【第2回】DAS・NAS・SANを徹底比較

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サーバ構成を設計する上で、ストレージ方式の選定は避けて通れません。

「とりあえずNASで」と安易に決めてしまうと、性能が出なかったり、冗長性が確保できなかったり、後で高くつく場合もあります。

今回は、前回紹介した3つのストレージ方式(DAS、NAS、SAN)について、実務視点での比較と使い分け方を解説します。

DAS(Direct Attached Storage):小規模用途に最適なローコスト構成

概要

DASは、サーバに直接接続するストレージ方式です。SATA/SASインターフェースで内蔵する、または外付けRAIDボックスやJBODを接続する形です。

構成図(概念

[Server]────[DAS]
(直接接続)

特徴まとめ

項目内容
構成のシンプルさ◎:ケーブルで直接接続するだけ
初期コスト◎:ストレージ筐体のみで完結
拡張性△:物理的に接続ポート数に依存
共有性×:複数サーバで共有できない
可用性△:サーバ故障時はストレージも止まる可能性

向いているケース

  • スタンドアロン構成(単一サーバで完結)
  • 小規模オフィスの業務システム
  • ローカルバックアップ用途

NAS(Network Attached Storage):ファイル共有に強い汎用型

概要

NASは、TCP/IPネットワークを介してファイル単位でアクセスするストレージです。

SMB(Windows)やNFS(Linux)でのマウントが一般的です。

構成図(概念)

[Server A] ─┐
[Server B] ─┼─(LAN)──[NAS]
[Client] ──┘

特徴まとめ

項目内容
構成のシンプルさ○:LANで接続でき、設定もGUI中心
初期コスト○:中小規模モデルであれば安価
拡張性○:複数ベイモデルやクラスタ構成も可
共有性◎:複数台から同時アクセス可能
可用性○:冗長電源やRAID構成で高可用化も可能

向いているケース

  • ファイル共有サーバ(部門サーバ、社内ファイルサーバ)
  • 動画・写真などメディア系データの保管
  • スモールオフィスのバックアップ先

注意点

  • ファイル単位アクセスのため、ブロックI/Oを前提とするアプリケーション(DB、仮想化基盤など)には不向き
  • 複数クライアントからの同時アクセスで、ロック制御やI/O競合が発生しやすい。

SAN(Storage Area Network):仮想化や基幹業務に適した高性能構成

概要

SANは、Fibre ChannelやiSCSIといった専用プロトコルを使い、ブロック単位でデータをやり取りする高性能ストレージネットワークです。

OSから見ると「ローカルディスク」として扱え、VMwareやHyper-Vなどの仮想化プラットフォームとの親和性が非常に高いです。

構成図(概念)

[Server A]──┐
[Server B]──┼─(FC/iSCSI)──[SAN Storage]
[Server C]──┘

特徴まとめ

項目内容
構成のシンプルさ△:FCスイッチやHBAなどの知識が必要
初期コスト×:機器・構築費ともに高め
拡張性◎:ストレージ仮想化や大規模構成も可能
共有性◎:複数サーバでのLUN共有が可能
可用性◎:マルチパス/RAID/クラスタ構成など高度に構築可

向いているケース

  • 仮想化基盤(vSphere、Hyper-Vなど)
  • データベース(Oracle、SQL Server)
  • ミッションクリティカルな基幹系システム

SAN導入時の注意点

  • ネットワーク機器(FCスイッチ)、HBAカードなどの専用機器が必要
  • 専門知識が求められるため、導入・運用にはエンジニアスキルが不可欠

4. DAS/NAS/SANの比較表(まとめ)

項目DASNASSAN
接続方式直接接続(SATA/SAS)LAN(SMB/NFS)iSCSI / Fibre Channel
アクセス単位ブロックファイルブロック
初期コスト◎(最も安価)○(中間)×(高額)
共有性×(単一サーバのみ)◎(複数ユーザー同時可)◎(マルチホスト可)
運用の難易度◎(容易)○(GUI操作で簡単)×(専門スキル必須)
主な用途ローカル用途、小規模ファイル共有、バックアップ仮想化、DB、基幹業務

おわりに:方式を知ることで「最適な選定」ができる

「とりあえずNASで共有しよう」「RAIDで組めば安心」といった考えでは、ストレージのポテンシャルを最大限に活かすことはできません。

DAS・NAS・SANは、それぞれ得意な用途・適した規模・要求されるスキルセットが異なります

まずはこの3方式の特徴を理解し、要件に応じた最適な方式を選べるようになることが、インフラ設計の第一歩です。