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インフラの世界で「進化が遅そう」と思われがちなストレージ領域。
しかし近年では、NVMeを活用した超高速I/O、ストレージ仮想化、ソフトウェア定義による柔軟な運用など、まったく別次元の設計が求められつつあります。
本記事では、最新のストレージトレンドを理解する上で欠かせない3つのキーワード—NVMe、オールフラッシュアレイ(AFA)、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)—を中心に解説します。
NVMeとは?:HDD世代とは桁違いの高速インタフェース
NVMe(Non-Volatile Memory Express)は、従来のSATA/SASではなく、PCI Express(PCIe)バスに直接接続するためのストレージ用プロトコルです。
NVMeの主な特徴
特徴 | 説明 |
---|---|
超高速アクセス | PCIe経由で低レイテンシ・高帯域を実現(数十万IOPS〜) |
並列処理に最適 | マルチキュー対応。多コアCPUとの親和性が高い |
DRAM並みのレスポンス | 特にランダムアクセスの性能が段違い |
スケーラビリティ | NVMe-oF(Over Fabrics)でSAN環境にも拡張可能 |
NVMeとSAS/SATAの比較
項目 | SATA SSD | SAS SSD | NVMe SSD |
---|---|---|---|
接続方式 | SATA(6Gbps) | SAS(12Gbps) | PCIe(最大64Gbps) |
最大帯域 | 約550MB/s | 約1,000MB/s | 最大7,000MB/s以上 |
レイテンシ | 中程度 | 低め | 非常に低い |
価格帯 | 安価 | 中価格帯 | やや高価(下落傾向) |
NVMeは今やハイエンド環境だけでなく、一般的な仮想化ホストやVDI基盤でも主流になりつつある技術です。
オールフラッシュアレイ(AFA):HDDを使わない構成
AFAとは、すべてのディスクをSSD(主にNVMeやSAS SSD)で構成したストレージアレイのことを指します。
特徴
- 機械的なHDDを一切使用しないため、I/O性能が段違い
- RAID構成・キャッシュ制御もフラッシュ専用に最適化されている
- 消費電力やラック占有率が低く、データセンター効率が向上
メリットと導入効果
メリット | 説明 |
---|---|
処理速度の劇的向上 | DB、VDI、仮想化にて大幅なレスポンス改善 |
可用性・耐障害性の向上 | RAID再構成が高速、劣化予測が正確 |
運用負荷の軽減 | ファン、電源、スペースの省力化 |
代表製品
メーカー | 製品名 |
---|---|
Pure Storage | FlashArray X、Cなど |
HPE | Alletra 6000/9000 |
Dell EMC | PowerStore、XtremIO |
NetApp | AFFシリーズ |
ソフトウェア定義ストレージ(SDS):物理依存からの脱却
SDS(Software Defined Storage)は、ハードウェアではなくソフトウェアによってストレージの制御・運用を行う仕組みです。
SDSの特徴
- RAID・レプリケーション・スナップショットなどをソフトウェアで実現
- サーバ筐体+汎用ディスクを使って柔軟な構成が可能
- 仮想化やクラウドと高い親和性を持つ
SDSの代表例
製品名 | ベンダー | 備考 |
---|---|---|
VMware vSAN | VMware | vSphereとの統合が強み |
Ceph | オープンソース | 高スケーラビリティ、Red Hat Storage基盤 |
HPE SimpliVity | HPE | 重複排除・バックアップに強いHCI製品 |
Nutanix AOS | Nutanix | ハイパーコンバージド+SDSの代表格 |
SDSのメリットと注意点
メリット | 注意点 |
---|---|
ハードベンダーに縛られない | 設計・検証に高度な知識が必要 |
拡張性が柔軟 | サイジングやI/O設計のミスが命取り |
仮想化・クラウドとの連携 | GUIよりもCLI/コードによる運用が中心 |
最新トレンドを組み合わせた構成例
シナリオ | 構成案 |
---|---|
高速DB基盤 | AFA(オールNVMe)+FC接続(NVMe-oF) |
クラウド連携前提の仮想基盤 | SDS(vSAN/Nutanix)+ハイブリッドクラウドAPI |
小規模でも高性能なファイル共有 | NAS+NVMeキャッシュ+圧縮・重複排除 |
まとめ:トレンドは“選択肢”を増やす
NVMeのような物理的な進化、AFAのような構成思想の進化、そしてSDSのようなソフトウェア化の進化。
これらの潮流は、「どれが正解か」ではなく、「目的に応じて選択肢を持てる時代になった」ということを意味します。
次回は、これら最新技術も含めた主要ベンダーのストレージ製品を横断的に比較し、どのようなシーンに向いているかを紹介していきます。