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前回はOSI参照モデルの全体像を学びました。
今回はその中でも下位レイヤにあたるL1(物理層)とL2(データリンク層)に注目します。
この層の理解は、インフラ構築の最前線で活躍するエンジニアにとってはもちろん、ネットワーク設計やトラブルシュートを行うプリセールスにとっても非常に重要です。
L1:物理層の基礎知識
物理層(Layer 1)は、データを実際に電気信号や光信号として伝送する層です。
通信のベースとなるハードウェア的な部分です。
物理層の構成要素
項目 | 内容例 |
---|---|
LANケーブル | Cat5e / Cat6 / Cat6A / Cat7 など |
光ファイバー | シングルモード(SM) / マルチモード(MM) |
コネクタ | RJ-45 / LC / SC など |
トランシーバ | SFP / SFP+ / QSFP など |
NIC(ネットワークインターフェース) | サーバやPCに搭載されるネットワークポート |
通信速度の進化
- 1Gbps
-
現在でも多くのオフィスで標準
- 10Gbps
-
サーバやストレージなどのバックエンドに普及
- 25Gbps / 40Gbps / 100Gbps
-
データセンター向け
プリセールス視点の注目点
- 配線種別・距離・通信速度の要件をヒアリングすることで、適切なインターフェース選定が可能
- 見積時は「SFPモジュールは別売」「ケーブル長に制限あり」などの注意点を盛り込むことが重要
L2:データリンク層の基礎知識
データリンク層(Layer 2)は、同一ネットワーク内(セグメント内)での通信を制御する層です。MACアドレスやスイッチ、VLANといった技術がここに該当します。
MACアドレスとイーサネット通信
- MACアドレス:48bitの機器固有の識別子
- 同一セグメント内では、MACアドレスを使って通信する(ARPによる解決)
スイッチとハブの違い
項目 | ハブ | スイッチ |
---|---|---|
通信方式 | ブロードキャスト | MACアドレスに基づく転送 |
通信の効率 | 低い(衝突あり) | 高い(衝突なし) |
使用例 | ほぼ廃止 | 現在の企業LANで主流 |
VLAN(仮想LAN)の基本と設計
VLAN(Virtual LAN)は、1つの物理ネットワークを論理的に分割する技術です。
スイッチ上でポートごとにグループを分けることで、セキュリティやトラフィックの分離が可能になります。
VLANの目的
- セキュリティ向上:部署ごとの通信を分離
- ブロードキャストドメインの分割:ネットワークの負荷軽減
- 柔軟なネットワーク設計:物理的な接続に縛られない
VLANの構成例
VLAN ID | 部署 | 接続ポート |
---|---|---|
10 | 情報システム部 | ポート1〜5 |
20 | 営業部 | ポート6〜10 |
30 | 来客用Wi-Fi | ポート11(AP接続) |
タグVLANとアンタグVLAN
- タグVLAN(802.1Q)
-
トランクポートでVLAN情報を付加
- アンタグVLAN
-
エンドデバイス向けのアクセスポート
プリセールス視点のポイント
- VLAN設計はセキュリティ要件や将来の拡張性に直結する
- 「来客用Wi-FiはVLAN分離すべきか?」など要件ヒアリング時に確認すべき論点がある
L1/L2に関するよくあるトラブルと対処法
1. ケーブル不良・トランシーバ未挿入(L1トラブル)
症状:Linkが点灯しない、速度が出ない
対応:ケーブルの再接続、モジュール交換、NIC設定確認
2. VLAN未設定・設定ミス(L2トラブル)
症状:同じネットワークなのに通信できない
対応:スイッチのVLAN設定確認、アクセスポート/トランク設定の見直し
エンジニア・プリセールスにとってのL1/L2の重要性
視点 | 理由 |
---|---|
インフラエンジニア | 構築時の基本中の基本。物理配線、VLAN設計がミスなくできるかが安定稼働に直結。 |
プリセールス | 配線方式、必要なモジュール、VLAN設計要否などを提案時に説明・見積する必要がある。トラブル時も最低限の切り分け能力が必要。 |
まとめ
L1/L2層は、ネットワークの“土台”であり、設計・構築・提案のすべての出発点です。
「LANケーブル1本」と言えど、その背後には多くの判断と技術が詰まっています。
次回は、ネットワーク層(L3)の基本としてIPアドレス、ルーティング、冗長化技術(VRRPなど)を学びましょう。