【第7回】最新ストレージトレンドを押さえる

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インフラの世界で「進化が遅そう」と思われがちなストレージ領域。

しかし近年では、NVMeを活用した超高速I/O、ストレージ仮想化、ソフトウェア定義による柔軟な運用など、まったく別次元の設計が求められつつあります。

本記事では、最新のストレージトレンドを理解する上で欠かせない3つのキーワード—NVMe、オールフラッシュアレイ(AFA)、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)—を中心に解説します。

NVMeとは?:HDD世代とは桁違いの高速インタフェース

NVMe(Non-Volatile Memory Express)は、従来のSATA/SASではなく、PCI Express(PCIe)バスに直接接続するためのストレージ用プロトコルです。

NVMeの主な特徴

特徴説明
超高速アクセスPCIe経由で低レイテンシ・高帯域を実現(数十万IOPS〜)
並列処理に最適マルチキュー対応。多コアCPUとの親和性が高い
DRAM並みのレスポンス特にランダムアクセスの性能が段違い
スケーラビリティNVMe-oF(Over Fabrics)でSAN環境にも拡張可能

NVMeとSAS/SATAの比較

項目SATA SSDSAS SSDNVMe SSD
接続方式SATA(6Gbps)SAS(12Gbps)PCIe(最大64Gbps)
最大帯域約550MB/s約1,000MB/s最大7,000MB/s以上
レイテンシ中程度低め非常に低い
価格帯安価中価格帯やや高価(下落傾向)

NVMeは今やハイエンド環境だけでなく、一般的な仮想化ホストやVDI基盤でも主流になりつつある技術です。

オールフラッシュアレイ(AFA):HDDを使わない構成

AFAとは、すべてのディスクをSSD(主にNVMeやSAS SSD)で構成したストレージアレイのことを指します。

特徴
  • 機械的なHDDを一切使用しないため、I/O性能が段違い
  • RAID構成・キャッシュ制御もフラッシュ専用に最適化されている
  • 消費電力やラック占有率が低く、データセンター効率が向上

メリットと導入効果

メリット説明
処理速度の劇的向上DB、VDI、仮想化にて大幅なレスポンス改善
可用性・耐障害性の向上RAID再構成が高速、劣化予測が正確
運用負荷の軽減ファン、電源、スペースの省力化

代表製品

メーカー製品名
Pure StorageFlashArray X、Cなど
HPEAlletra 6000/9000
Dell EMCPowerStore、XtremIO
NetAppAFFシリーズ

ソフトウェア定義ストレージ(SDS):物理依存からの脱却

SDS(Software Defined Storage)は、ハードウェアではなくソフトウェアによってストレージの制御・運用を行う仕組みです。

SDSの特徴
  • RAID・レプリケーション・スナップショットなどをソフトウェアで実現
  • サーバ筐体+汎用ディスクを使って柔軟な構成が可能
  • 仮想化やクラウドと高い親和性を持つ

SDSの代表例

製品名ベンダー備考
VMware vSANVMwarevSphereとの統合が強み
Cephオープンソース高スケーラビリティ、Red Hat Storage基盤
HPE SimpliVityHPE重複排除・バックアップに強いHCI製品
Nutanix AOSNutanixハイパーコンバージド+SDSの代表格

SDSのメリットと注意点

メリット注意点
ハードベンダーに縛られない設計・検証に高度な知識が必要
拡張性が柔軟サイジングやI/O設計のミスが命取り
仮想化・クラウドとの連携GUIよりもCLI/コードによる運用が中心

最新トレンドを組み合わせた構成例

シナリオ構成案
高速DB基盤AFA(オールNVMe)+FC接続(NVMe-oF)
クラウド連携前提の仮想基盤SDS(vSAN/Nutanix)+ハイブリッドクラウドAPI
小規模でも高性能なファイル共有NAS+NVMeキャッシュ+圧縮・重複排除

まとめ:トレンドは“選択肢”を増やす

NVMeのような物理的な進化、AFAのような構成思想の進化、そしてSDSのようなソフトウェア化の進化

これらの潮流は、「どれが正解か」ではなく、「目的に応じて選択肢を持てる時代になった」ということを意味します。

次回は、これら最新技術も含めた主要ベンダーのストレージ製品を横断的に比較し、どのようなシーンに向いているかを紹介していきます。