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ストレージ製品は種類が豊富で、各社が多様なモデルを展開しています。
しかし実務では「どの製品が高性能か」よりも、「この用途に合う構成は何か?」という視点が最も重要です。
本記事では、インフラの代表的な利用シナリオごとに、目的に沿ったストレージの選定例・構成案を提示します。
これまで学んだ構成要素・プロトコル・製品特性を統合する「実践編」としてご活用ください。
仮想化基盤(VMware vSphere / Hyper-V)
要件例
- データストアとして高IOPS・低レイテンシが必要
- 仮想マシン数が多く、同時アクセスが集中
- 冗長性や可用性を重視(HA/FT構成)
構成ポイント
項目 | 推奨内容 |
---|---|
アクセス方式 | ブロックアクセス(iSCSIまたはFC) |
ストレージ種別 | オールフラッシュ(NVMeまたはSAS SSD) |
RAID構成 | RAID 10またはRAID 6(高速リビルド) |
接続方式 | マルチパス+冗長コントローラー |
機能面 | VAAI対応、スナップショット、vVol対応推奨 |
推奨製品
- HPE Alletra 6000
- Dell PowerStore T
- NetApp AFF Cシリーズ
- Pure FlashArray X
- Seagate Nytro SSD+Ceph構成(SDS)
バックアップ・アーカイブ用ストレージ
要件例
- 容量優先。コストパフォーマンス重視
- 書き込み頻度は高いが、読み出し頻度は低め
- データ保持期間は中長期(1年~5年)
構成ポイント
項目 | 推奨内容 |
---|---|
アクセス方式 | ファイル(NFS/SMB)またはブロック(iSCSI) |
ストレージ種別 | NL-SASまたはSATA HDD |
RAID構成 | RAID 6またはRAID Z3(大容量向け) |
接続方式 | 1GbEまたは低コストの10GbE |
機能面 | スナップショット、重複排除(可能なら) |
推奨製品
- Seagate Exos Xシリーズ(84ベイなど)
- HPE Alletra 5000
- NetApp FASシリーズ
- Dell PowerVault ME5
映像編集・メディア制作環境
要件例
- 4K/8K素材を高速に読み書き
- 複数人が同時編集 or プロジェクト共有
- Mac/Windows混在環境での共有
構成ポイント
項目 | 推奨内容 |
---|---|
アクセス方式 | ファイルアクセス(SMB/NFS) |
ストレージ種別 | SSDキャッシュ+大容量HDD(またはAFA) |
RAID構成 | RAID 5 or 6(保護重視)+読み書き高速化設計 |
接続方式 | 10GbEまたはThunderbolt対応NAS |
機能面 | 同時アクセス最適化、バージョン管理(スナップショット) |
推奨製品
- Synology DS/RSシリーズ(10GbEモデル)
- QNAP TVSシリーズ(M.2 SSDキャッシュ対応)
- Dell Unity XT
- NetApp FAS(FlexGroup構成)
中小企業の社内ファイルサーバ
要件例
- Windows・Mac混在での社内ファイル共有
- アクセス制御(AD/LDAP)とバックアップ機能
- 将来の容量拡張性も考慮
構成ポイント
項目 | 推奨内容 |
---|---|
アクセス方式 | SMB(+必要に応じてNFS) |
ストレージ種別 | ミックス(SSD+HDD) |
RAID構成 | RAID 6またはRAID 10 |
接続方式 | 1GbEまたは10GbE(中〜大規模) |
機能面 | スナップショット、リモートバックアップ連携 |
推奨製品
- Synology DS1823xs+
- QNAP TS-h973AX
- NetApp FAS2700シリーズ
- Dell PowerVault ME5(簡易NAS化)
ハイブリッドクラウド連携環境
要件例
- オンプレとクラウドの間でデータを同期・レプリケーション
- APIベースでの管理・自動化
- 柔軟なスケーラビリティ
構成ポイント
項目 | 推奨内容 |
---|---|
アクセス方式 | ファイル+オブジェクト or ブロック+クラウドAPI |
ストレージ種別 | AFA+クラウド連携機能(Cloud Tieringなど) |
RAID構成 | RAID 6 / RAID 10+スナップショット |
機能面 | REST API、Snapshot to Cloud、DR Site構成対応 |
推奨製品
- NetApp ONTAP+Cloud Volumes ONTAP
- HPE Alletra+GreenLake
- Dell PowerStore+CloudIQ
- Ceph+Rook+S3互換連携構成(SDS系)
まとめ:設計の出発点は「用途」から
ストレージ選定は「製品から選ぶ」のではなく、「用途→要件→構成→製品」というステップで考えることで、無駄なく・トラブルなく運用できます。
加えて、RAIDやプロトコルだけでなく、可用性設計・運用管理性・スケーラビリティを含めて選ぶことが、今後の運用負荷を大きく左右します。
次回(最終回)は、これまで学んだ要素をベースに、バックアップとアーカイブの設計視点について解説します。