第4回:Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の商用活用とサブスクリプション

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Linuxディストリビューションの中でも、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)は「商用サポート」「安定性」「エンタープライズ対応力」において突出した存在です。

特にSAP、Oracle、金融・公共系の大規模システムでは、RHELの採用実績が多数あります。

本記事では、PreSales視点で「RHELをどんな場面で、どう提案するか」を整理していきます。

HELの基本概要と特徴

RHELは、Red Hat社(現IBM)が提供する法人向け商用Linuxディストリビューションです。

特徴一覧

項目内容
商用サポート付き年額契約で24時間365日サポートが受けられる
安定性重視リリース頻度は控えめ、長期サポート前提の構成
エンタープライズ対応SAP, Oracle, VMwareなどの公式認定プラットフォーム
SELinux搭載高度なセキュリティポリシー制御が可能
カーネル・パッケージの検証済み提供企業システムでの安定稼働に適する構成

信頼性・安定性を最優先とする業務システムに向いています。

サブスクリプションモデルと価格体系

RHELは買い切りではなく、年額のサブスクリプション契約が基本です。
用途や構成によって契約パターンが分かれています。

サブスク種別用途価格帯(目安)
RHEL Server(物理)単体物理サーバ約10~15万円/年
RHEL for Virtual Datacenters仮想化ホスト(無制限ゲストOS)約40万円/年~
RHEL Workstation技術者・設計者用クライアント約5万円/年
Smart Management付き衝突回避・自動化運用を含む上記+α費用

※価格は構成や販売パートナーによって変動あり

vSphere基盤での一括仮想化利用には、「Datacenter向けサブスク」を選択するとコスパが良くなります。

RHELを選ぶ理由(ユースケース別)

Oracle DB、SAP HANAなどの基幹系システム

  • RHELは公式なサポート対象OSであり、障害時もベンダー連携がスムーズ
  • 金融・公共などでは「RHEL指定」の案件も多数

セキュリティ基準が厳しいシステム

  • SELinuxによる厳格なアクセス制御が可能
  • FIPS準拠やCIS Benchmarkへの対応も◎

長期安定運用が前提の業務

  • LTS(10年間サポート)で、中長期運用に安心感あり
  • カーネルやミドルウェアのアップデートもRed Hatが検証済みで配布

CentOSの終了とRocky/Alma Linuxの登場

2021年、Red HatはCentOS Linuxの終了を発表し、CentOS Stream(開発寄り)への移行を推奨しました。

この結果、RHEL互換の無償ディストリとして以下が注目されています。

ディストリ特徴
Rocky LinuxCentOS後継としてRHELと完全互換。商用でも急速に採用中
AlmaLinuxCloudLinux社主導。RHELと100%バイナリ互換を宣言
CentOS StreamRHELよりも先にアップデートが配信される「準開発版」

無償でRHEL互換環境を使いたい場合はRocky Linuxが主流です。

PreSalesでの提案ポイント(チェックリスト)

項目内容
ミドルウェア要件OracleやSAPなど、RHEL認定済みが必要か?
サポート期間5年 or 10年の運用期間に合ったサブスクリプションを提案
仮想化構成VMware vSphereやKVM基盤上での最適な契約プランを選定
セキュリティ要件SELinux、FIPS準拠、脆弱性対応まで含めて説明できるか
コスト重視RHELが必須でない場合はRockyなどの無償互換OSも候補に

まとめ:RHELは“信頼性と公式サポート”を重視する選択肢

Red Hat Enterprise Linuxは、「何があっても安定して動き、誰かが責任を持って対応してくれるOS」として、法人ITで強い存在感を持っています。

特に、大規模システム・基幹システム・セキュリティ厳格な業種では、“指定OS”として選ばれることが多いのが現状です。

PreSalesとしては、「なぜ無償Linuxではなく、RHELを選ぶべきなのか」を論理的に説明できることが求められます。