vSAN Quick Sizerの使い方とチェックするべき3つの項目

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今回はvSAN Quick Sizerの使い方と、チェックするべき3つの項目というテーマで解説していきます。

始めに、以下VMware vSAN Sizerの登録が必要になります。

VMware vSAN Sizer

ログインすると以下画面になります。

右の「vSAN ReadyNode Sizer Quick Sizer」をクリック

右側のvSAN ReadyNode Sizer Quick Sizerをクリックします。

Sizerの設定画面が出てきますので、設定方法について解説していきます。

vSAN Architectureには、vSAN ESAvSAN OSAに分かれています。

vSAN Architecture(vSAN ESA / vSAN OSA)とは

vSAN OSA(Original Storage Architecture)

従来のアーキテクチャで、ハイブリッド構成(HDD + SSD)とオールフラッシュ構成(SSDのみ)の両方をサポートしていました。

  • キャッシュ層と容量層に分かれており、キャッシュデバイスは読み書きキャッシュとして機能。
  • 容量層は主にHDDまたはSSDで構成される。
  • ディスクグループ構成が必要(1つのキャッシュデバイス+最大7つの容量デバイス)
  • レイテンシがSSDの性能に依存しやすい。
  • データパスは複雑で、仮想マシンから物理デバイスまでに複数のレイヤーを経由。

vSAN ESA(Express Storage Architecture)

vSAN 8で導入された新アーキテクチャで高性能なオールフラッシュ(特にNVMe)環境向けに最適化されています。

  • ディスクグループの概念を廃止。すべてのデバイスがフラットなストレージプールに統合。
  • 書き込み・読み取りパスがシンプルかつ高速化
  • 新しいログ構造のファイルシステム(LFS:Log-Structured File System)を使用。
  • 圧縮は常時オン(可逆圧縮)で、パフォーマンスへの影響が少ない。
  • オブジェクトあたりのデータ配置がより柔軟(例えば、1つのデバイス障害でも影響を最小限に抑える構成など)。
  • 必須条件:vSAN ESA対応のハードウェア(vSAN ESA ReadyNodes)

比較表(概要)

比較項目vSAN OSAvSAN ESA
導入バージョンvSAN 5.5〜vSAN 8〜
対応構成ハイブリッド/オールフラッシュオールフラッシュ(NVMe推奨)
ディスク構成ディスクグループありディスクグループなし(フラット)
書き込みパス複雑(多段階)単純化され高速
圧縮オプションデフォルトで有効
パフォーマンス最適化限定的高速でモダンな設計
対応ハードウェア幅広い(ただし性能は構成次第)ESA ReadyNode必須

それでは、それぞれのArchitectureの設定方法について解説します。

vSAN ESAのサイジング設定

左メニューのvSAN Architectureのチェックボックスを「vSAN ESA」に設定

各項目の詳細は以下の通りです。

設定項目意味・用途ポイント・補足説明
vSAN Version使用するvSANのバージョン(例:vSAN 7、vSAN 8 ESA)vSAN 8以降はESA(Express Storage Architecture)が選択可能
ReadyNode Profile必要な性能レベル(Profile-1~6やESA-AF-0など)数字が大きいほど高性能・高コスト。ESAでは専用プロファイルを使用
ReadyNode Vendorサーバーベンダ(HPE、Dell、Lenovoなど)導入予定ベンダに合わせて選択
ReadyNode System選択ベンダの具体的なサーバモデルESAの場合はESA ReadyNodeである必要
Number of Serversクラスタのホスト台数(最低3台〜)FTT=1で3台、FTT=2では最低5台が必要
Capacity Drives per host各ホストに搭載する容量ドライブの本数ESAはフラット構成
Capacity Drive Size (TB)容量ドライブ1本あたりの容量(例:3.84TB)利用率が高いと性能劣化
空き容量に余裕を持たせた構成が推奨
Failure Protectionデータ保護レベル(FTT=1 RAID-1、RAID-5など)RAID-1は高速、RAID-5/6は容量効率良好
冗長性と台数要件に影響
Compression Ratio圧縮率(1.0=圧縮なし、1.25=25%削減など)ESAでは常時有効。仮想デスクトップなどは1.5以上も可
Operational Reserve運用予備容量(例:10〜30%)メンテナンス・Snapshot保持等に必要なバッファ容量
Host Rebuild Reserveホスト障害時の再構築用予備容量(例:20〜30%)1台分の再構築が可能な空き容量を確保

