full Duplex/Speed)にミスマッチはないか
STEP
IPレベル確認(L2/L3)
ipconfig
/ifconfig
:IPアドレス取得済みかarp -a
:MACアドレス解決できているか- VLAN設定、ルータ/ゲートウェイ設定確認
STEP
通信確認(L3/L4)
ping
:相手IPに届くかtraceroute
/tracert
:どこで止まっているかtelnet
ornc
:特定ポートに接続できるか
STEP
DNS/アプリ確認(L7)
nslookup
:名前解決できているか- ブラウザでアクセスして証明書やリダイレクトをチェック
ping/tracerouteの使いどころ
コマンド | 用途 |
---|---|
ping [IP] | 到達性の確認 |
ping [FQDN] | 名前解決+到達性 |
traceroute [IP] (Linux) | 途中経路の把握 |
tracert [IP] (Windows) | 上記と同様(Windows用) |
「pingは通るがtelnetは通らない」→ L3はOK、L4で遮断されていると判断
便利なコマンド・ツール集(Linux/Windows共通)
コマンド | 目的 |
---|---|
ip a / ipconfig | IP確認 |
arp -a | MACアドレス確認 |
netstat -an | ポートの状態(LISTEN、ESTABLISHEDなど) |
telnet [IP] [port] | ポート疎通確認 |
nslookup [ドメイン] | DNS確認 |
dig (Linux) | DNS詳細確認 |
tcpdump / Wireshark | パケットキャプチャ |
“あるあるトラブル”の典型例と対処
症状 | 原因 | 解決策 |
---|---|---|
IPは通るのに名前で接続できない | DNS未設定 or 解決失敗 | DNSサーバ設定 or hostsファイル確認 |
pingは通るのにアプリが動かない | FWでポートが閉じている | FWルール確認、telnetで確認 |
VLAN間通信できない | L3スイッチにルーティング未設定 | SVIやルート設定を確認 |
Web表示が異常に遅い | MTUミスマッチ、ループ発生 | MTU調整、STP確認 |
外部には出られるが社内サーバにつながらない | ACLで通信遮断 | ポリシー確認、ログ解析 |
プリセールス視点:トラブル時の“聞き方”で変わる信頼
ヒアリングのNG例
「とりあえず繋がらないらしいです」
良いヒアリングの例
- 「pingは通りますか?」
- 「何時頃から、どの端末で、どの宛先に対して、どんな操作をすると起きますか?」
- 「他の端末でも同様ですか?」
- 「VPN環境ですか?有線ですか?Wi-Fiですか?」
トラブル対応=再現条件の確定 → 切り分け → 対応の順
トラブル記録のテンプレート化(例)
項目 | 記入例 |
---|---|
発生日時 | 2025/06/04 15:20頃 |
利用端末 | PC-002(Windows 11) |
通信先 | intra.example.co.jp |
症状 | Webポータルが開かない(404) |
ping | 通る(192.168.10.1) |
nslookup | IPは引けている |
telnet 443 | 通らない |
影響範囲 | 同一VLAN内全端末で発生 |
チケット制やSLA対応の現場では標準フォーマットでの記録が重宝されます。
まとめ
ネットワークトラブルは、技術力よりも“落ち着いた切り分け”が最大の武器になります。
- OSIモデルを使った階層的切り分け
- コマンドやツールを活用した状況把握
- ユーザーからの“再現性ある情報収集”
- プリセールスとしての初動対応力
設計・構築だけでなく、「困ったときにも頼れる存在」であることが、信頼されるエンジニア・プリセールスへの第一歩です。