サーバーやネットワーク機器を効率的に管理・設置するために欠かせない存在が「19インチラック」です。
データセンターやオフィスのサーバールームで見かける大きな金属の筐体のほとんどがこれに該当します。
この記事では、19インチラックの基本から、構造、選定のポイント、代表的な製品例まで、これから導入を検討する人にも分かりやすく解説します。
19インチラックとは?
「19インチラック」という名称は、ラック前面のマウントレール幅に由来しています。
正確には482.6mm(=19インチ)であり、このサイズに準拠した機器が世界中で広く流通しています。
この規格は米国のEIA(Electronic Industries Alliance)が定めたもので、「EIA-310規格」として知られています。
IT機器を規格に沿ってマウントできるため、異なるメーカーの機器であっても、ラック内に統一的に格納・配線できるメリットがあります。
ラックのサイズと構造
19インチラックは、高さや奥行き、開放性の有無によってさまざまなバリエーションがあります。特に意識しておきたいのが、以下の3点です。
1. 高さ(U単位)
ラックの高さは「U(ユニット)」で表され、1Uは44.45mmです。たとえば42Uラックであれば、高さは約1867mm。一般的なラックサーバーが1Uまたは2Uであることを考えると、収納容量の目安になります。
2. 奥行き
奥行きは設置機器や設置スペースによって異なり、600mm・800mm・1000mmなどのバリエーションがあります。大型サーバーやUPSを設置する場合は、奥行きにも余裕を持たせる必要があります。
3. 構造タイプ
主に以下の2種類があります。
- オープンタイプ(フレーム型):軽量で通気性が良く、構築作業がしやすい。主にラボや検証環境で使用。
- クローズドタイプ(密閉型):扉や側面パネルが付き、埃・防音・盗難対策が可能。本番環境やデータセンター向け。
主な用途と設置例
19インチラックは、単にサーバーを格納するだけでなく、さまざまなITインフラ機器を整理して収容するために活用されます。
よく搭載される機器の例
- ラックマウントサーバー(1U/2Uなど)
- ネットワークスイッチやルーター
- UPS(無停電電源装置)
- ストレージ機器(NASやSAN)
- ケーブル管理パネル、パッチパネル
- KVMスイッチやLCDドロワー
また、設置場所としては、以下のような環境が想定されます。
- 自社オフィスのサーバールーム
- データセンター(オンプレミス構築)
- 工場内の制御システム収納用スペース
- 中小企業のスモールオフィス(SOHO)
ラック選定のポイント
19インチラックを選ぶ際には、以下の観点を押さえておくと失敗を防げます。
- 収納予定機器のサイズと重量を確認
ラックに搭載する予定の機器が「何Uサイズ」かを把握し、余裕をもって高さを選びましょう。また、UPSなど重量機器を搭載する場合は耐荷重も重要です。 - 冷却とエアフローの設計
ラックマウント機器は前面吸気・背面排気が基本です。冷却効率を上げるには、ファン付き天板や空気遮断パネルの導入、サーバーの搭載順も意識すべきです。 - 電源・配線まわりの確保
PDU(電源分配ユニット)の搭載場所や、ケーブルマネジメントアームの設置スペースも検討しましょう。 - 物理的制約と設置環境
ラックの幅・奥行・高さだけでなく、搬入経路や床の耐荷重、メンテナンス時の前後スペースも見逃せません。
有名メーカーと製品シリーズの一例
日本国内外には、多くのラックメーカーがありますが、以下はその代表例です。
- APC by Schneider Electric:NetShelter SXシリーズが有名。豊富なオプションと信頼性が強み。
- HPE(Hewlett Packard Enterprise):ProLiantサーバーとの相性を考慮したG2ラックが人気。
- DELL Technologies:PowerEdgeシリーズとの親和性が高いPowerEdge 4210/4220。
- サンワサプライ/タカチ電機工業:小規模オフィスや制御盤用途向けに柔軟なサイズ展開。
よくある疑問と注意点
1Uサイズのサーバーであれば最大42台搭載可能ですが、PDUや配線スペース、冷却を考慮すると、実際には6〜8U分は余裕を取るのが一般的です。
1U/2Uの機器はネジ固定で十分ですが、重量のある機器や頻繁に抜き差しする場合には、スライドレールや固定棚の導入がおすすめです。
まとめ
19インチラックは、ITインフラ設計において単なる「収納ボックス」ではありません。
機器の保守性・拡張性・冷却効率を左右する、極めて重要な要素です。ラックの仕様と設置環境、そして実際の運用を見越した計画を立てることで、より安定したシステム運用が実現できます。
これからラック導入を検討されている方は、ぜひ今回のポイントを参考にしてみてください。