【第3回】RAIDの基本と冗長構成を理解しよう

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ストレージの選定・設計において、避けて通れないのが「RAID(Redundant Array of Independent Disks)」の理解です。

RAIDは複数の物理ディスクを束ねて、性能を向上させたり、冗長性を確保したりする技術です。

特に企業のストレージにおいて、可用性(Availability)を担保するための最初の構成要素となります。

本記事では、代表的なRAIDレベルとそのメリット・デメリットを、実務寄りの視点で整理します。

RAIDとは?:複数ディスクによる「まとめ技」

RAIDは、複数のディスクを組み合わせて、あたかも1台の大容量ディスクとして使う技術です。

RAID構成には大きく分けて以下の2つの目的があります。

  • 性能向上(スループットやIOPSの改善)
  • 冗長性確保(ディスク障害時にもデータ保護)

RAIDの種類

代表的なRAIDレベルは以下の通りです

RAIDレベル必要台数冗長性容量効率主な用途
RAID 02台〜×(なし)テスト、非重要データ
RAID 12台〜◎(1台)△(50%)小規模OS、管理系
RAID 53台〜○(1台)一般的な業務用
RAID 64台〜◎(2台)高可用性システム
RAID 104台〜◎(最大1台/ミラーごと)△(50%)高性能+冗長構成
RAID Z3等5台〜◎(3台)大容量バックアップ・アーカイブ

各RAIDレベルを詳しく解説

RAID 0(ストライピング)

スピード最重視。冗長性はゼロ。

  • データを複数ディスクに分割して書き込むことで高速化
  • 容量効率は最大(n台ならn倍)
  • 1台でも故障すると全データが失われる

向いているケース

  • テスト環境、キャッシュ領域など、一時的なデータ処理
  • 性能重視で、消えても構わないデータ

RAID 1(ミラーリング)

完全コピーによる冗長化。読み出し性能も◎。

  • 同じデータを2台のディスクに同時に書き込む
  • 書き込み性能は変わらないが、読み出しは高速化可能
  • 実効容量は半分(2台で1台分)

向いているケース

  • 小規模サーバやOS領域、管理系システムなど
  • シンプルに「止まらない構成」を組みたいとき

RAID 5(パリティ分散型)

業務用途の定番。性能・容量・冗長性のバランス型。

  • 3台以上で構成し、パリティ情報を分散保存
  • 任意の1台が壊れてもリビルド可能
  • 書き込み性能はパリティ演算の分だけ低下

向いているケース

  • ファイルサーバ、共有ストレージなど
  • 容量も冗長性も欲しい中小企業環境

RAID 6(ダブルパリティ)

2台同時故障に耐える、RAID 5の進化版。

  • 4台以上で構成し、2つのパリティを持つ
  • 高可用性が求められる用途に適す
  • 書き込み性能はさらに低下(パリティ演算が2倍)

向いているケース

  • 長時間のリビルドが予想される大容量環境
  • ビジネス継続性が最優先の業務システム

RAID 10(1+0構成)

RAID 1とRAID 0のいいとこ取り。高性能+高冗長。

  • 最低4台で構成(ミラー2セット+ストライピング)
  • 書き込みも読み出しも高速+冗長性も高い
  • 実効容量は50%(高コスト)

向いているケース

  • 仮想化基盤、データベースなどIO性能が求められる環境
  • RAID 5/6ではリビルド性能に不安がある場合

RAID トリプルパリティ(3重パリティ)

“3台同時故障”に耐える超冗長構成。

  • 主にZFS(RAID-Z3)や一部エンタープライズストレージ(NetAppなど)で実装される構成
  • RAID 6では2台までのディスク故障にしか耐えられないが、トリプルパリティでは3台同時障害に対応
  • 書き込み時に3重のパリティ演算が発生するため、性能面ではやや劣るが、可用性は最高クラス

向いているケース:

  • 数十TB〜PBクラスの大容量アーカイブ環境
  • リビルド時間が非常に長いケース(=障害が重なるリスクが高い)
  • ミッションクリティカルで絶対に止めたくない環境

実務でのRAID選定ポイント

RAIDレベルの選定は、「何を優先するか」に尽きます。

目的推奨RAID構成
性能重視(読み書き速度)RAID 10、RAID 0(非冗長)
容量効率重視RAID 5
高い冗長性が必要RAID 6、RAID 10
非常に高い冗長性が必要(3台同時故障耐性)RAID-Z3(ZFS)
OSディスクなど小規模RAID 1
テスト・一時領域RAID 0

RAID構成と「可用性」はイコールではない

RAIDはあくまでハードウェア障害に対する耐性を高める技術です。
しかし、以下のようなリスクには対応できません:

  • 誤操作による削除(→ バックアップが必要)
  • ファイルシステム障害(→ スナップショットや検証が必要)
  • RAIDコントローラー障害(→ 冗長構成 or 同一予備機が必要)

つまり、RAIDを組んでもバックアップは必須です。

RAIDは「可用性の一部」でしかないという認識が重要です。

リビルド時間と影響を考慮する

HDD 10TB × 1本をRAIDリビルドすると、数時間〜十数時間かかることがあります。
その間はパフォーマンスが落ちたり、2台目の障害=データ全損という事態も。

→ RAID 6やRAID 10が好まれる理由は、「リビルド中の安心感」にあります。

おわりに:RAIDの理解が設計力を底上げする

RAIDレベルの選定は、性能・可用性・コストのバランスを取るアートのようなものです。
決まった正解があるわけではありませんが、RAIDの性質を理解していれば、要件に応じた正しい判断ができるようになります。

次回は、RAIDを支えるハードウェア側の構成、つまり「ストレージ筐体」「コントローラー」「ディスク種別」などについて掘り下げていきます。