第7回:ネットワーク機器の役割と選定ポイント

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ネットワークの設計・構築において、どんな機器を使うかは性能や構成だけでなく、セキュリティ・運用・将来性にも関わる重要なポイントです。

本記事では、インフラエンジニア・プリセールスの視点から、主要なネットワーク機器の役割・違い・選定基準をわかりやすく解説します。

スイッチ(Switch)

役割

  • L2スイッチ:MACアドレスで通信先を判別、セグメント内通信の中核
  • L3スイッチ:IPレベルのルーティング機能を備える

主な機能

機能内容
VLAN対応ポート単位で論理分割
QoS通信優先度の制御
PoEIP電話・カメラなどへの電源供給
リンクアグリゲーション複数ポートの帯域束ね
L3ルーティングVLAN間通信(L3スイッチのみ)

選定ポイント

観点チェック項目
ポート数拡張余地あり?
PoE対応IPカメラ・Wi-Fi APの給電予定は?
スタック可否冗長化や拡張性は?
スループット通信量・用途に見合っているか?

ルーター(Router)

役割

異なるネットワーク間の通信を中継・制御する装置。
社内LANからインターネットへの接続など、ネットワークの“出入口”として配置。

主な機能

  • IPルーティング(静的 / 動的)
  • NAT(ローカル → グローバル変換)
  • DHCPサーバ機能(小規模向け)
  • VPN機能を内蔵するモデルもあり

スイッチとの違い

  • スイッチはセグメント内の通信が主
  • ルーターはネットワーク間の通信が主

ファイアウォール(Firewall)

役割

  • ネットワークの境界に置かれ、不正アクセスや不要な通信を遮断
  • L3〜L7のレベルで通信制御

主な機能

機能内容
パケットフィルタリングIP・ポート・プロトコルで制御
ステートフルインスペクションセッションをトラッキング
UTM機能(統合型)ウイルス検知・URLフィルタなど
ログ・可視化誰がどこにアクセスしたかの追跡

選定ポイント

  • 外部接続の有無(社外公開、VPNなど)
  • 想定トラフィック(ギガクラスか10G超か)
  • 拠点接続数(中小拠点向けFWで十分か?)

ロードバランサ(Load Balancer)

役割

  • サーバーへのアクセスを複数台に分散させ、処理の負荷を均等化
  • L4/L7のレベルで処理される

主な機能

種別内容
L4ロードバランサIP・ポート単位で負荷分散(高速)
L7ロードバランサHTTPヘッダなどを解析し高度な制御

機能例

  • セッション維持(Sticky)
  • ヘルスチェック(死活監視)
  • SSLオフロード(暗号処理の代行)

選定ポイント

  • 対象サービスのプロトコル(L4で足りるか、L7が必要か)
  • SSL処理が重い場合はオフロード対応を検討
  • 可用性:HA構成が組めるか(アクティブ-スタンバイなど)

メーカーごとの特徴(スイッチ・FW編)

メーカー特徴
HPE ArubaCampus向けL2/L3スイッチに強み。PoE/AP連携が得意
Ciscoエンタープライズ向け機能が豊富。学習教材も豊富
FortinetUTM市場で強い。コスパと機能のバランスが◎
Palo Alto高度なL7制御、App-IDなど先進機能が強み
Allied Telesis中小規模に強く、日本市場でも安定の実績

※提案時には、保守体制(オンサイト/センドバック)や国内代理店の有無も考慮しましょう。

6. プリセールスのための選定フロー

要件ヒアリング

接続機器数、PoE有無、VPN利用、インターネット接続など

機器の機能要件を整理

L2/L3スイッチ、スタック必要性、冗長性

設置環境と物理要件確認

ラックマウント / 壁掛け / 無停止交換対応 etc.

コストと保守のバランスを検討

H/W保証、オンサイト有無、ファーム更新ポリシー etc.

よくあるトラブルと選定ミス

ミス例問題内容回避策
PoE非対応を導入APに電源が入らないPoE/PoE+の有無を確認
ACL非対応のL2スイッチVLAN間で通信制御できないL3スイッチを検討
FWのスループット不足通信が詰まるVPNやSSL処理も含めて性能確認
ロードバランサ未導入Webサーバの単一障害点負荷分散装置を初期から計画に含める

まとめ

ネットワーク機器は、単に“つなぐ”だけでなく、制御し、守り、支えるための重要な要素です。

プリセールスとしては、「どの機器が必要か」を判断し、「なぜその機器なのか」を論理的に説明できることが価値になります。