ページ内に広告が含まれる場合がございます。
前回はストレージ装置の構成要素（コントローラー・ディスク・筐体）について解説しましたが、それらのストレージがサーバとどう接続されるかによって、運用のしやすさやパフォーマンスは大きく異なります。
本記事では、インフラ設計の要となるストレージプロトコル—iSCSI、Fibre Channel、SMB、NFS—の違いと用途を、**「ブロックアクセス」と「ファイルアクセス」**という視点から整理します。
ストレージアクセス方式の2分類
まず、ストレージへのアクセス方式は大きく分けて2種類あります
| 種類 | 説明 | 対応プロトコル |
|---|---|---|
| ブロックアクセス | ディスクの「セクタ」単位で読み書き | iSCSI、Fibre Channel |
| ファイルアクセス | OSが提供する「ファイル」単位での操作 | SMB（CIFS）、NFS |
ブロックアクセスの特徴
- サーバOSから見ると「ローカルディスク」のように扱える
- ファイルシステムの管理はクライアント（OS）側
- VMのデータストア、DB用途に最適
ファイルアクセスの特徴
- ストレージ装置上にファイルシステムが存在
- サーバやクライアントは「ネットワークドライブ」として扱う
- ファイル共有や部門サーバに最適
ブロックアクセス：iSCSI vs Fibre Channel
iSCSI（Internet Small Computer Systems Interface）
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通信方式 | TCP/IP over Ethernet（ポート3260） |
| 導入難易度 | 比較的低い（NICで構成可能） |
| コスト | ◎（通常のネットワーク機器でOK） |
| パフォーマンス | ○（ネットワーク次第で変動あり） |
| 主な用途 | 仮想化基盤（VMware、Hyper-V）、小中規模SAN |
特徴
- 専用ハード不要で、既存ネットワークで導入しやすい
- VLANやQoSでチューニングすれば実用十分なパフォーマンス
- セキュリティ強化にはCHAP認証やIP制限も必要
Fibre Channel（FC）
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通信方式 | 独自プロトコル（FC-SW）、光ファイバ推奨 |
| 導入難易度 | 高め（FCスイッチ、HBAが必要） |
| コスト | ×（専用機器が必要） |
| パフォーマンス | ◎（低遅延・高スループット） |
| 主な用途 | ミッションクリティカルなSAN、DB、大規模仮想化 |
特徴
- 安定性とレイテンシの低さは随一
- FC専用スイッチ（Brocade/Emulex）やHBAカードが必要
- 昨今は**NVMe over FC（FC-NVMe）**も登場し、高速化が進んでいる
ファイルアクセス：SMB vs NFS
SMB（Server Message Block）
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プロトコル元 | Microsoft（CIFSの後継） |
| 通信方式 | TCP/IP over 445ポート |
| クライアント | Windows全般、macOS（一部制限あり） |
| 主な用途 | Windows環境のファイル共有、部門サーバ |
特徴
- Windowsドメイン（AD）連携と親和性が高い
- ファイル・フォルダ単位のアクセス制御が容易
- SMB 3.0以降では暗号化、マルチチャネルなど高機能化が進む
NFS（Network File System）
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プロトコル元 | UNIX系（Sun Microsystems） |
| 通信方式 | TCP/IP over 2049ポート |
| クライアント | Linux、UNIX、macOS、Windows（制限あり） |
| 主な用途 | UNIX/Linux系のファイル共有、Webサーバのストレージ |
特徴
- 軽量でUNIX系OSと高い親和性
- バッチ処理やスクリプトとの相性も良好
- NFSv4ではACL対応や認証機能も強化
プロトコル比較一覧表
| 比較項目 | iSCSI | FC | SMB | NFS |
|---|---|---|---|---|
| アクセス種別 | ブロック | ブロック | ファイル | ファイル |
| ネットワーク | イーサネット | 専用FC | イーサネット | イーサネット |
| 導入コスト | ○（安価） | ×（高額） | ○ | ○ |
| 導入難易度 | ○（中程度） | ×（高い） | ◎（簡単） | ◎（簡単） |
| パフォーマンス | ○ | ◎ | △ | △ |
| 主な用途 | 仮想化、SAN | DB、大規模SAN | ファイル共有 | Web系共有、UNIX環境 |
| クライアントOS | 汎用（全般） | 汎用（要HBA） | Windows系 | UNIX/Linux系 |
実務での使い分け方（シナリオ別）
| シナリオ | 推奨プロトコル |
|---|---|
| VMware ESXi上で複数VMを運用 | iSCSIまたはFC（SAN） |
| Windows部門でのファイル共有 | SMB（NAS） |
| LinuxベースのWebサーバ共有ストレージ | NFS（NAS） |
| データベース基盤（高信頼性） | FC（SAN） |
| 小規模バックアップ先の構成 | iSCSIまたはNFS |
まとめ：用途と環境に応じてプロトコルを選定する
ストレージのプロトコルは、「何に使うのか」「どんな環境か」「どの程度の性能・可用性が求められるか」によって選定が分かれます。
特に仮想化・DB用途にはブロックアクセス（iSCSI/FC）が強く推奨される一方、ファイルサーバやユーザ共有にはNAS系（SMB/NFS）が有効です。
次回は、これらの接続方式を1つに統合する発想として登場したユニファイドストレージ（NAS+SAN対応）について詳しく解説していきます。