インフラエンジニアなら知っておきたいラックの基本
サーバーやネットワーク機器を安定して稼働させるために必要な「ラック」。
しかし、実際の現場では「とりあえず入るものを選んだ」「サイズが合わず再選定になった」といったトラブルも少なくありません。
サーバーラックは、単なる収納棚ではなく、ITインフラの中核を支える“土台”です。
本記事では、インフラ構築の入口ともいえるラックの基礎知識を解説します。
サーバーラックの役割とは?
サーバーラック(一般的には19インチラック)は、情報機器を安全・効率的・整理された状態で設置するための専用筐体です。主な役割は以下の通りです。
- 省スペース化と集約
- サーバーやストレージ、スイッチ類を縦に積むことで、床面積あたりの機器数を最大化できます。
- 放熱・冷却性の確保
- エアフローを前提とした構造により、サーバーの放熱を効率よく逃がす仕組みになっています。
- 物理的な保護
- 外部からの衝撃やホコリ、不正アクセスから機器を守ります。鍵付きの前面ドアや、セキュリティネジを装備するモデルも存在します。
- 保守・運用性の向上
- ケーブルマネジメントや電源管理がしやすく、トラブル時のアクセスもスムーズです。
ラックは単に機器を並べるための「箱」ではなく、冷却・配線・保守・拡張を含むインフラ管理の基盤と言っても過言ではありません。
「19インチ」と「Uサイズ」の意味
サーバーラックはEIA(Electronic Industries Alliance)規格に基づき、前面の機器取付幅が19インチ(約482.6mm)に統一されています。これにより、HPE、Dell、Lenovo、Ciscoなど多くのITベンダーの製品を共通のラックに搭載することが可能です。
また、ラックの高さは「U(ユニット)」という単位で表現されます。
1U = 1.75インチ(44.45mm)であり、2Uサーバーなら約89mm、4Uなら約178mmの高さを必要とします。
一般的なフルサイズラックでは42U前後が主流で、たとえば「1Uサーバー×20台+UPS+スイッチ+空冷スペース」など、設計によって積載バランスを最適化します。
ラックの主なタイプと用途
ラックには設置環境や運用目的に応じていくつかのバリエーションがあります。
1. クローズドラック(キャビネットタイプ)
前面・背面・側面がパネルで囲まれており、冷却効率やセキュリティ、耐震性に優れます。データセンターやサーバールームでは定番。
2. オープンラック(フレームタイプ)
パネルがなく、アクセス性・放熱性が高く安価です。検証環境や一時設置、低予算案件に適しますが、ホコリや衝突には注意が必要。
3. 壁掛けラック/小型ラック
SOHOや小規模オフィス向け。NASやルーター、PoEスイッチなどをまとめるのに便利。設置自由度が高く、耐荷重や通気性に注意が必要です。
実務で使われるラックの構成例
企業でよく見られるラック構成例を挙げてみます。
- 42Uクローズドラック(データセンター)
- 上部:L2/L3スイッチ(1U×2台)
- 中段:仮想基盤サーバー(1U×6台)
- 下部:UPS、PDU(2U〜4U)、ストレージ(2U×2台)
- 予備U数を5U程度確保
- 25Uオープンラック(検証環境)
- 汎用PC、KVMスイッチ、PoEスイッチ、UPSなどを無造作に配置
現場では「搭載予定機器の合計U数+αの空き」を見込んで選定します。
また、機器の前後奥行きや排熱方向、ケーブルスペースも事前に確認しておくことが重要です。
まとめ:ラックはインフラの“基盤設計”
サーバーラックは、すべてのITインフラの「受け皿」となる装置です。
選定や設置を誤ると、機器が収まらない、熱がこもる、メンテが困難といった運用上の致命的なトラブルを招くこともあります。
逆に、適切に設計されたラック環境は、
- 空調効率の向上による電力コスト削減
- トラブル対応の迅速化
- 将来の機器追加の柔軟性
といったメリットをもたらします。