ITパスポート試験(通称:iパス)は、経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施している国家試験です。
2009年にスタートした比較的新しい試験ですが、受験者数は毎年20万人規模と、情報処理技術者試験の中では最も多くの人が挑戦している資格となっています。
IT業界に限らず、一般企業の社員研修や就職活動のアピールにも活用されており、「社会人に必須のIT基礎リテラシーを証明する資格」として位置づけられています。
ITパスポートの位置づけと対象者
ITパスポート試験は、情報処理技術者試験の中で「エントリーレベル」に分類されます。
情報処理技術者試験には、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験など上位資格が存在しますが、その入り口となる試験がITパスポートです。
対象者は以下のように幅広い層に及びます。
- 社会人:営業・事務・企画など、IT部門以外の人も対象。社内システムやセキュリティ対策を理解するために推奨される。
- 学生:就職活動でのアピールとして有効。文系・理系問わず受験が増加。
- IT業界を目指す人:今後エンジニアやITコンサルタントを志望する場合の基礎固めとして活用可能。
つまり、専門的なプログラミングや高度なアルゴリズムが問われる試験ではなく、「ビジネスに必要なITの常識」を体系的に学ぶことが目的です。
出題範囲の全体像
ITパスポート試験では、IT知識だけでなく、経営やマネジメントの基礎も幅広く出題されます。
出題範囲は大きく3分野に分類されます。
- ストラテジ系(経営・企業活動・法務など)
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- 経営戦略やマーケティング、会計・財務、知的財産権など。
- ITを活用した経営戦略や新規事業、クラウドやDXの基礎概念も出題されます。
- マネジメント系(プロジェクトマネジメント・サービスマネジメント)
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- システム開発の流れ、進捗管理、リスク管理。
- ITサービスの運用やSLA、障害対応の考え方。
- テクノロジ系(IT技術・セキュリティ・ネットワークなど)
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- ハードウェア、ソフトウェア、データベース、ネットワーク。
- 情報セキュリティや暗号化、クラウドやIoTといった最新技術。
ビジネスとITを横断的に学べるのが特徴で、社会人の基礎教養としても評価されています。
試験方式と受験料
ITパスポート試験は、CBT方式(Computer Based Testing) を採用しています。
これは全国の試験会場に設置されたパソコンを利用して受験する形式です。
- 実施時期:通年(好きなタイミングで受験可能)
- 試験時間:120分
- 出題形式:四肢択一(100問)
- 合格基準:総合で600点以上(1000点満点)、かつ各分野で300点以上
- 受験料:7,500円(税込)
このように、大学入試や基本情報技術者試験のような年2回開催ではなく、自分のペースで受験日を選べるのがメリットです。
忙しい社会人でもスケジュールを調整しやすい試験といえます。
合格率と難易度
ITパスポートの合格率は毎年 45〜55%程度 で推移しています。
合格率だけを見ると決して難関試験ではありませんが、範囲が広いため油断は禁物です。
特に文系出身者は「ネットワークやセキュリティ」、理系出身者は「経営戦略や会計」といった、普段触れない分野で苦戦する傾向があります。
逆に言えば、満遍なく勉強すれば合格しやすい試験ともいえます。
ITパスポート取得のメリット
ITパスポート試験に合格することで得られるメリットは多数あります。
- 就職活動での評価
→ 特に文系学生にとって「ITリテラシーを持っている」ことを証明できる。 - 社内でのスキル証明
→ IT部門以外でも、業務システムやセキュリティの基本理解をアピールできる。 - 学習の入口として最適
→ 基本情報技術者試験やクラウド資格(AWS/Azure)に進む前の基礎固めになる。 - 社会人の学び直し
→ DXやAIなどの用語を理解し、上司や顧客との会話がスムーズになる。
近年では、企業研修や新人研修に組み込まれるケースも増えており、資格以上に「IT常識を身につける」意味合いが強まっています。
まとめ
ITパスポート試験は、社会人・学生問わず「ITの基礎教養を証明する国家資格」として広く認知されています。通年受験可能で、合格率も5割前後と挑戦しやすい試験ですが、範囲が広いため体系的な学習が欠かせません。
次回の記事では、出題範囲の詳細(ストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系)をさらに掘り下げて解説します。