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これまでの記事で、ストレージの接続方式として「NAS(ファイルアクセス)」と「SAN(ブロックアクセス)」の違いを学びました。
ところが実務の現場では、「ファイル共有にも使いたいが、仮想化のデータストアとしても使いたい」というような、両方の用途が混在するケースが多く見られます。
そこで登場するのが、ユニファイドストレージ(Unified Storage)です。
本記事では、その仕組みと特徴、設計・導入時の注意点を解説します。
ユニファイドストレージとは?
ユニファイドストレージとは、1つのストレージ筐体でNASとSANの両方のプロトコルを提供できる製品のことです。
特徴 | 内容 |
---|---|
対応プロトコル | SMB/NFS(NAS) + iSCSI/FC(SAN) |
利用形態 | ファイル共有とブロックデバイスの両立 |
代表製品 | NetApp FASシリーズ、Dell Unity XT、HPE Alletra 5000/6000 など |
このように、1台で多用途に対応できるため、運用負荷の軽減や機器集約によるコスト削減が期待されます。
従来型との違い
項目 | 従来型ストレージ | ユニファイドストレージ |
---|---|---|
構成方式 | NAS用とSAN用で別構成 | 1台でNAS+SAN両対応 |
ファイル/ブロックの切り分け | 製品単位で分離 | 同一筐体で共存(論理分割) |
管理インターフェース | それぞれ別 | 一元的なGUI/API |
拡張性・柔軟性 | 限定的 | 複数用途へ柔軟に展開可能 |
主な製品例と構成イメージ
Dell Unity XT
- 本格的なユニファイド設計(ブロック+ファイル)
- VMware連携に強く、スナップショット/レプリケーションも豊富
- GUIでLUN・共有フォルダの両方を管理
NetApp FASシリーズ
- ONTAP OSベースで、SMB/NFS/iSCSI/FCすべてを単一OSで提供
- ファイル共有と仮想化基盤を同時サポート
- 柔軟なQoS制御とスナップショットが強み
メリットと注意点
メリット
項目 | 内容 |
---|---|
機器集約 | NASとSANを1台でまかなえる |
管理の一元化 | GUI・APIで統合管理が可能 |
柔軟なリソース配分 | 容量や帯域を動的に配分 |
将来の拡張性 | 用途追加が容易 |
注意点
項目 | 内容 |
---|---|
パフォーマンス競合 | 同一筐体でファイルとブロックを共有するとI/Oが競合する可能性あり |
セキュリティとACL設計 | NASとSANでアクセス制御方式が異なるため、ポリシーの設計に注意 |
製品によって実装が異なる | “ユニファイド”の定義・性能・制限がベンダーにより差がある |
実務での設計パターン例
パターン①:小規模拠点の集約ストレージ
- ファイルサーバ(SMB)+仮想化データストア(iSCSI)
- 1筐体で完結する構成 → Unity XTやAlletraが有効
パターン②:部門単位の分散配置
- 開発環境(NFS)+バックアップターゲット(iSCSI)
- アクセス制御と帯域制御を明確にすることが肝
ファイルとブロックを使い分ける視点
用途 | 推奨プロトコル |
---|---|
仮想化・DB・メールサーバ | iSCSI / FC(ブロック) |
ファイル共有・ホームディレクトリ | SMB / NFS(ファイル) |
ユニファイドストレージならこれらを論理的に分割して提供可能で、運用を統一しつつ最適化できます。
まとめ:ユニファイド化=万能ではなく「整理された統合」
ユニファイドストレージは、複数用途の混在に対応できる柔軟性と、機器や管理コストの削減という大きなメリットを持ちます。
しかし、すべての環境で最適解というわけではなく、ワークロードの分離設計・I/O特性の把握・セキュリティポリシーの整理が前提になります。
「とりあえず全部ユニファイドに統合すればいい」という発想ではなく、あくまで整理された形での統合を目指すことが肝要です。