OS選定に関する情報を9回にわたって解説してきましたが、最終回となる今回は、提案書や商談現場で実際に使える「OS選定チャート」と、PreSalesがよく直面するFAQ(質問とその回答例)をまとめます。
用途別 OS選定チャート(実践用)
顧客の利用目的と前提条件から、最適なOS候補を導き出せるチャートです。
① 利用目的は?
├─ Active Directoryや社内認証が必要
│ └─ Windows Server(AD・GPO)
├─ Webサーバやアプリ基盤
│ ├─ OSS活用中心 → Ubuntu / Rocky Linux
│ └─ 商用ミドルあり → RHEL(公式サポート)
├─ Oracle / SAPなど基幹DB
│ └─ RHEL(公式サポートあり)
├─ 検証・学習・教育用途
│ └─ Ubuntu / Rocky(無償・軽量)
├─ 仮想化基盤の構築
│ ├─ Hyper-V中心 → Windows Server Datacenter
│ └─ KVM / VMware → RHEL or Rocky + 仮想化権考慮
└─ リモートデスクトップ環境(RDS)
└─ Windows Server + RDS CAL
PreSalesでよくあるOS選定に関するFAQ
Q1. 「OSSならUbuntuとCentOS、どっちがいいの?」
A:
CentOSは現在CentOS Streamに移行しており、本番運用では推奨されにくくなりました。本番環境ではRHELまたはRocky Linux(CentOS後継)、OSS・クラウド開発系では**Ubuntu(LTS)**が安定した選択肢です。
Q2. 「Windows ServerとLinux、コスト面ではどちらが有利?」
A:
初期費用はLinux(Ubuntu/Rocky)が有利ですが、運用者がWindows中心であればGUI操作や既存スキルを活かせるWindowsの方がTCOが下がるケースもあります。トータル運用設計で判断するのがベストです。
Q3. 「Ubuntuは無料だけど、サポートはどうなる?」
A:
Ubuntu LTS版は無償で5年のアップデート提供がありますが、10年の延長サポート(ESM)を受けたい場合は有償のUbuntu Pro契約が必要です。商用利用や公共系ではUbuntu Proの導入が推奨されます。
Q4. 「仮想サーバを複数構築したいけど、OSライセンスはどうなる?」
A:
- Windows Serverの場合:Standardは2VMまで。多数構築するならDatacenterエディションが必須
- RHELの場合:1VMごとに契約するか、**Datacenter向けサブスクリプション(無制限)**を選択
Q5. 「EOL間近のOSがあるけど、すぐ入れ替えないとダメ?」
A:
理想はサポート切れ前の入れ替えですが、予算やスケジュールの都合で延命が必要な場合は、有償延長(ESU, ESM, EUSなど)を活用して、段階的にリプレース提案を行うのが現実的です。
提案書に使える文例テンプレート
機種選定理由に使える例文
「本構成ではWebアプリケーションとファイル共有を前提としており、OSS活用と運用の容易さを両立するため、Ubuntu Server(LTS版)を採用しております。」
サポート期限を踏まえた更改提案文
「現在ご利用中のWindows Server 2012 R2は2023年でサポートが終了しており、今後のセキュリティリスクや障害時対応を考慮し、Windows Server 2022への更改をご提案いたします。」
仮想化前提の提案文
「仮想マシンを複数稼働させる構成となるため、仮想化ライセンスが無制限のWindows Server Datacenterエディションを採用しています。」
まとめ:OS提案力は“構成全体を支える技術力”そのもの
OSは単なるソフトウェアではなく、業務要件、セキュリティ、仮想化、クラウド、運用体制、ライセンスコスト…すべてに影響する土台です。
PreSalesエンジニアにとって、OS選定の知識は、信頼性ある構成提案を成立させる「基礎体力」とも言えるでしょう。
この10回のシリーズを通じて、皆様の提案活動がより説得力を持ち、顧客に寄り添った提案ができる一助になれば幸いです。