第2回:ラック選びで失敗しないための5つの視点

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インフラ担当が見落としがちな“現場目線”での選定ポイント

サーバーラックの選定は、単に「U数が足りれば良い」「安ければ良い」というものではありません。

実際の現場では「搬入できなかった」「ケーブルが収まらない」「放熱不良でアラートが頻発」といった問題が多く発生しています。

本記事では、ラック選定時に考慮すべき5つの視点を、実務ベースで解説します。

設置場所と搬入経路を確認せよ

ラックの高さ・奥行き・幅はカタログで把握できても、「搬入可能かどうか」を見落とすケースは非常に多いです。

特に以下の点を事前に確認しておきましょう:

  • エレベーターの有効寸法
    • 奥行き1000mm以上のラックは、エレベーターに斜めにしても乗らないことがあります。
  • ドアの間口・曲がり角
    • 病院・学校などでは90度曲がる通路に注意。
  • フリーアクセスフロアの耐荷重
    • 重量型UPS+満載ラックでは500kg超えも珍しくなく、フロア強度を確認すべきです。

搬入に支障がある場合は、分解搬入できるラック小型ラック×複数台構成などで対応する必要があります。

放熱・通気設計を甘く見ない

ラック選定時に見落とされがちなのが、冷却・エアフロー設計です。

以下の要素が不足すると、夏場や高密度設置時にシャットダウンや故障リスクが高まります。

  • メッシュ扉の採用
    • 前後扉がメッシュ状(開口率60〜80%)なら、機器ファンの風量を妨げません。
  • ブランキングパネルの設置
    • 機器非搭載のU数を塞ぐことで、ホットエアの逆流を防止できます。
  • ケーブルの整理
    • 空冷機器が多い場合、後方のケーブルが風を遮ると放熱効率が大幅に低下します。

さらに高密度環境では、冷却ゾーニング(ホットアイル/コールドアイル分離)やエアフローガイドの導入も視野に入れましょう。

U数だけでなく「奥行き」と「有効搭載寸法」を確認

サーバーやUPS、ストレージを選定するとき、奥行きが800mm〜1100mm以上ある機器も珍しくありません。

ラックには「外形寸法」とは別に有効搭載奥行き(取付レール間距離)があり、600mmラックに深さ800mmのUPSは収まりません。

また、将来的に

  • RAIDストレージの追加
  • GPU搭載サーバーの導入
  • ディープラーニング向けハードの採用

などを見込む場合は、奥行き1000mm以上、ケーブルスペース込みで1100mmクラスのラックを初めから選んでおく方が安全です。

メンテナンス・配線性を意識せよ

ラック設計では「後ろに人が入れるか?」という視点も重要です。

以下のような配慮があると、後々の保守作業が格段に楽になります

  • 背面アクセススペースを500mm以上確保
  • PDUやタップの配置に余裕を持たせる
  • ケーブルマネジメントバー/ダクト付きラックの採用
  • 前面もスペースを取り、ブレード抜き差し作業がしやすい構造に

また、頻繁にアクセスが必要なスイッチやKVMは、腰高(1100mm程度)に配置すると作業性が向上します。

拡張性とマウント方式の将来性

導入時は「10Uで十分」と思っても、システムは年々増築されます。

そのためには以下のような拡張性を確保しておくと良いでしょう。

  • 20〜30%の空きU数
  • マウントレールのTool-less対応(工具不要)
  • ボルトレス棚板やスライドレールの対応可否
  • PDUの増設余地やリモート電源制御対応

また、近年ではマイクロデータセンター型ラック(ファン・UPS一体型)や、液冷対応ラックといった次世代環境にも対応できる設計も増えてきています。

選定時には、3年後・5年後の構成変化まで見据えておくのが理想です。

まとめ:ラック選びは「最後」ではなく「最初」に考える

機器が決まってからラックを探すと、制限が多くなります。

ラックこそが空間・電源・空調の中心に位置する基盤であり、早い段階から設計に取り入れることで、保守性・拡張性・コスト効率に大きな差が生まれます。