ページ内に広告が含まれる場合がございます。
サーバ構成を設計する上で、ストレージ方式の選定は避けて通れません。
「とりあえずNASで」と安易に決めてしまうと、性能が出なかったり、冗長性が確保できなかったり、後で高くつく場合もあります。
今回は、前回紹介した3つのストレージ方式(DAS、NAS、SAN)について、実務視点での比較と使い分け方を解説します。
DAS(Direct Attached Storage):小規模用途に最適なローコスト構成
概要
DASは、サーバに直接接続するストレージ方式です。SATA/SASインターフェースで内蔵する、または外付けRAIDボックスやJBODを接続する形です。
構成図(概念
[Server]────[DAS]
(直接接続)
特徴まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
構成のシンプルさ | ◎:ケーブルで直接接続するだけ |
初期コスト | ◎:ストレージ筐体のみで完結 |
拡張性 | △:物理的に接続ポート数に依存 |
共有性 | ×:複数サーバで共有できない |
可用性 | △:サーバ故障時はストレージも止まる可能性 |
向いているケース
- スタンドアロン構成(単一サーバで完結)
- 小規模オフィスの業務システム
- ローカルバックアップ用途
NAS(Network Attached Storage):ファイル共有に強い汎用型
概要
NASは、TCP/IPネットワークを介してファイル単位でアクセスするストレージです。
SMB(Windows)やNFS(Linux)でのマウントが一般的です。
構成図(概念)
[Server A] ─┐
[Server B] ─┼─(LAN)──[NAS]
[Client] ──┘
特徴まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
構成のシンプルさ | ○:LANで接続でき、設定もGUI中心 |
初期コスト | ○:中小規模モデルであれば安価 |
拡張性 | ○:複数ベイモデルやクラスタ構成も可 |
共有性 | ◎:複数台から同時アクセス可能 |
可用性 | ○:冗長電源やRAID構成で高可用化も可能 |
向いているケース
- ファイル共有サーバ(部門サーバ、社内ファイルサーバ)
- 動画・写真などメディア系データの保管
- スモールオフィスのバックアップ先
注意点
- ファイル単位アクセスのため、ブロックI/Oを前提とするアプリケーション(DB、仮想化基盤など)には不向き。
- 複数クライアントからの同時アクセスで、ロック制御やI/O競合が発生しやすい。
SAN(Storage Area Network):仮想化や基幹業務に適した高性能構成
概要
SANは、Fibre ChannelやiSCSIといった専用プロトコルを使い、ブロック単位でデータをやり取りする高性能ストレージネットワークです。
OSから見ると「ローカルディスク」として扱え、VMwareやHyper-Vなどの仮想化プラットフォームとの親和性が非常に高いです。
構成図(概念)
[Server A]──┐
[Server B]──┼─(FC/iSCSI)──[SAN Storage]
[Server C]──┘
特徴まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
構成のシンプルさ | △:FCスイッチやHBAなどの知識が必要 |
初期コスト | ×:機器・構築費ともに高め |
拡張性 | ◎:ストレージ仮想化や大規模構成も可能 |
共有性 | ◎:複数サーバでのLUN共有が可能 |
可用性 | ◎:マルチパス/RAID/クラスタ構成など高度に構築可 |
向いているケース
- 仮想化基盤(vSphere、Hyper-Vなど)
- データベース(Oracle、SQL Server)
- ミッションクリティカルな基幹系システム
SAN導入時の注意点
- ネットワーク機器(FCスイッチ)、HBAカードなどの専用機器が必要。
- 専門知識が求められるため、導入・運用にはエンジニアスキルが不可欠。
4. DAS/NAS/SANの比較表(まとめ)
項目 | DAS | NAS | SAN |
---|---|---|---|
接続方式 | 直接接続(SATA/SAS) | LAN(SMB/NFS) | iSCSI / Fibre Channel |
アクセス単位 | ブロック | ファイル | ブロック |
初期コスト | ◎(最も安価) | ○(中間) | ×(高額) |
共有性 | ×(単一サーバのみ) | ◎(複数ユーザー同時可) | ◎(マルチホスト可) |
運用の難易度 | ◎(容易) | ○(GUI操作で簡単) | ×(専門スキル必須) |
主な用途 | ローカル用途、小規模 | ファイル共有、バックアップ | 仮想化、DB、基幹業務 |
おわりに:方式を知ることで「最適な選定」ができる
「とりあえずNASで共有しよう」「RAIDで組めば安心」といった考えでは、ストレージのポテンシャルを最大限に活かすことはできません。
DAS・NAS・SANは、それぞれ得意な用途・適した規模・要求されるスキルセットが異なります。
まずはこの3方式の特徴を理解し、要件に応じた最適な方式を選べるようになることが、インフラ設計の第一歩です。