第5回:DNS・DHCPなどのネットワークサービスの基礎

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ここまででネットワークの“道”“通信のしくみ”は理解できたかと思います。

今回はその上で、実際のネットワーク運用に不可欠な基本サービス(DNS・DHCP・NTPなど)について解説します。

これらは「動いていて当然」と思われがちですが、障害時には大きな影響を与える重要な存在です。

また、プリセールスとして設計要件をヒアリングすべきポイントも多く含まれています。

DNS(Domain Name System)

DNSとは?

DNSは、ホスト名(FQDN)とIPアドレスの変換を行う仕組みです。
たとえば www.example.com192.0.2.10 といった変換がDNSの仕事です。

仕組み(名前解決の流れ)

  1. クライアントが名前解決を要求(例:ping www.google.com
  2. DNSキャッシュに無ければ、指定されたDNSサーバに問い合わせ
  3. DNSサーバが再帰的に他のDNSサーバを参照し、結果を取得
  4. クライアントにIPアドレスを返却

プライマリ・セカンダリDNS

  • プライマリDNS:ゾーン情報の管理者(書き込み可能)
  • セカンダリDNS:参照専用(冗長用)

設計・運用時の注意点

観点内容
冗長化複数のDNSを設定(セカンダリ、Public DNS併用など)
応答遅延DNSが遅いとすべての通信が遅延することに注意
キャッシュレスポンス高速化のメリットと、変更反映遅延のトレードオフ

DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)

DHCPとは?

DHCPは、IPアドレスやゲートウェイなどの情報をクライアントに自動割当する仕組みです。
PCやスマートフォンをネットに繋ぐとき、裏で動いているのがこのDHCPです。

割当の流れ(DORAプロセス)

  1. Discover:クライアントが「誰かIPくれませんか?」とブロードキャスト
  2. Offer:DHCPサーバが空きIPを提示
  3. Request:クライアントが「それください」とリクエスト
  4. Acknowledge:サーバが「OK」と正式に割り当て

リースと予約

  • リース:一時的にIPを借りる。期限切れで再取得
  • 予約:MACアドレスごとに特定のIPを固定(プリンタなどで利用)

設計上の注意点

観点内容
範囲設計サブネット内のアドレスを適切に分割(例:DHCP用/固定用)
複数セグメント対応VLANごとに中継設定(DHCPリレー)を忘れずに
競合回避IP重複を防ぐために固定IP帯との分離を徹底

NTP(Network Time Protocol)

NTPとは?

NTPは、ネットワーク機器やOSの時刻を正確に同期するためのプロトコルです。
ログの時刻ずれや証明書の有効期限トラブルを防ぐためにも重要です。

NTP構成の例

  • 社内に**NTPサーバ(Stratum 2〜3)**を立て、各機器はそれを参照
  • 上位は信頼できる公的NTPサーバ(NICTなど)を指定

NetBIOS名解決 / WINS(補足)

  • NetBIOS名解決:Windows特有の名前解決方法
  • WINS:旧来のNetBIOS用名前解決サービス(今はDNSに集約されつつある)

プリセールス観点での注意点

  • 古いシステムのリプレース案件では「WINSサーバが残っているか」を要確認
  • Active DirectoryとDNS/WINSの役割関係にも注意

サーバ設置パターンと導入選定ポイント

サービス導入形態選定のポイント
DNS社内DC、クラウド、ルータ兼用AD環境では社内DNSが必須。冗長構成の有無を確認
DHCPWindows Server、L3スイッチ、UTM小規模ならスイッチやルータでも十分。予約設定の可否に注意
NTPLinuxサーバ、Active Directory、FW全体時刻管理に必須。時刻ずれは想像以上のリスク

トラブル事例から学ぶサービス重要性

ケース1:DNS障害で全社業務停止

  • 外部DNSへの依存が原因。ISP側トラブルで名前解決不可 → Web、メール全滅
  • → 対策:社内キャッシュDNSを設置 + 外部DNSの冗長化

ケース2:DHCPのリース枯渇で接続不能

  • 来客用Wi-Fiに大量接続 → リース枯渇 → IP取得不可
  • → 対策:リース期間の見直し / セグメント分離

まとめ

DNS・DHCP・NTPなどのネットワーク基本サービスは、「縁の下の力持ち」でありながら、障害時には非常に大きな影響を及ぼします。

プリセールスとしては、「設計時に当たり前として省略されがちなサービスを、あえて確認・提案する視点」が信頼につながります。