【第8回】主要ベンダー別ストレージ製品紹介

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ストレージ製品は、単に容量と速度を比較して選べるものではありません。

  • 仮想化基盤向けか
  • バックアップ用途か
  • エンタープライズのDB環境か

こうした用途や組織規模、予算、管理ポリシーによって、最適な製品は大きく変わります。

今回は主要ストレージベンダーの代表的な製品ラインを、目的別に比較・整理していきます。

HPE(Hewlett Packard Enterprise)

Alletraシリーズ

モデル主な用途特徴
Alletra 5000SMB〜中堅向けSAN構成MSAの後継。iSCSI中心、GUI管理に優れる
Alletra 6000仮想化/SaaS基盤Nimble由来、CASLベース。重複排除、スナップショットが強い
Alletra 9000ハイエンドDB、基幹系Primera由来。NVMe対応、FC・iSCSI両対応

▍MSAシリーズ(旧製品/まだ残存)

モデル主な用途
MSA 2062中小規模のSAN用途。コスト重視。

Dell Technologies

PowerStoreシリーズ

モデル主な用途特徴
PowerStore Tファイル+ブロック両対応(ユニファイド)NVMe対応。アプリケーション実行機能あり(AppsON)
PowerStore X仮想マシン内蔵型ストレージVMware ESXi搭載で、ストレージ上にVMを実行可能

Unity XTシリーズ

主な用途備考
オンプレNAS/SANの統合環境SMB/NFS/iSCSI対応のユニファイド型

PowerVault

モデル主な用途
ME5などDAS〜エントリSAN用途。中小企業向け

NetApp

AFFシリーズ(All Flash FAS)

用途特徴
仮想化・DB・VDIなど高速I/OONTAP OS。SMB/NFS/iSCSI/FCすべて対応。重複排除、QoS、Snapshotなどが高機能

FASシリーズ(HDD+SSDハイブリッド)

用途特徴
ファイルサーバ、汎用NASFlexGroupによる分散ファイル構成も可能。DR・バックアップ向けにも強い

Seagate

SeagateはHDDベンダーのイメージが強いですが、近年はエンタープライズ向けのストレージアプライアンス(エンクロージャ・NAS・SDS対応)も積極的に展開しています。

Exosシリーズ(高密度エンタープライズ向け)

製品名特徴
Exos Xシリーズ2U〜5Uで高密度(最大84ベイ)。SAS対応のJBOD/エンクロージャ。
Exos APシリーズストレージ+CPUを統合したアプライアンス型。CephベースのSDSにも対応。

用途:

  • 大規模バックアップ・アーカイブ(低コスト/高密度)
  • オブジェクトストレージ基盤、分散ファイルシステムのデータノードとして

Nytroシリーズ(SSDライン)

製品名特徴
Nytro 3000エンタープライズSAS SSD。高耐久性、低レイテンシ。
Nytro 5000/7000NVMe SSD。特に高速I/O環境(DB、AI処理)に向く。
用途
  • AFA構成(PureなどのベンダーにOEM供給も)
  • 独自SDS構成でのNVMe Tier用途

その他の代表的製品

Pure Storage(オールフラッシュ特化)

製品名特徴
FlashArray高速・省電力・高可用性。GUI/CLI/APIいずれも強力
FlashBladeオブジェクトストレージ+ファイルアクセスの統合構成が可能

Lenovo(ThinkSystemシリーズ)

  • 自社ストレージも展開しつつ、NetAppとの共同開発モデルも提供(DMシリーズなど)

Synology/QNAP(中小規模NAS)

製品名特徴
Synology DS/RSGUIが使いやすく、SOHO向けバックアップや共有に最適
QNAP TS/TVS仮想化・監視用途の機能が充実、M.2キャッシュ対応

用途別おすすめモデル一覧(横断表)

用途製品候補例(抜粋)
仮想化(vSphere/Hyper-V)HPE Alletra 6000、Dell PowerStore、NetApp AFF
ファイル共有(SMB/NFS)Unity XT、FAS、Synology/QNAP
高速DB・基幹業務Alletra 9000、PowerStore、Pure FlashArray、Seagate Nytro
中小規模オフィスのSAN構成MSA 2062、PowerVault ME5、Seagate Exos AP
大規模バックアップ/アーカイブSeagate Exos X、NetApp FAS、HPE Alletra 5000
オールフラッシュ必須環境Pure FlashArray、Dell PowerStore、Seagate Nytro

製品選定のチェックリスト

選定に際しては、以下の観点を明確にしましょう:

項目検討ポイント例
接続方式iSCSI / FC / SMB / NFS
容量・拡張性初期容量+拡張計画を明確に
IOPS・スループットDBかファイルか、読み書き傾向
可用性・冗長性デュアルコントローラー/RAID/冗長電源
管理性GUI・APIの充実度、モニタリング機能
ライセンス費用機能追加にライセンスが必要な場合も多い

まとめ:製品名ではなく“用途”から逆算する

ストレージ製品は「HPE派だから」「NetAppが好きだから」といった選び方ではなく、求める要件から逆算して選ぶことが基本です。

また、仮想化/ファイル共有/高速DB/バックアップ/クラウド連携といった用途ごとに、得意とする製品は明確に分かれています。

次回は、こうした製品を具体的な業務シナリオにあてはめて「要件定義→製品選定」までを実践的に解説します。