vSAN OSAのサイジング設定

左メニューのvSAN Architectureのチェックボックスを「vSAN OSA」に設定

各項目の詳細は以下の通りです。

設定項目意味・用途ポイント・補足説明
Configuration TypevSANの構成タイプAll Flash(SSDのみ)または Hybrid(SSD + HDD)
vSAN Version使用するvSANのバージョン例:vSAN 8.0 U3
ReadyNode Profileノードの性能プロファイルProfile-1〜6(数字が大きいほど高性能)
ReadyNode VendorサーバーベンダHPE、Dell、Lenovoなど、導入予定のメーカーを選択
ReadyNode Systemサーバーモデル例:DL360 Gen10など。Default ReadyNodeも選択可能
Number of Serversクラスタ内のホスト台数最小3台(FTT=1構成)、可用性重視なら5台以上推奨
Disk Groups per Server1ホストあたりのディスクグループ数通常1〜2。1グループ = 1キャッシュ + 複数容量ドライブ
Capacity Drives per Disk Group各ディスクグループの容量ドライブ数最大7本まで。本数が多いほど容量・性能が向上
Capacity Drive Size (TB)容量ドライブ1本あたりのサイズ例:1TB、3.84TBなど。使用率80%以下が望ましい
Failure Protection障害耐性の構成方式FTT=1(RAID-1/RAID-5)
FTT=2(RAID-6)
Storage Efficiency Preferenceストレージ効率化の方法None / Compression Only / Dedup + Compression
Compression Ratio想定される圧縮率例:1.25(25%圧縮)
ワークロードにより効果は異なる
Operational Reserve運用予備容量10〜30%。メンテナンスやSnapshot保持に使用
Host Rebuild Reserveホスト障害時の再構築用容量20〜30%。1台障害時に備えた空き領域を確保

vSAN Quick Sizerの結果の見方

最後に、vSAN Quick Sizerで算出した右側の結果の見方を解説していきます。

まずCapacity DistributionとMemory Distribution per Serverは、以下の通りです。

Capacity DistributionMemory Distribution per Server
RAID構成・圧縮・予備容量を考慮した、クラスタ全体の実効容量の割り当てvSAN運用に必要なメモリ容量(サーバごと)の分布。機能や構成によって異なる

左上の円グラフの詳細は以下になります。

項目名意味・用途詳細説明・背景
Checksum Overheadデータ保護のためのチェックサム領域vSANはすべてのデータブロックに対して整合性チェック(チェックサム)を行います。このチェック情報を格納するための領域。→ データ破損やビットロット検出のために重要。通常は数%程度。
Operations Space運用系の一時領域メンテナンス、オブジェクトの再構成(リビルド)、Snapshot操作などに使われる一時的な作業スペース。→ 通常10〜30%程度が必要。これが足りないと管理操作に支障をきたす。
Compression Overhead圧縮に伴うメタデータ領域データ圧縮(Compression / Dedup + Compression)を使う場合、その処理に必要な管理情報(メタデータ)のための追加領域。→ 圧縮の効果に応じて、若干のオーバーヘッドが発生します。
Disk Formatting Overheadディスクのフォーマットで消費される領域vSANが物理ディスクをvSAN専用フォーマットに初期化するときに使う領域。→ 通常はデバイス1つにつき数%消費される。一般的に避けられない。
File System OverheadvSANファイルシステム用のメタデータ領域オブジェクトストレージとして機能するvSANファイルシステム(VSAN-FS)がデータ構造・メタデータを保持するための領域。→ 高可用性、ポリシー管理、パフォーマンス管理のために使われる。
RAID Overhead冗長性(RAID-1/RAID-5/RAID-6)による容量消費冗長構成により、データの複製またはパリティ情報を保持するために必要な追加容量。例:RAID-1ならデータ量の2倍、RAID-5/6なら1.33〜1.5倍など。
Usable Capacity after FTT/RAID冗長性・オーバーヘッド差し引き後の利用可能容量上記すべてのオーバーヘッドを差し引いた、実際に仮想マシンのデータを保存できる容量
この容量を元にVMサイズや台数を見積もる。最も重要な指標。

右上の円グラフの詳細は以下になります。

項目名意味・用途詳細説明・背景
Available Memory仮想マシン(VM)やESXi自体が使用できる残りのメモリサーバに搭載されたメモリから、vSANで使用されるメモリ(vSAN Memory Overhead)などを引いた後の自由に使えるメモリ容量。→ 通常は仮想マシンの起動・動作用に割り当てられる領域。
vSAN Memory OverheadvSANのデータ構造や処理に必要なメモリvSANが内部的に必要とするメモリ。主に以下に使用されます:① ディスクグループ/キャパシティデバイスの管理② メタデータの保持③ キャッシュ・IO処理のバッファ→ ディスクグループ数、容量ドライブ数、FTTポリシー、圧縮・重複排除の有無などで必要量が増加する。

Additional Informationについては、左側のメニューで設定した内容が表示されています。

サイジングの内容が良ければ、右上のボタンからダウンロードすることができるようになります。