第7回:ラックオプションによる拡張性の向上と周辺機器の活用

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日々の運用を“快適”にするためのプロ仕様カスタマイズとは?

ラック本体の設置が完了しても、それでインフラ設計が終わるわけではありません。

運用フェーズに入ると、「あれが足りない」「作業がしづらい」「配線がごちゃごちゃしている」といった課題が出てきます。

それらを解決し、保守性・整理性・拡張性を一気に向上させるのが“ラックオプション”の力です。

本記事では、現場でよく利用されているラックオプションと、その具体的な活用方法について詳しく解説します。

なぜラックオプションが必要なのか?

ラックは単なる「箱」ではなく、インフラの受け皿かつ作業空間です。

ラックを使いやすく進化させるには、利用シーンごとにオプションを追加して最適化することが重要です。

主な導入目的は以下の通り:

  • 作業効率の向上(前面引き出し・トレイの活用)
  • 配線整理とエアフロー改善(ケーブルガイド、ブラシパネル)
  • セキュリティと耐久性の強化(鍵・棚板・耐荷重プレート)
  • 管理業務の可視化(ネームプレート、ポート番号札)

現場で“痒い所に手が届く”のは、ラックオプションの活用次第です。

よく使われるラックオプション一覧と活用方法

棚板(固定・スライド・重量用)

  • 固定棚板:小型NAS、据置型UPSなどを搭載。取付けはしっかりネジ止め。
  • スライド棚板:キーボード・ドライブなど頻繁に操作が必要な機器に最適。
  • 重量用棚板:UPS・大型ストレージ・リールなど、30kg以上に対応した設計。

ポイント:EIA規格のネジ穴に合ったものを選定。耐荷重・奥行き対応も要確認。

ケーブルマネジメントバー/リング

  • ラック背面や側面にケーブルの束を固定するための補助金具
  • 結束バンドとの併用で、排熱経路を確保しながら整然と配線可能
  • 電源ケーブルとLANケーブルを上下で分けて配線するのが基本

ポイント:サーバー・スイッチのケーブル排出口の高さに合わせた位置に設置すると、メンテ時のストレスが軽減します。

ブラシパネル/ケーブル引き込みプレート

  • 未使用のポートやパネル部からのホコリ侵入・熱逆流を防止
  • ブラシ付きのパネルを利用することで、ケーブルを通しつつ密閉性を確保

ポイント:前面下部や背面下部からのケーブル引き込みに非常に効果的。防塵環境や製造業でも活躍。

ラックトレイ/KVM引き出し式キーボード

  • ラックマウント型の液晶+キーボード+マウスの一体型トレイ
  • 管理サーバーやKVMスイッチと接続して複数台の物理マシンを1台で管理可能
  • スライド式で使わないときは収納可能、1Uスペースで完結

ポイント:省スペース&機器トラブル時のコンソール操作の強い味方です。

名札ホルダー/ポート番号札

  • 機器の管理番号や用途を視認できるラベルを貼ることで、トラブル時の混乱を回避
  • ケーブルにも番号札をつけることで、抜線ミスや誤接続のリスクを低減

ポイント:棚板ごと・U単位ごと・ケーブルごとにラベリングルールを統一するのが効果的。

機器追加や構成変更に備える柔軟性

ラックを長期運用する上で重要なのは、「あとから拡張できること」です。

たとえば以下のようなシナリオに、オプションが対応してくれます。

  • サーバー追加時に空き棚板を再利用
  • ストレージをラック下段に増設 → 重量用スライド棚へ移行
  • 監視カメラ用PoEスイッチを追加 → 側面ケーブルダクトを増設

機器構成の変化=ラック構成の変化と捉え、オプションで柔軟に対応することが、ラック設計を「長持ち」させるコツです。

メーカーごとのオプション対応力

主要ラックメーカーは、オプションの豊富さにも違いがあります。

メーカー特徴的なオプション
HPEスライドレール/Tool-less棚板/マネジメントアーム
APC温度センサー/メーター付きPDU/前面フィルター
サンワサプライ汎用棚板/軽量ブラケット/防塵パネル

特にHPEやAPCは、サーバーとの一体設計が前提のため、オプションもピッタリ設計されています。

サンワサプライは、汎用性と即納性に強みがあります。

まとめ:ラックオプションは“使いやすさの設計資材”

ラックオプションは、派手さはありませんが、日々の業務効率やトラブル対応に直結する重要要素です。

最初のラック導入時に全てを揃える必要はありませんが、将来的な構成変更を想定し、「必要になった時にすぐに手配できるラインナップ」であることは大きなアドバンテージになります。