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ネットワークの設計・構築において、どんな機器を使うかは性能や構成だけでなく、セキュリティ・運用・将来性にも関わる重要なポイントです。
本記事では、インフラエンジニア・プリセールスの視点から、主要なネットワーク機器の役割・違い・選定基準をわかりやすく解説します。
スイッチ(Switch)
役割
- L2スイッチ:MACアドレスで通信先を判別、セグメント内通信の中核
- L3スイッチ:IPレベルのルーティング機能を備える
主な機能
機能 | 内容 |
---|---|
VLAN対応 | ポート単位で論理分割 |
QoS | 通信優先度の制御 |
PoE | IP電話・カメラなどへの電源供給 |
リンクアグリゲーション | 複数ポートの帯域束ね |
L3ルーティング | VLAN間通信(L3スイッチのみ) |
選定ポイント
観点 | チェック項目 |
---|---|
ポート数 | 拡張余地あり? |
PoE対応 | IPカメラ・Wi-Fi APの給電予定は? |
スタック可否 | 冗長化や拡張性は? |
スループット | 通信量・用途に見合っているか? |
ルーター(Router)
役割
異なるネットワーク間の通信を中継・制御する装置。
社内LANからインターネットへの接続など、ネットワークの“出入口”として配置。
主な機能
- IPルーティング(静的 / 動的)
- NAT(ローカル → グローバル変換)
- DHCPサーバ機能(小規模向け)
- VPN機能を内蔵するモデルもあり
スイッチとの違い
- スイッチはセグメント内の通信が主
- ルーターはネットワーク間の通信が主
ファイアウォール(Firewall)
役割
- ネットワークの境界に置かれ、不正アクセスや不要な通信を遮断
- L3〜L7のレベルで通信制御
主な機能
機能 | 内容 |
---|---|
パケットフィルタリング | IP・ポート・プロトコルで制御 |
ステートフルインスペクション | セッションをトラッキング |
UTM機能(統合型) | ウイルス検知・URLフィルタなど |
ログ・可視化 | 誰がどこにアクセスしたかの追跡 |
選定ポイント
- 外部接続の有無(社外公開、VPNなど)
- 想定トラフィック(ギガクラスか10G超か)
- 拠点接続数(中小拠点向けFWで十分か?)
ロードバランサ(Load Balancer)
役割
- サーバーへのアクセスを複数台に分散させ、処理の負荷を均等化
- L4/L7のレベルで処理される
主な機能
種別 | 内容 |
---|---|
L4ロードバランサ | IP・ポート単位で負荷分散(高速) |
L7ロードバランサ | HTTPヘッダなどを解析し高度な制御 |
機能例
- セッション維持(Sticky)
- ヘルスチェック(死活監視)
- SSLオフロード(暗号処理の代行)
選定ポイント
- 対象サービスのプロトコル(L4で足りるか、L7が必要か)
- SSL処理が重い場合はオフロード対応を検討
- 可用性:HA構成が組めるか(アクティブ-スタンバイなど)
メーカーごとの特徴(スイッチ・FW編)
メーカー | 特徴 |
---|---|
HPE Aruba | Campus向けL2/L3スイッチに強み。PoE/AP連携が得意 |
Cisco | エンタープライズ向け機能が豊富。学習教材も豊富 |
Fortinet | UTM市場で強い。コスパと機能のバランスが◎ |
Palo Alto | 高度なL7制御、App-IDなど先進機能が強み |
Allied Telesis | 中小規模に強く、日本市場でも安定の実績 |
※提案時には、保守体制(オンサイト/センドバック)や国内代理店の有無も考慮しましょう。
6. プリセールスのための選定フロー
- 要件ヒアリング
-
接続機器数、PoE有無、VPN利用、インターネット接続など
- 機器の機能要件を整理
-
L2/L3スイッチ、スタック必要性、冗長性
- 設置環境と物理要件確認
-
ラックマウント / 壁掛け / 無停止交換対応 etc.
- コストと保守のバランスを検討
-
H/W保証、オンサイト有無、ファーム更新ポリシー etc.
よくあるトラブルと選定ミス
ミス例 | 問題内容 | 回避策 |
---|---|---|
PoE非対応を導入 | APに電源が入らない | PoE/PoE+の有無を確認 |
ACL非対応のL2スイッチ | VLAN間で通信制御できない | L3スイッチを検討 |
FWのスループット不足 | 通信が詰まる | VPNやSSL処理も含めて性能確認 |
ロードバランサ未導入 | Webサーバの単一障害点 | 負荷分散装置を初期から計画に含める |
まとめ
ネットワーク機器は、単に“つなぐ”だけでなく、制御し、守り、支えるための重要な要素です。
プリセールスとしては、「どの機器が必要か」を判断し、「なぜその機器なのか」を論理的に説明できることが価値になります。