ストレージ製品は、単に容量と速度を比較して選べるものではありません。
- 仮想化基盤向けか
- バックアップ用途か
- エンタープライズのDB環境か
こうした用途や組織規模、予算、管理ポリシーによって、最適な製品は大きく変わります。
今回は主要ストレージベンダーの代表的な製品ラインを、目的別に比較・整理していきます。
HPE(Hewlett Packard Enterprise)
Alletraシリーズ
モデル | 主な用途 | 特徴 |
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Alletra 5000 | SMB〜中堅向けSAN構成 | MSAの後継。iSCSI中心、GUI管理に優れる |
Alletra 6000 | 仮想化/SaaS基盤 | Nimble由来、CASLベース。重複排除、スナップショットが強い |
Alletra 9000 | ハイエンドDB、基幹系 | Primera由来。NVMe対応、FC・iSCSI両対応 |
▍MSAシリーズ(旧製品/まだ残存)
モデル | 主な用途 |
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MSA 2062 | 中小規模のSAN用途。コスト重視。 |
Dell Technologies
PowerStoreシリーズ
モデル | 主な用途 | 特徴 |
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PowerStore T | ファイル+ブロック両対応(ユニファイド) | NVMe対応。アプリケーション実行機能あり(AppsON) |
PowerStore X | 仮想マシン内蔵型ストレージ | VMware ESXi搭載で、ストレージ上にVMを実行可能 |
Unity XTシリーズ
主な用途 | 備考 |
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オンプレNAS/SANの統合環境 | SMB/NFS/iSCSI対応のユニファイド型 |
PowerVault
モデル | 主な用途 |
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ME5など | DAS〜エントリSAN用途。中小企業向け |
NetApp
AFFシリーズ(All Flash FAS)
用途 | 特徴 |
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仮想化・DB・VDIなど高速I/O | ONTAP OS。SMB/NFS/iSCSI/FCすべて対応。重複排除、QoS、Snapshotなどが高機能 |
FASシリーズ(HDD+SSDハイブリッド)
用途 | 特徴 |
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ファイルサーバ、汎用NAS | FlexGroupによる分散ファイル構成も可能。DR・バックアップ向けにも強い |
Seagate
SeagateはHDDベンダーのイメージが強いですが、近年はエンタープライズ向けのストレージアプライアンス(エンクロージャ・NAS・SDS対応)も積極的に展開しています。
Exosシリーズ(高密度エンタープライズ向け)
製品名 | 特徴 |
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Exos Xシリーズ | 2U〜5Uで高密度(最大84ベイ)。SAS対応のJBOD/エンクロージャ。 |
Exos APシリーズ | ストレージ+CPUを統合したアプライアンス型。CephベースのSDSにも対応。 |
用途:
- 大規模バックアップ・アーカイブ(低コスト/高密度)
- オブジェクトストレージ基盤、分散ファイルシステムのデータノードとして
Nytroシリーズ(SSDライン)
製品名 | 特徴 |
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Nytro 3000 | エンタープライズSAS SSD。高耐久性、低レイテンシ。 |
Nytro 5000/7000 | NVMe SSD。特に高速I/O環境(DB、AI処理)に向く。 |
- AFA構成(PureなどのベンダーにOEM供給も)
- 独自SDS構成でのNVMe Tier用途
その他の代表的製品
Pure Storage(オールフラッシュ特化)
製品名 | 特徴 |
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FlashArray | 高速・省電力・高可用性。GUI/CLI/APIいずれも強力 |
FlashBlade | オブジェクトストレージ+ファイルアクセスの統合構成が可能 |
Lenovo(ThinkSystemシリーズ)
- 自社ストレージも展開しつつ、NetAppとの共同開発モデルも提供(DMシリーズなど)
Synology/QNAP(中小規模NAS)
製品名 | 特徴 |
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Synology DS/RS | GUIが使いやすく、SOHO向けバックアップや共有に最適 |
QNAP TS/TVS | 仮想化・監視用途の機能が充実、M.2キャッシュ対応 |
用途別おすすめモデル一覧(横断表)
用途 | 製品候補例(抜粋) |
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仮想化(vSphere/Hyper-V) | HPE Alletra 6000、Dell PowerStore、NetApp AFF |
ファイル共有(SMB/NFS) | Unity XT、FAS、Synology/QNAP |
高速DB・基幹業務 | Alletra 9000、PowerStore、Pure FlashArray、Seagate Nytro |
中小規模オフィスのSAN構成 | MSA 2062、PowerVault ME5、Seagate Exos AP |
大規模バックアップ/アーカイブ | Seagate Exos X、NetApp FAS、HPE Alletra 5000 |
オールフラッシュ必須環境 | Pure FlashArray、Dell PowerStore、Seagate Nytro |
製品選定のチェックリスト
選定に際しては、以下の観点を明確にしましょう:
項目 | 検討ポイント例 |
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接続方式 | iSCSI / FC / SMB / NFS |
容量・拡張性 | 初期容量+拡張計画を明確に |
IOPS・スループット | DBかファイルか、読み書き傾向 |
可用性・冗長性 | デュアルコントローラー/RAID/冗長電源 |
管理性 | GUI・APIの充実度、モニタリング機能 |
ライセンス費用 | 機能追加にライセンスが必要な場合も多い |
まとめ:製品名ではなく“用途”から逆算する
ストレージ製品は「HPE派だから」「NetAppが好きだから」といった選び方ではなく、求める要件から逆算して選ぶことが基本です。
また、仮想化/ファイル共有/高速DB/バックアップ/クラウド連携といった用途ごとに、得意とする製品は明確に分かれています。
次回は、こうした製品を具体的な業務シナリオにあてはめて「要件定義→製品選定」までを実践的に解説します。