【第4回】ストレージの構成要素を知ろう

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前回はRAIDの基本と冗長構成について解説しましたが、実際のストレージシステムはRAIDだけでは成り立ちません

サーバと同じように、ストレージ製品にも「CPU的な役割を果たすコントローラー」「物理的にデータを保存するディスク」「それらを収容する筐体構造」など、複数の構成要素があります。

本記事では、業務用ストレージ製品を構成する主要コンポーネントとその役割について、インフラ設計・提案の観点から解説します。

コントローラー:ストレージの頭脳

ストレージ装置の中で最も重要なのが、コントローラー(Controller)です。
サーバでいうところの「CPU+チップセット」に近い存在で、以下のような役割を担っています。

主な役割

  • RAIDの制御(書き込み・読み出し、リビルド処理)
  • キャッシュメモリ管理
  • ホストとの通信制御(Fibre Channel / iSCSI / SASなど)
  • スナップショット・レプリケーションなどのデータサービスの実行
  • エラーログ記録、監視機能、フェイルオーバー制御

シングル vs デュアルコントローラー

種類特徴
シングルコントローラーコスト重視。障害時は停止するリスクあり
デュアルコントローラー高可用性構成。片系障害時も無停止継続可能(Active-ActiveやActive-Passive)

大規模な仮想化基盤やミッションクリティカル環境では、デュアル構成が必須です。

ベンダー例

ベンダーコントローラー名称例
HPEStorage Controller, RAID Smart Array
Dell EMCStorage Processor (SP)
NetAppHA Controller
LenovoThinkSystem RAID Controller
Synology/QNAP内蔵SATA/SAS Controller

ディスク種別:保存性能と寿命を左右する基盤

物理的にデータを保存するのはディスクです。

近年はHDDに加えてSSD、NVMeと多様化しており、用途に応じた選定が求められます

主なディスク種別

種別特徴向いている用途
SATA HDD安価・大容量・低速バックアップ、アーカイブ
SAS HDD高耐久・中速一般業務システム、ファイル共有
SSD(SATA)高速・高I/O仮想化環境、DBサーバ
SSD(SAS)高信頼・高耐久OLTP系DB、重要アプリ
NVMe SSD超高速(PCIe直結)データ分析、VDI、高速DB処理

RI(Read Intensive) vs MU(Mixed Use)

エンタープライズSSDでは、読み込み特化(RI)か混合用途(MU)かで製品が分かれます。

タイプ特徴用途
RI(Read Intensive)読み取り主体、高コスパ仮想化・VDIの読み込み専用など
MU(Mixed Use)読み書きバランス型一般業務、トランザクション処理

RIタイプを書き込み用途に誤用すると、急速な劣化の原因になります。

3. 筐体構造:拡張性と保守性の設計基盤

ストレージ装置のハードウェア的な構造も重要です。

どのくらいディスクが搭載できるか、拡張は可能か、保守は容易かといった点は、長期運用を見据えるうえで見逃せません。

主な筐体構造と仕様

項目説明
フォームファクタ1U, 2U, 4Uなど。搭載可能ドライブ数に影響
エンクロージャディスクを収容する拡張ユニット(SASやNVMeベース)
フロントアクセス前面からディスク交換可能かどうか
ホットスワップ電源オンのままディスク交換可能か
冗長電源・FAN高可用性のためのハードウェア二重化

エンクロージャと拡張性

多くのストレージ製品では、拡張用のディスクエンクロージャ(EBOD)を追加することで容量増設が可能です。

  • HPE MSA → D2700拡張エンクロージャ
  • Dell PowerVault → MD1400, MD1420 など

拡張の可否や最大搭載数は、事前にベンダー仕様を確認することが重要です。

実務での設計例と選定のポイント

ここでは、実際に構成を考える上での要点をまとめます。

仮想化環境を想定したストレージ構成(例)

  • 用途:VMware vSphere用のデータストア
  • 要件:高IO性能、データ保護、スナップショット対応
  • 構成案
    • デュアルコントローラー(Active-Active)
    • MUタイプのSSD(RAID 10構成)
    • 2U筐体 + 拡張エンクロージャあり
    • リモート管理・自動アラート対応

このように、要件から逆算してコントローラー/ディスク/筐体を組み合わせていくことが実務では重要です。

まとめ:ハード構成を理解すると選定の質が変わる

RAID構成だけでは見えにくいのが、コントローラーの制御能力やディスクの特性、筐体の制限と保守性です。

これらを理解していれば、要件に応じた最適なストレージ構成を検討できるようになります。

次回は、これらの構成をプロトコルレイヤーからどう接続し、どう見せるかという観点で、「iSCSI・Fibre Channel・SMB・NFS」といったアクセスプロトコルの違いについて解説していきます。